夏のベタベタ
野菜が食べられれようになって、ビールが飲めるようになってから夏が好きになった。
小さい頃の夏休みの記憶を引きずっていて、夏がはじまるとなんとなく「なにかしないと」という衝動に駆られる。
人混みの中花火をみたり、炎天下の中BBQをしたり。長い休みをとって旅行に行ったり。
夏を「楽しまなければいけない」という暑苦しくてベタベタした義務感が、なんとなくずっと苦手だった。
小学生の夏休みを思い返しても、ひたすら時間を持て余していた記憶しかない。
みんなおばあちゃん家に行っちゃうから東京で遊んでくれる友達はいなかったし、泳げないからプールも好きになれなかった。(プールから帰る時に襲いかかる気怠い睡魔と、身体のベタベタと、ツンツンする鼻が好きじゃない)
日焼け止めのにおい
甘ったるい、ジャグで作ったポカリ
無心で延々と食べてしまう素麺
キンキンのクーラーと外のモワッとした温度差
炭酸が強すぎる自販機のサイダー
いつまでも明るい夕方とセミの音
嫌いじゃないけど、苦手な感覚。
そんな私が、大人になって、夏のことを気に入りはじめている。
大人になって、できるようになったことも行けるようになったところも増えるにつれて、食べられるものも増えた。好き嫌いも減った。
そしてなにより夏空の下、ベタベタの状態でビールを飲むことの幸せを知ってしまった。
あまり仲良くなかった茄子やズッキーニ、パプリカたち、辛いもの、がっつり飯、このビールを覚えたことで夏の食べ物が一気に私にとって魅力的になる。
なにもしなくても、夏には夏らしい楽しみがたくさんある。
そういう、いろんな季節の楽しみ方を、年々どんどん増やせている感覚がある。
春にしかないワクワク、
夏にしかないウキウキ、
秋にしかないソワソワ、
冬にしかないドキドキ、
これらを上手に自分の中に蓄積できている感覚。
大人になってよかった。
四季のある国で育ってよかった。
そんなことをしみじみ思いながら、夏の夕空のベタベタの下、またビールを飲む。
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