2021年映画鑑賞記録

1. The Midnight Sky

1月2日。Netflix。Directed by George Clooney.

2021年映画初め〜。今年は監督にも注目して記録していこうかなと思います。

映画全体の雰囲気について「SF版レヴェナント」と表現してた人がいて、私もそれに同感。結末はインターステラーに似ている。そして、地球の終末感は、The Roverの世界を思い出した。ついでに「アンドロイドは電気羊の夢を見るか」も、なんとなく。

「静」が印象的な映画だった。

ディストピア的な世界って「静」的なイメージをもって描かれることが多い気がする。でもそれは、人間の活動が(少)なくなったことによって静かに見えるだけで、実際の地球としては本作で描かれているように、環境変化の良し悪しを問わず、動的なものであるのかもしれない。

まぁMad Maxはどんぱちやってるんだけど。

「事件」について、もう少し明確に教えてくれてもいいじゃん、という映画ではあった。「起承転結」の「結」をずっと描いている映画、という印象。

「Home(故郷)が安全ではなかった」というのはおもしろいなと思った。

2. 인랑(人狼)

1月3日。Netflix。Directed by Kim Ji Woon.

元は押井守監督のアニメーション映画らしい。

初見には抗争関係が複雑だった…な…?
公安と、その特別部隊である「特機隊」、さらに特機隊内部の秘密部隊「人狼」と、そしてテロ集団「セクト」。
「人狼」が何者なのかを把握するのに手こずった。人狼ゲームで言うところの人狼なのか、それとも劇中の説明どおり、人の皮を被った(心を持つことを許されない)狼という意味に過ぎないなか。まぁ正解は後者。

善悪よりも正義と大義、みたいなテーマ?勧善懲悪ものって、どんな時代に流行るんだろう。みんながみんなを思いやるべきだという時代の今、「正義は誰にとっての正義か」と考える/させられる機会が増えたように感じる。

カン・ドンウォンはめちゃくちゃ良かった。ハン・ヒョジュも出演していたし、ゴールデンスランバーの二人組だったね。

結末は異なるものの、赤ずきんの物語とリンクさせていたのはなんとなく趣がある感じ。

だいたい、公安の人間の方が狂ってるんじゃないかとも思ったしね。この人だって人狼じゃないか、と。人狼になる可能性は全ての人にある、という意味で、人狼を探し当てる「人狼ゲーム」が思い浮かんだのは、あながち間違いではないなと思った。

3. Saving Private Ryan

1月8日。Netflix。Directed by Steven Spielberg.

スピルバーグの戦争映画の鑑賞はこれで2作目(1作目はシンドラーのリスト)。

そもそもPrivateってどんな意味なのか。「兵、兵卒」という意味らしい。

中隊長ミラー大尉に与えられた任務は「4兄弟のうち、まだ生き残っているだろう末の息子を無事に故郷に帰還させろ」というものだけど、なぜ全員死なせてはいけないのか?
リンカーンの手紙が引用されている?キリスト教に何かあるのか?
…調べたら宗教は関係なかった。米軍にSole Survivor Policyという規定があるらしい(制定されたのは第二次世界大戦後?)。
そんな規定を作るくらいなら、そもそも兄弟を全員徴収するな、とも思う。

長らく出身・来歴を隠していたミラー大尉だけども、任務遂行の危機(部下の離脱)にあって、ようやくその詳細が語られる。もともとは高校の作文の教師だったと。教師が生徒を戦場に送り出すことはよく想像されることだけど、この映画ではその逆だった。

「捕虜を殺すのは違法だ」と通訳として任務に加わったアパムが強く主張した場面も印象に残った。
いったい前線において、どれだけ法(規則)を守れる余裕があったのだろうかとも思う。
いくつかの場面で「戦場における上官の命令は絶対である」ことが提示されていたけど、これは「何が正しいか(どの選択肢を選ぶことが正しいか)」よりも「決まっていることに意味がある」という実例だと思う。

事務処理を主に行っていて、実践経験がなく、(おそらく)人を殺したことのなかった兵卒アパムの視点から見ると、戦場においては「人を殺すこと」がただの通過地点になってしまう残酷さが浮かび上がるような気がする。

「1人を救う」というなんとも人道的なテーマの裏に、戦場において一兵卒は「1人(あるいはそれ以上)を殺すもの」としてあらねばならなかったという、人間性の剥奪が描かれている気もする。

それにしても、冒頭のノルマンディ上陸作戦は人が大量に死ぬ。「…は?これ突破できるのか?」とすごく思った。ナイフで心臓を刺して殺すシーンが印象的に描かれていたけども、逆に、銃というのは「人を殺す」という感覚を薄れさせるものであるのかもしれない。

4. Lady Bird

1月11日。Netflix。Directed by Greta Gerwig.

Little Womenの監督作だということで、見よう見ようと思いつつ、半年くらい見ていなかった作品。

「青春映画」はあまり見てこなかったジャンルな気がする。素敵な映画だとは思うけど、そこまで共感できるものではなかった。

「青春」というと、「仲間」が連想されるけど、「母と娘の関係」といったテーマがうまい具合に絡まっているなと感じた。まぁ、関係性なんて千差万別だけど。

5. Booksmart

1月16日。Netflix。Directed by Olivia Wilde.

連続で青春映画を見てしまった。軽快な音楽と、一向に目的地(パーティー会場)にたどり着けない仲良し二人組が笑えて、(最終的に)泣ける。

文化全然違うけど、ふと自分の高校時代を思い出してしまった。

感傷的になるというよりも、すっーっと(爽やかに?)ドライブしてるみたいな映画。おもしろかった!

6. TOP GUN

1月23日。Netflix。Directed by Tony Scott.

これもまた青春映画か…?トム・クルーズを好きな人と話していたら、トップガンその他諸々彼の出演作をおすすめされたので見てみた。というか、私自身トム・クルーズを知ってはいたけど、「ザ・マミー」以外の出演作を見たことがなかったので、見ておこうと思った(笑)

ストーリーは単純だし、そこまで主人公に感情移入できるものではなかったけど、色褪せない映画ってこういう作品を言うんだなと思った。

天才的で「危険」な操縦の腕を持つ一匹狼(「相棒=家族」はいるけど)のパイロットが、飛行機乗りに付き物の「事故」を経て成長(?)するストーリー。

スカイアクション、びゅんびゅん速すぎてよく分からなかった(とりあえずあの速度についていける五感が「すごすぎる」のは分かった)

7. Minority Report

1月23日。Netflix。Directed by Steven Spielberg.

「トム・クルーズ出演作品を見よう!」シリーズ第二弾!

予知能力者が察知した、殺人を犯す「予定」の人を、裁判もせずに「収容」することによって、殺人(犯罪)の無い世界を実現するというSF。「犯罪者」を収容してきた「警官」が、正反対の立場に置かれたとき、そのシステムの欠陥に気付き、それを正そうとするストーリー。

ここでいう「欠陥」は、少数派の報告書の削除、そしてシステム構築のために犯された殺人。

「少数派の声は消される」という、実際に起こりがちではあるものの、なかなか抽象的にしか伝わらない現象を、「結果には関係ないとして、少数派のデータ(報告書)を消去」するという行為として浮かび上がらせていた映画、かな。

8.七番房の奇跡(7번방의 선물)

1月23日。Netflix。イ・ファギョン監督。

笑って泣いた。めっちゃ泣いた。

知的障害を持つ父親が冤罪で死刑を宣告されるも、まだ幼い娘と離れ離れにならないように、刑務所の「仲間」に支えられるストーリー?

この映画を観ると、社会的弱者は虐げられるしか無いのか、と悲しくなってくる。
共感する理由は、自分が権力側の人間でないことにあると思う。黙らせられる側の人間。少しだけ言い過ぎると、この映画を見て泣かない人は権力側の人間なんじゃないか、と思ってしまう。

「悪人」と「他人」と「仲間」の描き分けがはっきりしていた。警察や検察はひたすら「悪人」である一方、刑務官や「七番房」のメンツはひたすら人情味のある「仲間≒家族」として描かれていたのが印象的。

9. Mission: Impossible

1月23日。Amazon prime。Directed by Brian De Palma.

今日一日で映画を4本も観てしまった。自己最高記録では?そのうちの3本がトム・クルーズ出演作なのは置いておくとして。トム・クルーズ、今日観た3作のなかではTOP GUNのマーヴェリック役が一番かっこよいと個人的には思った。

裏切りの容疑を着せられたスパイが、汚名返上するために東奔西走するストーリー。

スパイって、自分を信じるしかなさそう。

10. Mission: Impossible 2

1月29日。Amazon prime。Directed by John Woo.

冒頭、スパイというかエージェントというか…シークレットサービスに成り下がってません…?

アクションアクション、またアクション…このシリーズをとりあえず全部観ようと思ってるんだけど(なぜ)、最新まで観れる気があまりしない…ストーリーの肉付きが足りないのかな…スピード感が大事なスパイ映画だから…?起承転結があっさりしてるように感じる。

どうでもいいけど、ナイアの視点からこの映画を見ると、イーサン・ハントがただの巻き込み野郎になってしまう…

11. Mission: Impossible 3

1月30日。Amazon prime。Directed by J.J. Abrams.

「ラビット・フット」の謎を追うやつ。上海が舞台だったかな…。トム・クルーズが頭に入った爆弾の回路を焼き切るために(一時的に)感電死するやつ。どんなんだよ。

12. Mission: Impossible - Ghost protocol

1月30日。Amazon prime。Directed by Brad Bird.

