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ショートショート「父、町へ」

目が覚めて最初に思ったこと。
「鶴ってどうやって折るんだっけ?」

何故か右手に赤色の折り紙。なんでこんなものを持っているんだろうと思いながら、とりあえず立ち上がってみる。多少頭が起きていない感覚はあるものの、ちゃんと地に足を付けて地面に立っている。
「よしっ」
顔をパンパンと叩いて、改めて自分が今どこにいるのかを思い出しながらキョロキョロと見回してみる。
(はて?どこだっけ・・・)
方向感覚がいまいち掴みきれていないまま歩いてみる。誰かに会ったら聞いてみよう。しばらく歩くと、向こうの方に麦わら帽子を被ったおじさんらしき人が・・。
(よかった・・)「すいません。ここってどこだか分かりますか」
「・・・・・・。」
「・・!?あれ?」
何だか様子がおかしい。よく見てみると・・・顔の表情が笑ったまま動いていない!
(どこかで見たような・・・・?)
何の反応もないので、また歩き出す。しばらくすると信号機と横断歩道が見えてきた。車が一台停まっている。(よし。今度こそ・・)
「すいませーーん」コンコンと運転席をノックしてみる。
だが、反応はない。
(ここはどうなっているんだよ・・・・)
信号機をよく見てみる。(あれ・・・?何だかおかしいぞ)
そう思った瞬間、目の前が閃光花火のように光り、謎の穴が見える。
「誰かーー!助けてくれ!!」
しかし叫び声虚しく、まるで竜巻のように体が回っていきながら、その穴に吸い込まれていった。

「おとうしゃーん、おとうしゃーーーん」
そう言いながら巨大の塊が腹に乗っかってくる。うぐっ。苦しい。
どうやら寝ていたらしい。
「そこで寝てたら風邪ひくわよ」と妻。
「ふあぁぁーーーん」あくびを一つ。
(夢を見ていたんだ。しかしあの町も人間もずいぶんおかしな感じだったな)
そんなことを考えながら、息子が遊んでいるブロック遊びを何となしに見つめていた。ふと、あるものが目に止まる。

(あれって・・・まさか・・・)
息子が作るブロックの街並み。中でも息子の自信作である信号機の足元にちっちゃい赤いものが・・・・どことなく四角いような・・・
「ああああっっっっっ!」
いきなり大声を出したものだから、息子は半泣きでおかあしゃーんと言いながら妻の元へ駆け出す。
ごめんよーと言いながら、ふと10分前の出来事を思い出す。

「おとうしゃん。つる折って」
息子は新幹線のこまちが大好きで赤をよく選ぶ。その時も赤い折り紙をケースからガサゴソ探して渡してきた。
「よ〜し。一緒に折ろうな」
赤い折り紙を手にした途端、目の前がチカチカと雷のように光り、辺り一面真っ暗になった。そこからの記憶はない。

今巷で、転生してみたら、というのをよく聞くが、俺はレゴの街に転生しちゃった、ということなのだろうか。
いつか息子も自分の作った町に転生できるのだろうか。

おわり

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