目玉焼きをだめにされてカッコイイ子分を得た話

小学校の調理実習は男女一緒。
中学校になると技術家庭で男女分かれる時代だった頃のお話。

調理実習で、目玉焼きと粉ふきいもを作った日。
ケネスがコショウを持ってうろうろしてて、目玉焼きには醤油だソースだ塩だとかまびすしい中、誰もかけさせてくれない、とぼやいていた。

ほんの少しならいいよ。

大学教授のハーフの息子、めっちゃ秀才だけどいたずら好き。
早速ちょっと振ろうとしたら、中蓋飛んで。

私の目玉焼きの上には、ほぼ銀色の山ができていた。

すくってどかす気力さえ湧かない脳内白紙状態。
ケネスはほんとに悪いと思ったようで、

ごめん。

と絞り出すような声で言った。

ごめんいま、何も考えられない。

と言うつもりだったのに、口は勝手に動いていた。

子分になったら許してあげる。

何だ子分てw。
でもハーフは、心底安心したようで、

わかった親分。
ありがとう。

六年生の秋だった。


それから約四ヶ月。
別にカチコミに行かせるとかでもなく、

おはよう親分。

親分お疲れ。

とかしか使い道のない親分子分関係のまま、卒業になったのだった。


だが子分にその年、ばったり再会したのだ。
私の通う女子高の正門前で。
野球部のユニフォーム。
学校名は県内一、二を争う進学校。
野球部だけあって、ちゃんとボウズだった。
(当時の球児はほとんど全員ボウズだったんだよ(笑))

青い目の面長のボウズ!

親分じゃん。

わ!ケネス!

私はバカ女子校にありがちな、ネクタイ取って開襟で、髪はさらさら短めボブ。
不良やってなかったので、スカートもズル長くはなく、部活(漫研。テニス部の後、私は早々に、元通りのオタクに戻っていたのであった)の後輩どもの興味津々の眼たちの前で、

めっちゃひさしぶりやん。

ができたのであった。

ここ親分のガッコー?

うん。
バカ校で優等生。

いいなあ俺、かなり底辺。

(バカ言え。
あんたの学校の底辺は、うちじゃあ雲の上の上だよ)

今帰り?

うん。
親分は?

学園祭の準備。
いつもはもっとずっと早い。

そっか。

五年ぶりの再会。
接点もない。

じゃあね親分。

おう。

再会はたったのこれだけ。
でもこの日からしばらく、後輩にはワイワイ言い募られた。

彼さんですか。
すごいかっこいー!

違うよ子分だよ。

子分????

そうだよな。
かっこいい彼氏のいる子はいても、かっこいい子分のいるカタギの女~しかも女子高生~は私くらいだったろう。

その後姐さんだの師匠だの(もちろんJOKEで)言われ続けたけど、

親分

だったのはこのときだけ。
調理実習とかを思うとひょこっと出てくる懐かしい思い出だ。


この記事が参加している募集

#部活の思い出

5,458件

それでも地球は回っている