ミッション・インポッシブルシリーズ4作目。トム・クルーズがドバイの高層ビルを腕力で登るやつ。あとアベンジャーズ のホークアイが出演してる(ホークアイの俳優さん好き)。「核兵器の発射コードを回収せよ」というのが今回のミッション。

制作年代の違いもあるのかもしれないけど、ミッションインポッシブルは4以降からがおもしろい。と個人的に思う。単純なストーリー展開にら留まらず、ひねりが付け加えられていると感じた。なにより、イーサンのジョークやベンジーの台詞など、笑えるポイントが増えたのも特徴だと思う。テーマ曲もブラッシュアップされていて、映画音響ってすごいなとしみじみ。

シリーズを通して見ていくと、諜報活動に使われる電子機器などの変化が見られるのはなかなか興味深い。

2020年に公開された、「TENET」のジャンルがいまいちよく分からなかったけど、あれはスパイ映画だったのかと、なぜか本作を見て納得した。

13. 薄氷(原題:Bajocero)

1月30日。Netflix。

スペインの映画。タイトルの意味は多分、「零下」。邦題は、「薄氷が割れる瞬間」という、映画の内容・緊迫感をうまい具合に表していると思う。

赴任初日の警察官が、囚人の護送をすることになるも、道中で襲撃を受けてどうたらこうたら…という話。赴任初日からとかお疲れ様すぎる。

薄氷、2回ほど割れてる。

誰かが、「社会って思っているよりも脆い」といった内容のツイートをしていたけど、みんなが薄氷割らないようにして生きてるのが社会なのかなと思ってしまう。

14. Mission: Impossible - Rogue Nation

1月30日。Amazon prime。Directed by Christopher McQuarrie.

ミッション・インポッシブルシリーズ5作目。トム・クルーズが溺死しそうになるやつ。「ならず者組織である諜報機関シンジケートの存在を立証せよ」というのが今回のミッション。ちなみに立証できないと、自分たちがシンジケートに仕立て上げられる。謎だな。

自身の体を使わないベンジーの、トム・クルーズに対する「水中で3分息止めるくらい簡単でしょ?」という台詞が、自分の尻拭いを部下にさせるMI6のアトリー長官のくずさを際立ててると思ってます。タイトル直訳すると「ならず者組織」という感じなんだろうけど、腐るのは組織じゃなくて、人なんだなと思う。

モロッコでカーチェイスを繰り広げ(始め)るシーンに、「落下の王国」でも使われていた場所が似てるなと思ったけど国が違った。
MIで撮影されたのはモロッコは「ウダイヤのカスバ」。落下の王国で撮影されたのはインドの「メヘランガル城」。カスバというのは、城砦やそれに囲まれた居住区のことを指すらしい。

15. BlacKkKlansman

1月31日。Amazon prime。Directed by Spike Lee.

黒人警官と相方の白人警官(ユダヤ人)が、2人1役で白人至上主義の団体「KKK」に潜入捜査する、実話を元にした映画。

ロン・ストールワース(黒人警官)の「少し色の薄い黒人も、君(=相方の白人警官、ユダヤ人)も、差別には関係ないと思ってるだろうけど、そうじゃない」「君は自分をWASPに入ると思っているだろうけど、WASPじゃないんだ」("P"はプロテスタントのP)という台詞が印象に残っている。

世の中にはまだ、ありとあらゆる差別がある。

黒人に対するリンチや吊し上げ、2017年に起きた「ユナイト・ザ・ライト・ラリー」が取り上げられていて、私自身全然知らないことばかりであることに気付かされた。

こんなに重くて重要な、そして向き合わなければならないテーマをエンタメに組み込んできてしまう監督すごいね。

16. Mission: Impossible - Fallout

2月6日。Amazon prime。Directed by Christopher McQuarrie.

あ、前作ローグ・ネーションと同じ監督だ。
舞台は世界最大の水源地とされる「シアチェン氷河」。インドとパキスタンの係争地、カシミール地方。映画の設定では、シアチェン氷河はインド、中国という世界の3分の1の人口を擁する水源地ということらしいけど…?ここまでフィクションなのかな?調べても出てこない。

今回のミッションは、「アポストル」が企むシアチェン氷河での核爆発(による水質汚染)を防ぐこと。アメリカ映画における核爆弾についての論文でもあるんじゃないか、ってくらい核爆弾出てくるよね。

ストーリーの前半が、人間が作り上げた街パリやロンドンを中心に進んだけど、後半(というか終盤)は、山!渓谷!崖!という剥き出しの自然が描かれる。

空と氷が印象的な映画だった。

17. 사바하

2月6日。Netflix。チャン・ジェヒョン監督。

日本では劇場未公開の作品。こういうとき、動画配信サービスって便利。DVDのレンタルとかしたことない人間だから、Netflixがなかったらこの作品は見てなかった。漢字にすると「娑婆訶」らしい。意味はよくわからない。

ジャンル的には宗教スリラーなのかな?
韓国といえば儒教だけど(でもこれは宗教というより社会システム的な存在であるイメージ)、この映画では仏教やらキリスト教やら、胡散臭い新興宗教やらが出てきた。

詳しく解説してくれてるサイトがあって、それを読んだ後にこの記録をまとめてるけど、「(特に宗教とか民俗的なことに関心がある人にとっては)分かるとすごくおもしろい」というのが私の感想。というかこの「解説」がすごくわかりやすくて良い。リンクフリーらしいのでリンク貼っておく。自分のために。

冒頭で登場するなんだか不穏な「それ」の正体を知るために、最後まで映画を見させてしまう監督のストーリーテリング素晴らしすぎでは。

18. Constantine

2月6日。Netflix。Directed by Francis Lawrence.

どんな映画が全く知らずに見たら、ダンテの神曲が広がってそうな映画だった。めちゃくちゃキリスト教。

自殺未遂を起こして天国や地獄から人間界に侵入してくる存在が見えるようになった主人公が、人間界を守る話…か??

「自殺は大罪」というキリスト教の教えを地で行く、ある意味すごい映画。

ティルダ・スウィントンに天使の役をさせたらそれはもう大天使ガブリエルでしかない。何気にキアヌ・リーブス出演作品初めて見た。若すぎて、『ジョン・ウィック』に出演している人とは別人みたいだ。

19.승리호(スペース・スウィーパーズ)

2月7日。Netflix。チョ・ソンヒ監督。

宇宙のゴミ掃除人という、衛生軌道帯において「下層階級」とされる人たちが、ひょんなところから指名手配されている「アンドロイド」(本当は人間)を見つけてしまい、儲けようとしたらいつのまにか権力に抗争することになった!という感じの映画。

なかなかにコメディーだった気がする。笑えるという意味でおもしろかったし、「アンドロイド」がとても可愛かった。勝利号の仲間達はベタな(よくある)キャラクターだけども、謎の安定感がある。でもそれは同時に、偏見に凝り固まってるからそう思うのかもしれない。

20. Midnight in Paris

2月19日。Netflix。Directed by Woody Allen.

仕事終わりのレイトショーで見られたら最高な映画すぎる!

夜中の12時って、シンデレラなら魔法の解ける時間なのに、この映画では逆に、お迎えの「馬車」がやってくる。タイムスリップして、そこからさらにタイムスリップして…最終的に(おそらく)ルネサンス期まで行ってしまったのおもしろかった。

著作は読んだことなかったけど、ヘミングウェイ、『誰がために鐘は鳴る』の話をしているんだろうな〜!というのは分かった!私の根がオタクだからかもしれないけど、こういう映画を見ると、人間みんな何かのオタクだと思うよね。

素敵なパリの夜だったな…!パリに行きたいし、もっと本を読みたい!

同じ監督作の『Rainy day in New York』も見ないといけないやつ〜!

21. Red Dot(赤い光点)

2月20日。Netflix。Directed by Alain Darborg.

ただの旅行に来たつもりの主人公を襲う復讐の映画だった。

車に「ただぶつけただから大丈夫」っていうのが壮大な伏線で、そして主人公は何も反省してないんだなっていうのがよく分かる。まぁショックで自分の記憶を改竄したんだろうけど。

それにしても犬が可哀想すぎるのはいただけなかった…。発端となった事件に全く関係のない人まで巻き込まれて殺されちゃって、そこまで含めて「ひき逃げ」だったんだな、という感じ。

22. Shutter Island

2月27日。Netflix。Directed by Martin Scorsese.

メメントみたいな感じ。レオナルド・ディカプリオ、難しい役が好きなのかなってくらい複雑。インセプションを思い出した。でもこういう役似合うよね。

メインストリームになかなか辿り着けないように視聴者をめっちゃ騙しに来る感じ。同じ監督の作品見てみよう〜。あとレオ様の作品も見てみよう〜!(実は3作くらいしか見てないことに気がついた。)

23. The Nanny Diaries(邦題:私がクマにキレた理由)

2月27日。Netflix。Directed by Shari Springer Berman and Robert Pulcini.

スカーレット・ヨハンソンだったので見た。まさかのクリス・エバンズも出演していて、アベンジャーズ の2人がこんなところで共演していてなんだかほっこりした。普通の人間の役やってる!って。

日本にいると、日本だけが「子育ては母親の仕事」という古い習慣に取り残されてる気もするけど、洋画とか見るとまだまだアメリカだって、スウェーデンだって、そういうところは残っているんだなって感じ。まぁこの映画は13年前の映画だから、今と比較するのは違うけど。

24. 1922

3月6日。Netflix。Directed by Zak Hilditch.

