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路上ライブを、「しなかった」話


「Mステの階段で転ぶのは恥ずかしいから気をつけようね!」

なんておめでたい会話だろうか。
なんてまぶしい、想像だろうか。


高校で軽音楽部に入った。

相鉄沿線の学校に通っていたので、放課後はよく海老名駅で遊んでいた。海老名は、『いきものがかり』がかつて路上ライブをしていた場所だ。

いきものがかりのボーカル、聖恵ちゃんを教えていた先生が古典の先生だった。

父が昔、歌手のたまごだった。



そういういろんな環境のかさなりが、音楽で食っていく世界は近くにあるのだと私を勘違いさせた。

誰から言い出したのかはわからない。けれど、海老名で路上ライブしようよ!という話で私たちはものすごく盛りあがっていた。


私たち、というのは3人で、ボーカルの私と、ギターの2人。女子3人。

ちょうど私の高校時代はチャットモンチーを筆頭に、ガールズバンドが注目を浴びていた時代でもある。



ボーカルだけやるのもなぁ、と、私はちょっといいキーボードまで買った。ピアノが入れば表現力の幅が増えるし。


結局そのキーボードが外の空気に触れたのは、実家から同棲するアパートまでの引越しと、そのアパートから今住んでいるマンションに引越す時の2回だけ。(家では結構ひいてるよ)



つまり、わたしたちが路上ライブをすることはなかった。



グループ名を決めたり、サビだけなんとなく作曲してみたり、『Sunny Day Sunday』『桜木町』『サヨナラバス』『遊園地』『瞳』とセットリストを組んでみたり。その時間は盛り上がってすごく楽しくて。

だけど、誰も「じゃあいつにする?」とは切り出さなかった。


逃げていることには、なんとなく気がついていた。


「いつか」と話していたMステに、『SCANDAL』が女子高生の制服姿で出ていたとき、自分の逃げが悔しくて恥ずかしくてわんわん泣いた。

高校生だから、とか、上手になったら、とか。
そういう言い訳を考えている間に、たくさん練習して才能を磨いた女の子たちが、抜群にかっこいいステージを披露していた。


けれど喉元を過ぎれば熱さを忘れるように、悔しさはすぐに消えた。

好奇心の強い私には、音楽以外にもやりたいことなら掃いて捨てるほどあったからだ。

音楽は自分が演奏するものから聴いて楽しむものになって、いつの間にかすっかり路上ライブをしようとしていたことなんて忘れて。


………………………


「あなたの諦め、きかせてください」

本格的なラジオDJかと思うほど素敵な声で聞こえてきたのは、ぐっちさん(坂口佳世さん)のTwitterスペースだ。


ぐっちさんが『新しい試みを始める』とスペースの宣伝をされているのを見たわたしは、聞きたい!とテレビの前よろしくスマホの前に張り付いて放送を待っていた。


オムツを捨てる袋がいっぱいだったので、袋を縛ってオムツ用ゴミ箱を拭き掃除しながら開始された放送を聴いていた。ぐっちさんの声を聞きながら、頭の中で色々考える。

諦めたことなら、世界あきらめ選手権で日本代表に内定するくらいあるなぁ。


やりたいセミナーを、子供が保育園に落ちてあきらめたこと。

続けたかった仕事を、子供を産んでうまくいかずにあきらめたこと。

夫は飲み会にいく度に朝方まで帰らないのだけど、それを咎めるのを諦めたこと。

産後目が滑って滑って、趣味の読書をあきらめたこと。

体験セッションをたくさんして、毎回セールスをかけて……というスタイルが向かずにあきらめたこと。

好きじゃない相手に好かれようとするのをあきらめたこと。

おもしろそうだと思っていたドラマの第一回を見逃して、その作品自体見るのをあきらめたこと。

ショートケーキのいちごを子供にゆずって、食べるのをあきらめたこと。


母という役割もあり、細々としたあきらめはたくさんある。


それなのに、ぐっちさんのスペースを聞きながら思い浮かべていたのは『音楽をあきらめた』ことだった。もう15年も経って、思い返すことすらなかったというのに。


そんなタイミングで耳元から、「誰かお話してくれる人がいれば……」とぐっちさんの声がして。

生放送で1人しゃべりする独特のソワソワ感を私も知っているので、せっかくならと手を挙げさせてもらい、ぐっちさんと話すことに!


