たまに買い食いは楽しい


夕方、息子を耳鼻科へ連れていった帰り、むしょうにソフトクリームが食べたくなった。


近所のケーキ屋のソフトクリームを思い出し、「ソフトクリーム食べにいこうぜ」と、息子を誘うも、「ソフト?食べたくない、くまちゃんのお菓子(クマ型をした息子の好物のお菓子)がいい」と難色を示された。

「ほな、お母さんはソフト食べるし、別でくまちゃん買ってあげる」と言うと、「いいよ!」と晴れやかな顔になった。

補助輪付きの自転車をカタカタ言わせながら爆走する息子を、車が来ないかキョロキョロ見回しながら追いかけて、店へ向かった。


くまちゃんを買ってあげたものの、つやっつやのミルキーなソフトクリームを目の前にした息子は、ガン見して唾をのみこんでいる。


店を出て、歩きながら食べようか(それがおいしい食べ方だ)と思っていたが、ケーキ屋の前に置いてあるベンチで食べようと息子が提案してきたので、それに乗った。


店の前の道路は車の往来がかなり激しく、行き交う車を眺めながら、息子とベンチに腰掛け、ソフトクリームを食べた。

知り合いが車で通りかかり、「めっちゃソフト食べてるやん、あの親子」と見られていたかもしれない。
しかしソフトの誘惑には勝てない。ただ無心でソフトを堪能した。


半分以上息子にソフトを食べられつつ、わたしはぼんやり空を眺めた。


こういう時間が平和なときだ。
少しでも長く、こういう時間が続けばいい、そう思ったのである。


2017.9.5『もそっと笑う女』より



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