すこし前に見た「シャッター・アイランド」系統の映画を見たいなと思って。

100エーカーの農場をめぐって夫婦で意見が分かれたところに、その解決策として息子と協力して「妻殺し」を実行した夫の記録、という感じの映画。

終始ネズミがすごい…。こんな記事を読んだけど、スティーブン・キングはネズミが好きなのかなってくらいネズミが盛りだくさん。ネズミ、ネズミ、ネズミ…。一匹だけ白いネズミが混ざっていたな…

隣家の農家まで没落したことを考えると、時代に取り残された男性たちの末路が描かれているようにも思える。なんとか現状維持できるようにと「夫」が考え出した策の先の犠牲者が妻で、また隣家では「あなたの考えが正しいです」と常に夫に従順だった妻が家を出ていってといった具合に…

まぁその「時代」というものには女性の地位といった問題も含むけど、一方で、綺麗な川を汚すものとしての「工場」も含まれている。1922年だからね。

突然「うわぁ!」ってびっくりするホラーではないけど、地味地味と陰湿に魔の手が忍び寄ってくる感じのホラー?私のイメージでは、日本のホラー映画に近いものを感じる。「シャッター・アイランド」とは全然違った。

25. Interview with the Vampire

3月7日。Amazon レンタル。Directed by Neil Jordan.

友達のおすすめで鑑賞。「不健康なトム・クルーズが観れるよ」という説明は正しかった、120%くらい。不健康どころか人間じゃないからな。トム・クルーズ扮するレスタトも、ブラッド・ピット扮するルイも、顔白くしすぎて流石にやりすぎでしょと突っ込みながら見てた。そういう(吸血鬼である)彼らに「美しい」という形容詞がつくのだから、「白さ」というものが美しさの指標であったんだなとも思った。

ところで、「吸血鬼」ってしばしば「美しいもの」として描かれるよなと思った。美しいものには毒がある的なあれ?

9割くらいいかにも「旧世界」の雰囲気をを醸し出しているのに、最後の最後でめちゃくちゃポップな現代アメリカが登場してしまったの笑った。「まだボヤいてんのかよ」っていうのもツボ。いやいや、お二人さんなんか盛大に仲違いしてませんでした???みたいな。

現代アメリカの記者が、200年以上生きている(?)吸血鬼へのインタビューをするという体裁を取っているから、あまり感情を揺さぶるという感じではなく、終始淡々とルイのこれまでの遍歴が語られる感じ。

あんなに死にたがってたルイなのに、何故ヴァンパイアになることを選んだ?って感じだし、人間の血を飲む描写も少なくて相変わらず動物の血飲んでるの?人間の血飲んでるの?って感じだし、若干足りないところがちらほらある気はする。

死者の血を飲むと死にそうになったり、「永遠の命」というのはあくまでヴァンパイアとしてのものであって、人間としては肉体的にも精神的にも死んでいるんだっていう描き方はおもしろかった。というか作中でヴァンパイアも大量に死んでる(ルイが殺してる)し。

ヴァンパイア系の作品って、もちろん人間に害をなしているんだけど、人間vsヴァンパイアというよりも、彼らそのものに焦点が当てられることが多いのかな?そこまでヴァンパイア映画観たことないから分からんけど。単純に今流行りの「鬼滅」と比べると、そう思う。

「美しい」トム・クルーズを鑑賞させていただきました、という感じの作品。というか、トム・クルーズ、トム・クルーズだと認識してみないと気付かないレベルで不健康な役だった。MIシリーズのトム・クルーズが頭にこびりついてるから……。

26. The Departed(2006)

3月13日。Netflix。Directed by Martin Scorsese.

「死んでいった者たち」。「死者」よりもこちらの方が、映画の内容には日本語としてしっくりくる。

ギャングを描く作品って最近も結構あるのかな。これからは制作年代も記録していこうかな。でも制作年だとちょっと曖昧になることあるか。公開年でいこう。はい。

本当の父親ではないものの、「父親殺し」あるいは父親を超える過程、みたいなのもモチーフとして含まれている、と思う。

ディカプリオとスコセッシのタッグ作品好きかもしれない。シャッターアイランドも良かった。アイリュシュマンも見ねば。

「ここはネズミの国だ」ってセリフおもしろかった。ディズニーランドかよ。しかもネズミは一匹だけじゃなかったという…あらら…そして最後はみんな死ぬ…というかみんな「神の国」に行ったということだろうか…。主人公の国会議事堂へのこだわりはよく分からんな…真っ当に行きたかったのかな…ロースクール云々とも言っていたし。

27. Ocean's Eleven(2001)

3月14日。日曜ロードショー。Directed by Steven Soderbergh.

1週間ほど前に、吸血鬼のブラッド・ピットを見たところだったんだけど、普通に人間の役の方が良い。普通にカッコ良い。そしてジョージ・クルーニーが若い。

出所した泥棒脳の主人公が、仲間を集めて計画を練ってシミュレーションも綿密に行って、セキュリティの厳重なラスベガスのカジノの金庫を破る話。ついでに元妻とも復縁。

ストーリーは終始テンポよく進むけど、お約束のポンコツシーンもあったりと、そこそこおもしろかった。でもコメディにはジャンル分けされない気がする。

泥棒メンバーには意図的に色々な人種を組み込んでいるんだと思うけど、いつしか話題になった「ライティング」(?)については、撮影時はまだ無関心だったんだろうなと思う。

ボスはオーシャンかもしれないけど、実質ラスティが取り仕切っとるやんってめちゃめちゃ思った。ラスティイレブン。ブラピかっこよかった(2回目)。

28. Ocean's Twelve(2004)

3月14日。日曜ロードショー。Directed by Steven Soderbergh.

ふっかけられた返済金を盗みで返すという、なんともすごい映画…。まぁ泥棒の映画なので…。

29. Ocean's Thirteen(2007)

3月14日。Netflix。Directed by Steven Soderbergh.

30. Tinker, Tailor, Soldier, Spy(2011)

3月18日。Amazon prime。Directed by Tomas Alfredson.

邦題は『裏切りのサーカス』。コリン・ファースに、ゲイリー・オールドマンに、ベネディクト・カンバーバッチに…とキャストが豪華。というかコリン・ファースとマーク・ストロング、『キングスマン』でも共演してるじゃん〜!こちらの映画はかなりコメディだけど😂

出だしの雰囲気からして、「これは私の好きな映画だ!」と直感。終始暗いんだけども、私はこれが好き。劇中の音楽も、映画の雰囲気を上質に作り上げている(と思う)。

組織から追い出された元諜報員が、組織幹部に紛れている二重スパイ「もぐら」を見つけ出すスパイもの。少し前に見た『ディパーテッド』では二重スパイのような存在は「ネズミ」と呼ばれていたけど、今回は「もぐら」だった。

ストーリーの大筋くらいは初見で掴めたけど、本作は2度目の鑑賞が楽しいやつだと思う。『メメント』的な。「カーラ」が組織なのか個人名なのかいまいちつかめなくて、これが何を指す言葉なのか把握するのにだいぶかかった。

まずサーカスメンバーの名前の把握に時間がかかる。自己紹介全然してくれないから。主人公なんてかなり長い間沈黙してたよね??

ストーリーを綿密に提供するのではなく、場面場面を写真のように切り抜いて提示して、「君の頭の中でストーリーを完成させたまえ」と言われているような脚本だった。セリフ(聴覚)か映像(視覚)のいずれかで場面を提供して、無駄を省いているような感じ。

原作となった小説があるみたいなので読みたい。原題についてはMother Gooseの童謡から引っ張ってきているらしいので、こういうとき育った環境による、映画背景への情報力の差というものが足を引っ張るよな〜〜

30.5.  I Killed My Mother(2009)

3月18日。Amazon prime。Directed by Xavier Dolan.

「30.5」なのは途中で観るのをやめたから。監督の名前に聞き覚えがあって見始めたけど、私の好みではなかった。最後まで見たらまた違うのかもしれないけど、今日はまだ観る時ではなかったということで。またいつか観るかもしれない。

31. Paterson(2016)

3月18日。Amazon prime。Directed by Jim Jarmusch.

パターソンに住むバス運転手パターソンの1週間を描いた作品。

レビューに「同じことの繰り返しでつまらない」とあったけど、まぁ確かに同じことの繰り返しではあった。でもそれは私たちの「毎日」にも言えることで、ただ、完璧に同じかというとそうではないよね、とも思う。それはこの映画のメッセージでもあると思う。

劇中に、ちょいちょい一卵性の双子が出てくるんだけど、双子というものは外見は似ているけども異なる存在であって、それと同じように、繰り返される毎日もよく見れば違うものだよねってことかな。パターソンが書き留めている詩についても、昨日と今日とでは進捗(?)が異なる。

映画に「非日常」を求めると、先に挙げたレビューのようなことになるんだろうなと思った。分からなくもないけど。

32. The Killing of a Sacred Deer(2017)

3月18日。Amazon prime。Directed by Yorgos Lanthimos.

邦題は『聖なる鹿殺し』。

『裏切りのサーカス』以上に分からんかった……。元となるのがギリシャ神話の「イピゲネイア」の話しらしい。知らんわそんなん。

ジャンルとしては「サイコホラー」映画らしい本作。患者を手術中にミスで亡くした医者(夫)の家族(妻、娘、息子)が、患者の息子によって謎の症状に悩まされるようになり、選んだ1人を殺すか、3人全員を見捨てるかという選択を迫られる。

解説してくれているブログを読むとめちゃくちゃ深いじゃんこの映画!となる。

洋画ってほんと、神話とか宗教とかをベースにしてくるから細部まで理解するのなかなか難しいんだよね…本を読もう本を…。

33. Nomadland(2020)

3月26日。横浜ブルク13。Directed by Chloé Zhao.

