クワガタのクワちゃんの続報


ひょんなことからクワガタのクワちゃんを飼育しだした我が家(世話はもっぱらわたしである)

夏が正念場であった。
息子のラグビーの合宿で家を空けたり、連日の猛暑日。

うすうす気づいてはいたが、飼育ケースの様子がおかしい。クワちゃんの気配を感じない。夜に観察しても、クワちゃんが出てくることはなくなったし、餌もぜんぜん食べていない。
これはもしかして・・

生き物の命は非常にあっけない。
数年前に飼育したカブトムシ三匹も一週間ほどで力尽きていた(土の中に産み落とした新しい生命は驚異の20匹越えだったが)

ああ、クワちゃんよ。

厳しい現実を直視できぬまま、しばらく放置していたケース。

お墓を作らねばと、息子に声をかける。
「クワちゃんのお墓作るよ」と言うと、ほとんど飼育に関与していなかった息子が非常にかなしい表情を見せた。一応名付け親ということもあるし、彼なりに感じることがあるのだろう。

庭に飼育ケースを移動し、土を掘り起こして、クワちゃんの亡骸を探し出す。

すると土の中から、何かが動く。
え?と思った途端、がさがさがさーーっと信じられないくらいの勢いで、クワちゃんが出てきたのだ!

あんた、生きてたのーーっ?!と腰を抜かすと、その様子を見ていた息子が駆け寄ってきた。

「クワちゃん、生きてたっ!」

目を輝かしながら、息子は威勢のいいクワちゃんを手で捕まえる。
「なんですの、なんですの、急にい、びっくりしますやんかあ〜っ」とでも言いたげなクワちゃんは、なんなら捕獲時より俊敏な動きをしていた。

「クワちゃん、かわいい〜〜」とうっとりしながら、息子はしばらく観察していたので、その間に土をきれいにして整える。
息子に執拗に観察されるクワちゃんはどう見ても、困惑し焦っているようだった。

土を整備しながら、もうクワちゃんを自然に返してあげた方がいいかな・・と思い、息子にその旨を伝えるも、「いや、飼いたい」と凛々しい顔で言い張る。

いやでも、あんた世話しいひんのやろ?どの口が?飼いたいと?と疑念が沸くが、きらきらとまっすぐな息子の眼差しに一瞬で負ける。

食べないかもしれないが一応ゼリーをセッティングし、「そろそろクワちゃんを戻してあげて」と息子に伝え、そうっとゼリーの上に放した瞬間、ぬるっと思い切り滑り、体を「ぎくっ!!”#$%&」とさせながら、ものすごい勢いで必死に土の中に潜り込もうとするクワちゃん。

半分体が出てる状態でピタっと止まった。かなり焦っている。
これはかわいそうだ。
静かに土をかけてあげる。
クワちゃん、ゆっくりして。

翌朝、飼育ケースを覗いて見ると、過去一番のバナナの減り具合だった。
お腹をすかせたクワちゃんが、ものすごい勢いで食べたであろう跡がしっかりと残っている。

ケースの中からクワちゃんの声が聞こえる。
「生きてますーっ」




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