おいしい朝食を作りたいのだが


寝起きの悪い息子は、その日の朝食によって食いつきが違う。

好きなものだと、さっさと食べ終わるし、それ以外だと一時間もだらだらと朝食に費やす。

毎日の朝食でこれは早かったというものは、パンケーキにフレンチトーストという、甘くて食べやすい朝食だ。
逆に進まないのは、お味噌汁、ごはん、納豆などという和朝食。
おかずは早く食べ終わるが、ごはんと味噌汁を行ったり来たり、そして途中で宇宙と交信しはじめる。
わたしが見兼ねて、「ごはん!」と声かけすると息子は、はっとして手をつけるも、また宇宙との交信に入る。
この宇宙との交信スタイルに入ったときは、わたしは忍の一文字で息子の朝食を待たねばならない。

朝からがみがみ言うのもしんどい。
やはり、好物作戦やと、息子が食べたがっていたドーナツを作ることにした。
揚げるのは朝からヘビーなので、ネットで調べた焼きドーナツにした。焼きドーナツは今まで作ったことがなく、わたしも焼き上がるのを楽しみに待った。

しかし作り方がまずかったのか、レシピがイマイチなのか、出来上がったそれは、粉っぽくてずんと重たい、言うなれば粉の塊だった。
味見の時点で「失敗した!」と思ったが、それを顔に出さず、
「さあさあ、待ちに待ったドーナツやで〜」と、満面の笑みで食卓に出す。

息子は慎重にそのドーナツを眺め、ゆっくりと口に入れた。
そして、真顔でこう言い放ったのだ。
「おかあさん、このドーナツおいしくないね」


その通り!
息子の真実の言葉に大いに頷いた。
「そうだ、確かにおいしくない」と苦笑いして、お茶で粉の塊を流し込んだ。
ふと見ると、あと4個も残っていてぞっとした。

翌日、その粉の塊ドーナツに溶かしたチョコレートをかけて、
「チョコドーナッツや!」と、高らかと食卓に出すと、

若干疑わしい顔をしながら息子は静かに口に運んだ。
「チョコはおいしい。でもチョコがかかってないとこは、なんかぱさぱさだよ?」と言った。
わたしは無言で食べた。

先日風邪を引いた息子に、ごはんに味噌汁をかけた、猫まんまを出すと、
「めっちゃうまい!」と、フレンチトーストを上回る速さで完食していた。
しかも、「おかわり!」とまでも。

我が家の朝食遍歴はこうして続いていくのである。

2018.2.2『もそっと笑う女』より

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