書きたいことはほぼ日記に書いてしまった。

プレミアムフライデーが、年休を取得したことによりさらにプレミアムに!久しぶりの三連休となったの最高だね!今日は103日ぶりに映画を映画館に見に行った。作品は『Nomadland』。感想は別に映画の記録でまとめる。見終えた後、パンフレットを買おうと思ったのに、そもそも作ってないという……。ドキュメンタリーに近い撮り方。主人公のファーンはヴァンの後部座席が落ち着ける場所らしいけど、私の場合は2段ベットの下の段かもしれない。あるいはトイレ。要するに狭いところが好き。素敵な作品だった。とにかく空が綺麗。人が空の下にいる映画。季節労働者のような感じで、時期によってはAmazonで働くというのが最高に現代を表しているなと思った。広大な土地を有するアメリカならではの映画でもあるのかなと思った(日本じゃなかなか発想が難しそう)。

自然に包まれるような映画だった。主人公のファーンが川(?)に入って、ゆったりと生じる流れに身を任せる様はまさに、人生は流れるものだという感じ。

登場人物たちには、個々の事情は異なるにしろ、「リーマンショックで職を失った」という背景があって、詩的でありつつも今現在をこういう風に生きている人もいる、という不思議な映画だった。もとはノンフィクションらしい。

「ホーム」という語彙は、心理的な意味までも含むからこそ、「私はホームレスじゃなくてハウスレス」だとファーンが入っているのだと思う。

というか住所なんて、行政上の問題だよね……住民税がどうとか住民サービスがどうとか……もっと広い目で見れば同じ国に住んでいるんだから、掛かるとするなら税金だって国に納めたらいいんじゃないかな……とか思った。

屋根の下じゃファーンに光が当たらない(ように見える)のに、空の下では太陽の光が当たっているの、演出の一環かなと思った。もっとも室内灯とかで顔自体は明るく見えるけど。それくらい「空」とか「朝日」とか「夕日」が印象的だった。もしかして全部朝日かな?

音楽も素敵だったな。パンフレットないのショックだけど、円盤出たら円盤で欲しいな。

34. The Irishman(2019)

3月27日。Netflix。Directed by Martin Scorsese.

3時間半。長くて途中で見るのやめようかと思ったけど、惰性で最後まで観た。アメリカにおけるギャングとかマフィアとかの位置付けよく分からんな。ヤクザをパワーアップさせたものとかイメージすればいいのかな。

マフィア映画って、銃、麻薬、アルコールに溢れているイメージだけど今回は銃(というか殺人)、組合、年金という「はい???」という感じの要素がメインだった。

というのも、見終えた後映画について調べてようやく、マフィアの伝記映画だと知ったからであった…組合のトップという権力のある存在と、マフィアという裏社会で権力のある存在、というのは日本ほどお互いに遠い存在ではないのかもしれないと思ったら、銃、組合、年金というワードにも納得がいく気がする。そもそも「銃」というのが共通語なのかもしれん。

そして「第256支部長(数字は適当)」とか出てきた時には、アメリカの労働組合の規模の大きさに驚いた。

マフィアも老いるしただの人間なんだなという描き方に違和感を感じれば良いのか、それとも人の一生に哀愁を感じれば良いのかちょっと微妙だけど監督の意図としてはおそらく後者?

不謹慎だけど、メインストリームの外側にいる登場人物に「〇×〇×年、殺害」とか「〇〇××年、老衰により死亡」とか付されていたの少し笑ってしまった。なにより自然死の少なさね……

35. The Shawshank Redemption(1994)

4月4日。Netflix。Directed by Frank Darabont. 邦題『ショーシャンクの空に』

職場の先輩の勧めで見た。無実の罪を着せられた銀行員アンディと、終身刑となり既に刑務所で20年を過ごしているレッド、そして刑務所で過ごす人たちの映画。

私は経験したことがないから分からないし、人によって違うだろうとは思うけど、老ブルックスの「壁の向こうが怖い」という台詞に、何故か「そういうものなのかもしれない」と現実を感じた。

脱獄シーン、そんなに上手くいくかいなというツッコミは、そこに焦点を当てた映画ではないから不要なんだと思う。本作は刑務所に収監された囚人たちの友情と希望の物語だったけれど、長い人生を命の檻だと捉えれば、目標(友情とか希望とか)なしで正気を保って生きながらえるのは難しい、ということになるのかもしれない。

36. Seven(1995)

4月4日。Netflix。Directed by David Fincher.

「七つの大罪」をモチーフにしたクライム・サスペンス。退職間際の老刑事サマセットと、血気盛んな若手刑事ミルズのバディが、猟奇的な殺人事件を追いかける。

序盤の「感情で生きるな」というのは伏線だったのか。

「7つの大罪」がモチーフとされているのはおもしろかったけど、ミルズの妻トレーシーはどうして犯人の手によって裁かれなきゃいけなかったんだという感じ。犯人の理論を完璧にするには、ミルズが殺されるのが筋なのではないかと思う。まぁなんらかの引っ掛けがあるのか。そもそも死をもって罪を贖うと決まっているわけでもないし。とあるサイトの、ミルズが悪魔を迎え入れたという考察はおもしろいなと思った。

37. Gemini Man(2019)

4月9日。Netflix。Directed by Ang Lee.

ウィル・スミス対ウィル・スミスの映画。

引退宣言をした敏腕狙撃手ウィル・スミス(オリジナル)のクローンがぽっと登場して、そのクローンの中で生き方についてなんかちょっと葛藤が生じて、これからはしがらみから解放されて生きます!って映画。オリジナルとクローンの状況を中途半端に描きすぎていて、中途半端に終わってしまった感じがある。

38. 21Bridges(2019)

4月13日。横浜ブルク13。Directed by Brian Kirk.

冒頭のマンハッタンを俯瞰するシーンは、「これからこの街に大きなことが起こるぞ」と教えてくれているようで、緊張感が高められる。マンハッタンの橋を全て封鎖するという触れ込みだったから、その発端となった事件がたった「二人」の犯行だったことに意外性を感じたけど、その後の展開は、21の橋を封鎖するには十分すぎる「理由」だった。

あらゆる「正義」が存在して、その意味が曖昧になっている現代において、犯罪の多いマンハッタンを舞台に、他人に惑わされずに自己の正義を貫こうとする刑事アンドレ(チャドウィック・ボーズマン)の生き様を描いた映画。ここのところ、「正義」だとか「法」に興味があったからとてもおもしろい映画だった。

「(民間人による)強盗」、「(民間人による)警官殺し」、「(警察による)共犯者殺し」、「(警察による)主犯殺し」、「(警察による)麻薬の裏取引(=警官の汚職)」、「(警察による)警官殺し」と、事件が連鎖していくなかで、冒頭での牧師(神父?)の言葉どおり、自分の正義を見失わずに事態の収拾を図る主人公アンドレは、クリストファー・ノーラン監督の『ダークナイト』に登場するバットマンを一般人に降ろしてきたかのように思えた。(個人的に、バットマンについて、人の上に立って裁きをくだす役割を与えられているという意味で、人間(一般人)ではないと捉えているので)

アンドレの「正義」観は冒頭の内務調査のシーンにも現れている。理由があるとはいえ自身の手で殺した犯人が、寝ているときに自身の夢に出てくることについての、「正義の代価だ」という台詞は、治安を守る警察官Civil Servantであるということを十分に自覚していないと出てこないんじゃないかと思う。そしてなにより、「正義の代価」がアンドレに降り注ぐ描写があることで、彼もまた人間だった(神ではなかった)と、安心感、共感を覚えた。

警官(ニューヨーク市警)について、「自らの命をかけて守るNYに、彼らは嫌われている」という分署長の言葉はとても印象的だったし、これは実際にもそうなのだろうと思えるリアリティが、この映画には詰め込まれていた。

東西南北の地理関係を含め、ニューヨークのこと全然知らんなと感じた。劇中でも言及されていたように、ニューヨークの地区によって、住んでいる人たちが異なるのは事実なんだろうなと思う。実際のマンハッタンを知らないからなんとも言えないけども、「生まれ育った環境に左右される」ということを描くのに、マンハッタンという舞台は最大限に生かされていたのかもしれない。

アフリカ系アメリカ人を警官と犯罪者に据えて対照的に登場させたのも、昨今のBLM運動の流れだろうと思うし、アクション・エンターテイメントであると同時に社会的な内容を孕んだ作品だった。アンドレの相棒として、女性(付け加えるなら白人)が置かれたのも、彼女たちが「社会進出」しているとはいえ、ニューヨークにおいてさえ、「女性」の前に聳え立つ壁があるのだと描いていると捉えることができる。

アフリカ系アメリカ人の、犯罪者としてのマイケル役をこなした俳優さんの揺れ動く演技がとても印象的だった。

本作はアベンジャーズ /エンドゲームのルッソ兄弟が制作にいたとのことだけど、もしかするとブライアン監督の作品は、私にハマるものが多いかもしれない。

39. Palm Springs(2020)

4月13日。横浜ブルク13。Directed by Max Barbakow.

永遠に続く11月9日を生きる主人公ナイルズと、それに巻き込まれてしまったサラのタイムループラブコメ。映画館でめちゃくちゃ笑った!