色々話を聞いてもらって、話し終わって、その日中ずっと……というか、これを書いている今でも、ずっと自分のあきらめと向き合おうとしている自分がいる。


多分、音楽は、私にとって納得のいかない「あきらめ」だったのだと思う。


今、日々の中にあるあきらめは、そのあきらめを通貨のように使って大切なものを守れている。


セミナーは出来なかったけれど、娘とべったり過ごした2年間は幸せだった。朝帰りの夫を咎めなくなって、そのことについての喧嘩はゼロになった。仕事をやめて、もっと大好きな仕事をはじめた。ショートケーキのいちごは、息子の満足気な笑顔になった。


けれど、音楽をあきらめたことは、交換できなかった。

一度でも路上に立っていれば、なにか得るものはあったはずだ。やっぱり無理だったね、と反省会をする甘酸っぱさだったかもしれない。キーボードを電車で運ぶ高揚感だったかもしれない。もしかしたら、数百円でも稼げた経験だったもしれない。


「しなかった」あきらめは、「できなかった」あきらめのように通貨に変えられない。いや、期待を込めて、通貨に変えにくい、にしておこう。


私たちはいつも、お金や、勇気や、時間や……そういうものを交換して何かを手に入れている。

だからお金をかけた学びが実践では使えないと落ち込んだり、告白の勇気をだしたのに振られると落ち込んだり、時間をかけたものがおじゃんにやると落ち込んだりする。


もちろんそれぞれ、お金を払うことの痛みや、勇気を出す怖さや、時間をかける辛さみたいなものはそもそもとしてあるんだけど、それに『交換できなかった』事実が乗っかることでさらにダメージを受けることがある。


自分の使えるリソースを、新たな経験に変えたい、という期待が人間にはある気がしていて。

その交換のチャンスは、秤にリソースを先に乗せないと手に入らないのかなぁ。


やたらとスカートの短い高校生の私は、勇気を先に差し出すことはできなくて、あきらめた。

でもね、なんだか。

そのあきらめが今でもこんなに悔しかったんだ、とわかったからこそ、これからはそうしたくないなって15年後の足を出せなくなった私は思えていることに気がついたりして!

スカート短いのが俺


もう、やらずに諦めるのはやめよう、と深く胸に刻んだ。

時間はかかったけれど、やっとあの時のあきらめを、交換できたのかもしれない。


今回のこの、諦めを切り口とした問から考えをめぐらせたことで、

「口ばっかでやらない私」
「飽きっぽい私」
「挑戦しない私」

そんな自分の嫌いな自分を、すこし書き換えられた気がする。


逆に、納得してる諦めにもたくさん気がつけて、自分は子供や夫が大好きでそのためならなんだって諦めていい!みたいな無敵感があることも嬉しくて。

なんだか爽快です、いま、とても。



「あなたの諦め、聞かせてください。」

文字にするとたった一文のこの言葉で、わたしの脳みそは随分と長い思考の旅に出た。

ぐっちさんの穏やかでパワフルな聞き方や話の展開のさせ方にもこの旅はめちゃくちゃアシストしてもらって、これが1人だったら今の爽快感はないな、と思っている。


今回私が参戦させてもらったTwitterスペースは『あきらめラジオ』というタイトルで、今募集されているセルフデザインプログラム ROOTSという全4回の講座のプロモーションの一環。


講座の中に、諦めについても触れるところがあるそうです。

今回実際に諦めについて話したり考えたりしてみて、自分について詳しくなったり、パターンがあることがわかったり、譲れないものがわかったりして、そのパワーを感じています。じんわりずっと続くこの感動と、過去が紐づき未来に活かせそうなこの爽快感!


もし気になる方がいれば、あきらめラジオを聴いてみたり、ROOTSのページを見てみたりしてみてください。



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