卒業〔yoko_sさんに捧げ…ていいのかどうかわからないが、あえて捧げてみる一作〕


△△、死んだよ。
癌だった。

いきなりの言葉に、私は高笑いした。
ざまあみろ。
ざまあみろ。
私はまだ、生きてるぞ。
おまえなんか。
おまえなんか。
おまえなんか!!!

伝えてくれたのは、当時私を好きだと言った男。
でも、私はどの瞬間も、あいつだけが好きだった。


もう決めたから

たった一言で切り捨てられた恋。
そこからが地獄だった。
シルベスター・スタローンが、まじめくさった芝居する時みたいな顔立ち。
例えば映画、ナイトホークス。
あとは広岡瞬。
定岡正二。
国広富之にもちょっと似てる。
そんなラインの顔。
要するに、笑むと八重歯がちょっと目立つ、どこにでもある顔。
だからずっと苦しんだ。
たかがな男だから。
なのになんにも書けなくなって。
何年も。
やっと書いたものは、私の特徴中の特徴だった自在さなんか全くなくなって。
私をそんなにした当の男は独立し、幾本も人気作をモノし、結婚も。
しかもその結婚は、当時はやっていたレディメード婚。
子連れ女性と結婚して、いきなり父親になるというやつだ。
私を振ったとき、彼が好きだった女性は、白坂紀子似のさわやか美人。
彼は昔から好きだったようで、私は諦めるよりないと思ったけれど、レディメード婚の相手は見も知らぬ、しかも△△△の女性だった。(職業差別的発言。ごめんなさい)

不思議な家系の子だった。
かわいがってた妹さんが自殺。
彼も早世。
ご両親は多分ご存命だろう。
どんな気持ちで見送ったのだろう。
奥さんは。
なさぬ仲のこどもは。
そう思ったとき、私の中から怒りが消えてるのを感じた。
終わったのだ。
やっと。
髪を切った時のように、少し、でもくっきりと、からだも心も軽くなった。
終わったのだ。

それでもまだ、名前を見るのはつらい。

似た名前をみるのさえ、ちょっとつらいのだ。



それでも地球は回っている