「今日みたいな日が毎日続けばいいのに」という思いと、「明日は明日がいい!」(劇中だと “I want tomorrow  to be tomorrow!”って言ってたかな)という気持ちは、「幸せに生きたい」という欲求の異なる側面であって、矛盾しないんだなと思った。

おちゃらけたコメディでありつつも、変わらない毎日も、予想できない明日も、どちらも愛しくなるようなヒューマンドラマ。

「過去」を忘れるくらい長い間、昨日も、今日も、明日も「今日」の繰り返しというタイムループからの脱出を諦めて「毎日」を楽しむことにした主人公は、「その日」を終わらせたいけど終わらせるまでの勇気はなかった、と見ることもできる気がする。逆に、タイムループから脱出しようと孤軍奮闘するサラの姿はとてもエネルギッシュだった〜!

劇中で、ちゃんとロイを脱出させる道筋までつけてくれたのはツボだった。軽快な音楽にもすっかりハマってしまったよね!2021年に観た映画のうち、ベスト五本の指に入る!

40. Edge of Tomorrow(2014)

4月16日。Netflix。Directed by Doug Liman.

邦題は All You Nead Is Kill。日本のラノベが原作らしい。

タイムループアクション。Killの目的語が第三者じゃなくて自分だった!
タイムループは、同じ場面を繰り返すからこそタイムループになるのだけど、それだと観客が飽きる。本作は、最低限タイムループしていると分かる程度に、同じ場面がめちゃくちゃショートカットされていて、工夫された演出だなぁと思った。

「死んだらリセットして始めに戻る」というのは、すごく「ゲーム」の世界だった。なんならバッドエンドを回避(リセット)するために自殺までしてるし……前作もそうだったけど、タイムループに自殺は付き物……
Aを選択で進んだ未来、Bを選択して進んだ未来、とルートの分岐のようなものが垣間見えるところにもゲーム性を感じた。

ちょっとスカッとした気分になりたい時に見る映画。ハリウッド好きそう。

41. Baahubali 2: The Conclusion(2017)

4月19日。Netflix。Directed by S. S. Rajamouli.

一作目を見ていないのにその続編(?)を見ると言う失態を犯してしまった。でも邦題だと単に『バーフバリ 王の凱旋』だから仕方がない。今度一作目も見る。

インドの映画。イントロからインド神話の匂いがぷんぷん香ってきて、私の中の神話好きな人格が出てきた。全体的に英雄の通過儀礼的なもの(例えば冒頭のバーフバリの旅とか)がストーリーの軸になっている気がした。
インドの神話にそんなに詳しくないけども、だからこそ(マハーバーラタの入門みたいなやつしかちゃんと読んだことない)、この映画を見てもっと知りたい〜!ってなりました!

バーフバリとデーヴァセーナが共闘して3×2本の矢を放つシーンはすごくよかった(語彙力)!!音楽(特に「暴風神ルドラのよう〜」ってやつ)と、どこかシェイクスピアを彷彿とさせる詩的な台詞の言い回しがとても印象に残った。いやまじでこれはインド神話勉強するべきだな。

この映画を見ると、ディズニーの実写版『アラジン』はインド映画の系譜に並ぶのかな〜と勝手ながら思う。

え!めちゃくちゃすごい映画だねこれ!

42. Mank(2020)

4月28日。Netflix。Directed by David Fincher.

多分これは『市民ケーン』を観ないと、そして当時のハリウッドやアメリカ社会を知らないと分からないやつだ。赤狩りとかの頃?共産主義と社会主義の違いは私も説明できないな。

ただ、本作は『市民ケーン』を大きく踏まえた構成になっているんだろうな、というくらいは分かった(特に時間軸を行ったり来たりするストーリー構成とか)。

モノクロ映画だったけど、観ているときにはあまり気にならなくて、むしろ自分の脳内で勝手に色が補正されていた。観賞後の残像も基本モノクロだし、人間の脳っていうのは適当だな〜。『市民ケーン』観よ。

メモ:『市民ケーン』脚本はハーマン・マンキウィッツ、オーソン・ウェルズ。
本作に関する記事:

43. Things Heard & Seen(2021)

邦題『闇はささやく』

5月6日。Netflix。Directed by Shari Springer Berman and Robert Pulcini.

ホラーかなと思って見たらホラーじゃなかった。善悪どちらの幽霊も登場するという、なかなか珍しい作品。割と善悪二元論的な感じかな?

結婚して妊娠して子育てをして、社会から隔絶されて、意見できなくさせられる過程の女性を丁寧に描いていたと思う。割とフェミニズム的な要素が埋め込まれた作品。

最後、ちょっとどうした?ってくらいいきなり仮想世界が登場したけど、それ以外はおもしろかった。

44. Leave No Trace(2018)

邦題『足跡はかき消して』

5月6日。Netflix。Directed by Debra Granik.

世間の詮索を避けてひっそりと森の中で暮らしていた父と娘の、別れの物語。別れというのは旅立ちと同義でもあるかな。

「娘(子供)は父親(親)のものではない」ということが意識された映画だったと思う。

「パパが家」だと言っていた娘が、社会とのつながりに触れて、「私はここに住みたい」と自我を確立・主張していくようになる。それに対して、(おそらく軍隊のPTSDで)社会からどうしても離れて暮らしたい父親は「無理だ」となんとか今までどおりの生活に戻ろうとする。

この映画は子供が親の手元を離れる事象について、子供の反応期を契機としていなくて、新鮮だなと思った。

娘の方はそのうち電話を持ちそうだけど、劇中においては電話を持たない二人からこそタイトルとおり、leave no traceになるんだろうな。

邦題も好き。『足跡「を」』じゃなくて、『足跡「は」』となっているセンスも好き。

45. Zodiac(2007)

5月11日。Netflix。Directed by David Fincher.

警察組織の管轄の違いによる縦割り捜査、のようなものが浮き彫りにされていて、警察に属さない第三者(漫画家)がゾディアック事件の情報をまとめていくというなんとも奇怪な出来事が描かれているんだけども、これ現実なんだよな……。監督には、そこを批判する意図もあったんだろうと思う。結局未解決事件となっているし。

46.Hamlet(1990)

5月12日。Amazon Prime。Directed by Franco Zeffirelli.

ヘレナ・ボナムカーターがめっちゃ若いな!?というのは置いておいて、有名どころについてにやにやしながら見てしまった。やっぱり、言葉として知っているのと、実際に映像で見てみるのとではまた違った刺激がある。

オフィーリアは『ハムレット』だったか……この場面が一番悲しかった。

戯曲が土台の映画というだけあって、台詞回しがわりと舞台よりなのだと思う。舞台をあまり見たことないけど、舞台用の脚本を頑張って映画にした感はあった。

ハムレットぐずぐずぐずぐず優柔不断すぎて、そりゃ「君はハムレットかい?」という言い回しも定着するよな〜というか定着させてしまうシェイクスピアすごい……。

47. Swiss Army Man(2016)

5月12日。Netflix。Directed by Daniel Kwan and Daniel Scheinert.

感想に困るシーンが多々。誰かと一緒に見る場合、その相手をかなり選ぶ。

結局メニーは最初から最後まで死体だったのか…?

48. The Wolf of Wall Street(2013)

5月12日。Netflix。Directed by Martin Scorsese.

マーティン・スコセッシ監督とディカプリオのタッグだったので見た。

アイリッシュマンが、「終わってみれば人の一生なんてこんなものさ」としんみりするような映画だとするなら、こちらは「人生は短い!いっちょド派手にやろうぜ!!」ってめちゃくちゃ陽気な映画。陽気すぎて笑える。ひたすら酒、クスリ、女……の繰り返しで、むしろ人生の楽しみそれだけかよってなる。

今まで見たスコセッシ作品の中では、ディパーテッドが好きかな…。

49. Moonlight(2016)

5月13日。Netflix。Directed by Barry Jenkins.

50. Titanic(1997)

5月25日。地上波。Directed by James Cameron.

2021年50作目に鑑賞した映画はタイタニック。あまりに有名すぎて、今まで見たことがなかった。

若き日のディカプリオめちゃくちゃかっこよい。どこかで誰かが、「この映画では、ジャックは死ななければならなかった」と言っていて、少し反発したくなったけども、タイタニック号の沈没は悲劇なのだから、たしかに彼は死ななければならなかったのだなと思う。生きていたら、ハッピーエンドでめでたしめでたしのまま終わってしまう。

51. Gradiator(2000)

5月27日。Netflix。Directed by Ridley Scott.

少し前にローマ帝国の歴史に触れた際、「五賢帝」を記憶の底から引っ張り出してきたところだったので、「あっ、これがマルクス・アウレリウス」「あっ、これがパクス・ロマーナ終わらせちゃうコンモドゥス」「あ!!SPQR!!」と、ローマ帝国の前期帝政期の雰囲気を楽しんでいた。コロッセオは教科書どおり、「パンとサーカス」の舞台として描かれていた。

主人公が忠誠を誓ったのは、皇帝個人ではなく、また体制でもなく、「ローマ」であった。ローマの建国精神に忠誠を誓った、という感じかな。

SPQRは、ラテン語で「Senatus Populusque Romanus」の略語。日本語にして、「ローマの元老院と人民」。本作ではわりとキーワード的な存在だった。

52. 陰陽師清雅集(2020)

6月5日。Netflix。郭敬明監督。

邦題は『陰陽師:とこしえの夢』

53. MAMA

6月6日。Amazon Prime。


54. Blue My Mind

6月6日。Amazon Prime。

邦題は『ブルー・マインド』。なぜ「MY」を消したんだ。

アマプラでの評価にあったレビューの一つが、とても参考になって、なるほどそうやってみるとストーリーが綺麗にまとまるなぁと思いました。思春期の葛藤(?)が描かれているホラー作品(になるのか?)。

55. American Utopia(2020)

6月9日。kinoシネマみなとみらい。Directed by Spike Lee.

