最高の米粉パンを求めて


パンに対して熱い想いは皆無だが、創作における失敗はわたしの中の何かに火をつけたのである。


グルテンフリー生活を昨年から続けている夫は、度々遠い眼差しで、「パン食べたいなあ、でも小麦やしなあ」とつぶやいていた。

それじゃあと、米粉でも焼けるホームベーカリーを手に入れたものの、不良品で出来上がった米粉パンは、ホラー映画のような仕上がりになった。

ひどい、ひどすぎる。

では、オーブンで焼いてみたらどうか?ネットでレシピを検索して、焼いてみるも、口の全水分を奪われるほどのぱっさぱさな狂気的な米粉パンが完成。

食べるごとに無性に腹が立ってくるではないか。

こんな不味いものを食べる為に、わたしは生まれてきたんじゃない!

ふつふつと自分の中から湧き出るエネルギーを、米粉パン作りに昇華させることに費やした一週間。

どうやら米粉パンを作る際には、使う米粉の種類が99%重要で、あとは発酵の見極め、レシピの分量などで出来に違いが出てくるようなのだ。

研究データを纏めると、もうこっちのもんだ。

数回目で、ようやく「おお、これはうまい」と思えるふんわりした米粉パンが完成したのである。


だが飽くなきわたしの探究心の火は消えなかった。

ただ生地を混ぜて焼くだけのパンでは物足りない、形成パンを作ってみたい!と新たな野望が燃え上がった。

調べてみると、米粉を形成する為にはサイリウムハスクというものを混ぜるらしいのだ。サイリウムハスクとは、オオバコの仲間の植物の種皮を粉末状にしたもので、これがグルテンの代わりになるという。

サイリウムハスク、、なんだか怪しくて強そうな名前だ。

生まれて一度も聞いたこともない響きだが、ドラッグストアで買えるというらしいから、半信半疑で早速車を走らせる。

一軒目では、店員に二度聞き返され「そういったものは聞いたことがないですう」と首を傾げられた。

二軒目では、店員に怪訝な顔をされたので、必死でサイリウムハスクについて説明したのだが、「置いてません」とあっさり一言。しかもその店員はこちが必死でスマホ片手に調べているのにも関わらず、棒立ちで上の空ではないか。

三軒目では言わずもがな、であった。

どこの店でも、サイリウムハスクという名前を出すと、皆一様に眉間にシワを寄せ、あからさまに不審な表情になるので、如何わしい何かを必死で求めている40代女性という図式が出来上がってしまった。

これでは、サイリウムハスクもわたしも可哀想じゃないか!

仕方がないのでネットで検索すると、ものの数十秒でサイリウムハスクは見つかったのである。


こうして、ずっこけ米粉形成パンの旅はまだまだ続いていくのであった。



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