たまには守備範囲外(そもそも守備範囲とは?って感じだけど)の映画を見てみようと思いまして、腐ったトマトの評価が良いらしい本作を鑑賞してきました。以前は「全米が泣いた!!」と付する広告が多かった気がするけど、最近は「レビューサイトの評価が高かった!!」とPRされる映画が多いように思う。

音楽全然詳しくなかったので、正直あまり楽しめなかった。普段ミュージカルとか舞台とか見ないので、アメリカのミュージカル文化の様相を垣間見れたのはおもしろかったかな。というか舞台あんなに狭いのね!

観客も含めて一つの舞台にしている感じの脚本らしかった。

56. The Woman in the Window(2021)

6月12日。Netflix。Directed by Joe Wright.

『シャッター・アイランド』の逆を行くスリラー映画。

ゲイリー・オールドマン老けたな……。不安障害を患う人の、現実知覚力とでも言うべきものを軽視してますよね?という問題提起がなされている。『シャッター・アイランド』には嘘がなかったけど、本作には正気な(?)人の嘘があった。

主人公の幻覚に過ぎないのか、それとも確実に何かが起こっているのか、最後まで分からなくてスリリングだった。

57. Orphan(2009)

6月15日。Amazon prime。Directed by Jaume Collet-Serra.

邦題は『エスター』。続編の『Esther』が制作されるらしい。

スリラー映画なのかな。一人の少女を孤児院から受け入れた日を境に、(おそらく結構順調だった)家族の間にヒビが入り、崩壊していく。エスターが何故、精神病院に掛かっていたかは描かれていなかったけど、彼女を取り巻く環境(特に家族とか)が、その人格形成に影響を与えているとするのなら、家族が生み出したモノが、(別の)家族を崩壊させるというなんとも皮肉な物語だなぁと思う。

そしてよくもまぁ、人をあんなにグサグサと……

58. Aladdin(2019)

6月20日。地上波放送を録画したやつ。Directed by Guy Ritchie.

Netflixで配信開始されたTENETを見ようと思っていたはずなのに、リモコンを持つ手はこちらを選択していた。劇場で公開されたときも観た作品だけど、ウィル・スミスのジーニーと、主演二人のA Whole New Worldに病みつきになる。

Speechlessの歌詞を知らなかった時は気付かなかったんだけど、作中ではどうやらジャファーも、「underestimate」される側の人間だったらしい。主役がジャスミンに寄りがちな「アラジン」だからか、「フェミニズム」が目立ってしまうけど、要所要所で一人の人間(=アラジン)が成長する過程も描かれている。

作中で描かれたジャスミンもそうだったけど、ペンは持てても、声は上げられない、もしくは上げるなという社会は、映画公開から2年経った2021年になっても、まだそう変わっていない気もする。

最後の「ジーニー、君に自由を(Last wish...... to say you free)」の台詞は、主人公の成長と、長いことランプの中で過ごしてきたジーニーが切実な願いを諦めかけていたこととが合わさって、すこし泣けてしまった。

なんだかんだでDisney好きだし、すごいなぁと思う。

59. TENET(2020)

6月20日。Netflix。Directed by Christopher Nolan.

去年、映画館でも観たのだけど、Netflixで配信開始されたと聞いて思わず3度目。ちなみに同監督作のDUNKIRKも今配信されてるよ!!

この監督の作品の中心には、どれも「時間」というテーマがあるけども、本作はそれが特に前面に出ていた気がする。

映画を見てるのに、SFあるいはスパイ小説を読んでる気分になれる。特にエンディングの別れと始まり。

60. 羅生門(1950)

6月23日。Netflix。黒澤明監督。

たまには趣向を変えて。というか、監督が有名なので観ておこうかなと。

終始降り続いている雨と、半壊している羅生門が印象的だった。笑う男に泣く女、疑心暗鬼になる人(まぁ男なんだけど)。

61. Arc(2021)


6月30日。横浜ブルク13。石川慶監督。
ケン・リュウの短編を原作とした映画。帰り道に本を買ってしまった。

余白のある映画、というのが第一印象。特に後半。生き急ぐようにストーリーが展開されない分、映画を見ながらあれこれ考えることができる。

不老不死について、両者はしばしば並ぶものとして扱われるけど、本質的には別物なんじゃないかという気がした。死んだら精神的にも、他人の記憶の中でも老いることはないけど、老いずに若いままというだけなら、死ぬこともある、という意味で。あれ?よく分からんな。

それはともかくとして、生物学的な老いだけでなく、「記憶し続けること」も人間にとっての「老い」なんじゃないかとも思う。劇中で、リナの「どこかおばあちゃんっぽいところありましたか?」というようなセリフがあったけども、これについて少し違和感を覚えたのは、そのせいかも知れない。

サークル(円)にはないけど、アーク(円弧)には始まりと終わりがある。一人の人間と、地球とを並べることはできないけど、地球という球体の上で、終わりのある生命が営まれているというのはなんとなく不思議だなと思う。

エマの「死体は物」という言葉も印象に残った。実際の法律上でも、飛行機の中で亡くなった人は「人」ではなく、「物」の扱いを受ける、らしい。人間は、「物」にならないために、不老不死の道を探し続けているのか、と思うとなんとなく不憫な気もする(自分だっていつか死ぬくせにね)。

「生あるものはみな死ぬ」とよく言われるけど、死ななくなったとしたら、それは「生」ではなくなって、ただそこに「ある」ものとして捉えられるのかな〜なんて思う。

62. 7月22日(2018)

7月2日。Netflix。Directed by 

ノルウェーで実際に起きたテロ事件を扱った映画。単独犯で、77人もの人が亡くなった事件。中学生の頃とは言え、そんな惨事が2011年7月22日に起こっていたなんて知らなかった。

排他主義の行きつく先。

63. 반도(邦題:新感染半島)(2021)

7月6日。Netflix。ヨン・サンホ監督。

前作の『新感染』は父親の犠牲に終わった。今作も母親の犠牲で終わるかと思いきや、最後の最後に諦めを振り切って、「理想論振りかざして、諦めが悪くて何が悪い!!」というパンチを効かせながらみんな(家族)で生き残った。何人かは漏れちゃったけど。

そんな明るい映画ではなくて、どちらかと言うとじめじめした暗い感じの、韓国ノワールっぽい雰囲気が終始漂っている。カン・ドンウォンの演技もその雰囲気醸成に一役買っていたと思う。『人狼』『ゴールデン・スランバー』を見て思ったけど、この俳優さんは今回のような役所にすごく強い気がする。

ゾンビ、アクション、スリラー?とかのジャンルで語られる、あるいは見られるよりも、ヒューマンドラマって感じかな〜もしくは、それらを融合したジャンル?

ミイラ取りがミイラになる映画でしたね。ちょっと違うけど。

64. The Lighthouse(2021)

7月9日。kino cinemaみなとみらい。

A24だし、ロバート・パティンソン出てるし、なんかおもしろいかな〜と思って観に行った作品。プロモーションとか全く見てなかったので、前編モノクロだとは思わなかった。この前もモノクロで何かを見た気がする。あ、羅生門か。モノクロの作品は、映画館で観た方がその迫力が楽しめると思う。テレビで見ると、画面の外は色彩豊かだからね。

映画を観ているというよりも、実際に誰かが撮った映像を見ている、という印象を受ける作品だった。なので余計にハラハラ、というか「次に何か起こるときのための」耐衝撃準備をさせられた気がする。

「灯りは俺のものだ」

モノクロだから見れたけど、カラーだったら結構グロい気がする……

65. SEOBOK(2021)

7月21日。Tジョイ横浜。이용주監督。

ソボクは漢字で「徐福」。漢字で字幕が出された時に、FGOで出てきたやつやん!となった私の脳内はゲームで埋まっている……(そんなこともないけど)

クローンを作り出して、そこから人類が死なない技術を生み出した韓国を舞台とした、政府機関と大企業の攻防の中繰り広げられる、永遠の命をもつソボクと彼を守ることになった余命半年の元情報局員の逃避行。逃避行っていうとなんかラブロマンス感出てしまうけど、ここに書いたそれは、決められた運命からの逃避の旅って感じ。

序盤に「武器の本質は恐怖」というセリフが置かれていた。ここでは、「人間が死ななくなる可能性をもたらすソボク」を概念的に武器であるとしていたけども、クライマックスではソボクが物理的に武器になっていて、セリフの重みが増した。

コン・ユ扮するギホンがソボクに服を買い与えた時、クローンが人間に近づきました、というように描かれていて、また、物語後半でもその服を脱がせられて実験体に戻ってしまいました、という風に演出がなされている。服は、いつから人間を構成する要素の一つになったんだろうと思った。

最後のあのシーン、「いや、決断早すぎない?」と思ったのは私だけじゃないと信じたい。まぁ別にそこの心情描写が物語の核ではないのでいいんですが……

日本で使われているポスターの文句には「世界か、君か」とある一方、韓国のそれには、「今を 生きる」と付しているものもある(他にも色々なポスターがある)。まぁ確かに、「世界より君を選ぶよ」みたいな展開の方が株上がるだろうけど、本作はそこまで切実に世界は迫ってこないのでこの文句は好きじゃないです、私は。だって「自分より君」だし、なんなら「自分も君も***だね」って感じだもん。

結局のところ、「運命」というものは存在して、それから逃れることは悲しいけどできないね、という感じの終わり方。ソボクの運命は、研究所で同じ日々を繰り返すことで、ギホンの運命はあと半年で死ぬこと。

これは私がそういう映画を選びがちということなのかもしれないけど、それにしても悲観的に終わる韓国の作品多くないですか?少なくともハッピーエンドではない、という終わり方。まぁ人生はいつか終わるので、そういう意味ではある意味終わりで「終わり」を描いているのかもしれない。

おもしろかったと言えばおもしろかったけど、いまいちインパクトに欠ける。8割くらいコン・ユとパク・ボゴムのアップを見ていた気もするし。

66.Bacurau(2019)

7月30日。Netflix。Directed by Kleber Mendonça Filho & Juliano Dornelles.

邦題が『バクラウ 地図から消された村』だったので、どうしても「地図から消された」というフレーズが映画を見る目を支配していたのだけど、全然そこに拘らなくてよかった。

「地図に載るにはお金がかかるの?」という子供の問いや、上流域の市長が水を止めているが故に、タンクで水を調達している様子は、恵まれた社会にとっては「あたりまえのものが、あたりまえではない」という事実を提示している。終盤では、こうした背景を持つバクラウでは「自力救済があたりまえ」という風潮も見て取れた。

67. 新聞記者(2019)

8月5日。Netflix。藤井道人監督。

「あっち」側と「国」側で隔たれる新聞記者と官僚の二人が、官僚の上司の死をきっかけに、新設予定の大学に潜む疑惑を暴いていく。最後の横断歩道を挟んで向かい合うシーンは、「あっち」側と「国」側の境目が可視化されていてとても印象的だった。「国」でもあり「国民」でもあり、「一人の人間(誰かの父親)」でもある劇中の官僚は、なんだか守らなければならないものが多すぎるなと思う。まぁそもそも、国が間違ったことをしなければいい話なんですけど、「権力」についてはどうもそううまくいかないみたいです。

松坂桃李扮する、外務省から出向中の内閣情報調査室の官僚役の名前が「杉原」なのは、第二次世界大戦中のリトアニアの外交官杉原千畝と被せた気がしなくもない(原案とされている書籍に出ているのかもしれないけどまだ未読なので不明)。

人間の心理とか、社会の実情に迫った映画が多くない中、こんな邦画が見たかった!!というのが第一印象。

68. Dr. Sleep(2019)

8月10日。Netflix。Directed by Mike Flanagan.

『シャイニング』を見てないのに、その続編を見るというやつ。明日見る予定なので許せ……。

69. Survivor(2015)

8月10日。Amazon prime。Directed by James McTeigue.

外交官が?大使館が?テロリストの入国を阻止??と、少しばかり「?」でいっぱいの起点で、最後まで見ても、諜報機関とか公安系がやっていることでは??と思ったけど、普段焦点を当てられることの少ない、軽視されがちな一つ一つの「公務」が、結果として大きな目的に繋がっているというようなテーマなのか、という点では主人公が外交官(査証官?)なのも納得しました。自分の仕事とも少しだけ繋がりもあって、わりとおもしろかった。

そうだよね、テロリストの摘発と関わるのって警察とか、軍隊とか諜報機関とかだけじゃないもんね。

テロリストの動機とか、最期とかはなぁなぁな気もしたけど、そこに焦点を当てた映画ではないので、さらっと流したのかなとも思う。

70. The Shining(1980)

8月11日。Netflix。Directed by Stanley Kubrick.

何がシャイニングなのかよく分からなかった。気が向いたら原作読もう。

71. 2001年宇宙の旅(原題 2001: A Space Odyssey)(1968)

8月13日。Netflix。Directed by Stanley Kubrick.

夜勤明けに見ちゃったから前半の記憶ほぼない……今度もう一度見ます。

後半見る限り、映画『インターステラー』はこの映画のオマージュが散りばめられていたんだなと気づいた。ノーラン2001年めっちゃ好きやん。

72. The Platform(原題:El Hoyo)(2019)

8月14日。Netflix。Directed by Galder Gaztelu-Urrutia.

垂直型の建物(刑務所?)における、「食」を人質に取られた時の人の争いを描いた映画。食べられないと人間は死ぬので、当然死んでいく人が見えるところでも、見えないところでも、人が死ぬ事象(つまり自殺も他殺も)はばたばた発生している。それでも運良く上層部にいられる人たちは、そんなことにお構いなし。来月は自分がそこにいるかもしれないというのに。
「見えなかった」「知らなかった」ふりをするのが得意な、現状の社会に対するメッセージがめちゃくちゃ分かりやすい。

当初、主人公は過酷な環境下での生き残り戦略としての殺人について、「環境のせいではなくその人の心の持ちかたのせいだ」と言うようなことを言っていたけど、この台詞は早々に主人公自身の手による殺人で覆される。「環境」は間違いなく、その人に影響を与えている。

「変化は自然に起こらない」
初めは平和的にそんな「環境」に変化を起こそうとしていたものの、不快な「暴力」に頼って変革を起こしていくことになる。この流れは恐怖政治を彷彿とさせるので微妙だった。

73. The Silver Skates(2020)

8月19日。Netflix。Directed by Michael Lockshin.

ロシアの映画。ロシア語の巻き舌すっごい〜と思いながら聞いていた。

いつか世界史で聞いた、「ナロードニキ」を思い出した。映画の舞台は、彼らが活動していた時代からは少し後ではあるけど。人民の中へ。こうした階級差に焦点を当てた映画を見ると、「階級の壁」というのは私が思っているよりも厚いものだったんだなと思う。人種の差も然り。

正体というか、腹づもりがなかなか読めなかったけど、思想とともに死んでいった秘密結社(?)スリ集団のボス的な存在であるアレックスかっこ良かった。某アニメのセリフを借りなくても、「理想を抱いて溺死」しちゃったんだけど……。

「女性に高等教育を」という主張のある映画である一方、少しだけ深読みすると、「すべての人に教育を」という映画でもあるのかなと思う。前者については、アリッサが、後者については主人公マトヴェイと、そして映画に出てきた女性たちがそのメッセージ性を担わされている。

それにしても「無料」の医院が出てきたことには驚いた。マトヴェイも知らなかったっぽいけど……。その頃のロシアは、そんな政策でもやっていたのか……?

ロシアの冬の寒さとか想像できないけど、あたり一面凍っているという風景はどんな感じなんだろうなぁと物思いに耽る夜勤明けの映画鑑賞でした。サンクトペテルブルク。行きたいね。ビザ必要だけど。

74. Underground(1995)

9月1日。BSP(録画)。Directed by Emir Kusturica.

第二次世界大戦後(〜ユーゴ内戦)のベオグラードを舞台にした、ユーゴスラビアの変動をコミカルに仕立てた映画。チャップリン風のコメディに近いなと思った。チャップリンは『独裁者』しか見てないけど。。。

何の予備知識もなく見始めたので、第一章が、第二次世界大戦期のハンガリー、ベオグラードを描いたものであることは把握できたものの、第二章以降については、「あれ、そのあとここらへん(バルカン半島)ってどうなったんだっけ……」と迷子になった。なんとなく、ソ連が、共産党が、ティトーが……みたいなことは覚えていたけど。

75. マスカレード・ホテル(2019)

9月3日。Amazon prime。鈴木雅之監督。

同期にお勧めされたので見た。東野圭吾にハマっていた時に、原作を読んだやつ。音楽がマスカレードに引っ張られすぎな気がした。

76. Fight Club(1999)

9月4日。Amazon prime。Directed by David Fincher.

今読んでいる本で、登場人物の台詞が引用されていたので。

不眠症に悩むエドワード・ノートン扮する「僕」が、ブラット・ピット扮する石鹸売り(で、爆弾だって作れるぜと言う)タイラー・ダーデンと出会い、資本主義社会に反旗を翻し、「生きている実感」を求めて「ファイト・クラブ」を結成する。
「物」への執念なんてくだらない、と吐き捨てるタイラーの感じ方とかは、今見ても全然おもしろい。

随所に挿入される台詞が印象的だったので、メモしておく。

「俺たちは消費者だ。ライフスタイルの奴隷だ。」
「職場といえばガソリン・スタンドかレストラン、しがないサラリーマン。宣伝文句に煽られて、要りもしない車や服を買わされている。」
「歴史のはざまで生きる目標が何もない」

結末があのオチだったのは、悩みだとか葛藤を抱えながら生きていた主人公は、行動などに移す勇気(〇〇の会に顔を出すようになったのは、彼の行動だろうけど)もなく、ただ一人で対処して、一人で壊れていった結果なのだと思ったりもした。

次は『ゴーン・ガール』見よ。

77. Gone Girl(2014)

9月7日。Netflix。Directed by David Fincher.

前半は割とローペースに話が展開される一方で、後半はぽんぽんぽんぽん話が進む。適当にいえば起転転転結って感じ。

タイトルにおいてエイミーを示す名詞が「girl」なのは、少女から抜けきらない、エイミーの精神の幼さを匂わせているのかなとか思ったり。
goneも失踪の意味だけではないっぽい。頭おかしい、みたいな。B.A.パリスの『完璧な家』を思い出した。あれもだいぶ頭おかしい。頭おかしい人が「普通の人」の毛皮をかぶっている。まぁ何をもって頭がおかしいとするのかは不明ですけど……何か特異な事件を起こしたら「頭がおかしい人」として見られるんだろうよ……

序盤からなんとなく、ただの失踪では終わらないなと思ってはいたけど、そう来ますか、、でもここがミステリー映画たるゆえんなのかな。

ミステリーという非日常的な題材ではあるものの、今回起こった「事件」の原因は「結婚」「子供」に対する夫婦の考え方の違いだとか、普段の生活に根ざしている。

マスコミの悪意ある印象操作とか、それをそのまま受け止めた世論とか……
・内部の実情は当事者にしか分からず閉じられている…

78. The Girl with the Dragon Tattoo(2011)

9月7日。Netflix。Directed by David Fincher.

どっちが主人公級なのかちょっと分からんかった。
タイトル通りでいくと、リスベットかな。
続編『蜘蛛の巣を払う女』があるらしい。

ゴーン・ガールではメディア(テレビ)が資本主義垂れ流しの悪意あるもの、みたいなものとして描かれていたけど、こちらではメディア(週刊誌?)がある種の権力に、刃を突きつけて正当に制裁を受けさせるという描かれ方をされていた。

79.DRUK(2020)

9月8日。横浜ブルク13。Directed by Thomas Vinterberg.

邦題『アナザーラウンド』。原題はデンマーク語で「大量に飲酒した」って意味らしい。酒に飲まれる、ってとこかな。あらためてデンマークの位置を地図上で確認してみたんだけど、こりゃ北欧ですわ。私、スウェーデンともっと離れているかと思っていた。ギリシャとトルコみたいな感じじゃないですか、繋がっていないけど。

「不安に邪魔されるな」あるいは「不安に邪魔されたくない」というフレーズが印象に残っている。台詞だったか、挿入曲の歌詞だったかは覚えていないけど……。その不安を打ち消す方法として、「飲酒」を取り上げたのがこの映画なのかなぁ。でも、あまりにもお酒に頼りすぎてもダメですよ、って結構教訓的な感じのストーリー(親友の死とか、家族との別居とか)が展開される。人間は完全無欠じゃないんだなぁ。

教え子たちの卒業による喜びと、親友の死による悲しみの入り混じったラストのテンションは、なんだか強いお酒を飲んだみたいな感覚に陥った。映画のラストを飾るこの楽曲の軽快さがクセになる。


80. Ράφτης(2020)

9月8日。横浜ブルク13。Directed by SONIA LIZA KENTERMAN.

ギリシャ文字もギリシャ語も全然わからん。邦題は『テーラー 人生の仕立て屋』。英題はTailorなので「仕立て屋」ってことですね。「人生の仕立て屋」という副題のわりに、そこまで特定の誰かの人生を深掘りしているわけではなかった。そもそも誰の人生の仕立て屋なのか、という疑問も湧く。基本的には依頼人だろうけど、根底には自分(テーラーである主人公ニコス)の人生という意味も入ってくるのだろうか。そういえば、ニコスの「初めて父に仕立ててもらったスーツ」といった台詞もあった。それ以降は自分で仕立てていたのだろうか。

最初に路上販売をすることになった場所での客(?)二人の目配せが、なにか悪いことを企てているように見えたけど、単に「このスーツは自分たちに払える価格ではなさそうだ、撤収しよう」といった目配せだったのはちょっと拍子抜け。本作において「他人による」不幸というものはなかったので身構えずに見れる作品だと思う。むしろ自分の行為による不幸(?)はあったけど。人生は小さいことの積み重ねというモットーが根底に流れている感じの映画。良い方向にも悪い方向にも、何かが急に、劇的に変わるということはない。劇的に変わると感じるのは、そう感じる人が小さな変化に気づいてないだけなのかもしれない。

ドレスに夢中、ニコスとの仕事に夢中になっているオルガに対する夫の「働いて家族を捨てるのか?」という台詞は、いまだに社会は女性に対して抑圧的である、という現状の象徴だなと思った。なぜ女性が働くことが、家族を見捨てることになるねん。

最後、ごたごたでつまづいたニコスに、もう少し災難が降りかかるのかと思っていたら、SUZUKIのバイクで引いていた荷車が車に進化して前途洋々な感じで、ちょっと笑ってしまった。ニコスのメンタルは結構強かった。

ストーリーとは全然関係ないけど、オルガたち家族が話していた言語が気になった。映画の公式HPからはロシア語だと察せられ、「ギリシャ語(の宿題)はニコスに教えてもらう」というオルガの娘の台詞から、特に明らかにされているわけではないけど、彼女たちは移民家族だったのかなと思った。ギリシャはヨーロッパへの移民の玄関ともなっているし、別に移民だからと言ってどうということはないけど製作側に何らかの意図があったのか少し気になった。「ロシア ディアスポラ」と調べると、「ロシアは移民受け入れ国であると同時に移民送出国でもある」といった情報も出てくる(ムヒナ ヴァルヴァラ,ゴロウィナ クセーニヤ,2017「ロシア人ディアスポラの現状――在日ロシア人移住者の位置づけに向けて」移民政策学会『移民政策研究』Vol.9)。「ギリシャ語の授業」というと、これはギリシャ語を母語とする児童を念頭に置いた科目(つまり「国語」)なのか、それとも母語としない児童を念頭に置いた科目(つまり彼らにとってギリシャで暮らしていくための「外国語」)なのか、映画だけではわからんな。めちゃくちゃ細かいけどなんか気になるな。

81.OLD(2020)

9月8日。横浜ブルク13。Directed by M. Night Shyamalan.

久しぶりにユニバーサルの配給する映画を見た気がする。あの大きな地球。映画の配給会社を見るのもなんか楽しい。吠えるライオンのMGMとか。ライオン、作品によって違うよね。

映画の世界にするりと没入していた。「時間」をテーマに据えると、連想されるものとしてタイムトラベルだったり、時間の逆行だったりがあるわけど、「早送り」というのは新しかった(少なくとも私は初めて、かな)。正確には時間が早送りになっているわけではなくて、成長、人生経験、「人間時間」の早送り、ってところだと思う。

「あなたは未来を見ている」「君は過去ばかり見ているじゃないか」という、夫妻の言い争いはわりとキーワードで、最終的に同じ「」を見ることになった、クライマックスの焚き火のシーンに繋がるのだなと思う。


襲ってくるチャールズから身を守るために、視力の衰えたガイと聴力の衰えたプリスカが夫婦で力を合わせて、機転を利かせて二人で助かった。一人では生きられないということを証明するのは困難だけど、二人以上の方が強く生きられる、というのはあると思う。

死ぬところがそこそこグロい。スリラーだもんね。日が沈み、静寂漂う浜辺には、正気を保っている(あるいは保たされた)人が残っていた。この人たちの最期が割と穏やかだったことを踏まえると、現実と向き合う力のようなものが必要だと示唆されているのかもしれない。


そしてスリラーの舞台って暗闇になりがちだよね〜。今回も「夏!」「リゾート!」「ビーチ!」という明るい要素の詰め込まれた映画で、もちろん、明るい場面でも人は死んでいたが、「怖い」シーンは洞窟の中だったり、日没後だったりで暗い場面だった。逆に明るいところを舞台にする方が、残虐さとか増しちゃうのかな。もしかして闇でカバーしている……?

「人間時間の早送り」について、ビーチにいる人間は、肉体的のみならず精神的にも成長していると映画では描かれている。でも6歳だった男の子が急速に11歳になるとき、ビーチという閉鎖的な環境にいるのに、どうやって5年間分の語彙力だとか人生経験だとかを積んだんだよ、とは突っ込みたくなる。細胞が急速に成長するだけなら、多少頭はよくなるかもしれないが、外見が変わるのみでは……?と思ってしまう。そのあたりは少しファンタジー。

原案のグラフィックノベル『Sandcastle』も読みたい。あと最近、マドック役のトーマシン・マッケンジーをよく見かける気がするので彼女の他の出演作も追いたい。

めちゃくちゃおもしろかったです。見に行ってよかった。

82. Panic Room(2002)

9月10日。Netflix。Directed by David Fincher.

子役時代のクリステン・ステュアートに気づいた時の衝撃が、映画の印象を覆ってしまった。というのは置いておき、監督繋がりで「あ、これも見よう〜」ということで鑑賞。商業映画だし、ラストは何となくわかるものの、道中の緊迫感は抜群の映画だった。

「絶対に中からしか開かない」パニックルームを開けるための、心理戦・物理的な攻防が見どころ。なんだか心もそんな感じがするね。

押し入った3人組は、技術的には目的達成できそうなメンツだったけれど、足並み揃わず、チームワークは最悪でしたよね。他の相続人を出し抜くために元自分の家に入り込んで隠された遺産を強奪することを企画した相続人、子供思い・人は殺したくない・でもお金が必要な防犯設備製作会社の社員、なんか腕は立つらしい・お金がもらえるからひょいとやってきた殺し屋。泥棒に仲間割れはつきものな気がするけど、本作は押し入られた家族(母・娘、あとから父親)との対比の意味でも、「チームワーク」だとか「協調性」だとかがキーワードだったのだと思う。自己主張激しすぎたんだな。

製作側にそんな意図はないかもしれないけど、持病のある娘サラに注射を打ってくれて、殺し屋にとどめをさしてくれた賊が黒人であったというのは、製作当時のアメリカ社会へのメッセージだったりしたんかな。

別の映画でも「Mayflower」と書かれた大きめのトラックが走っていたのを見て、「これってもしかして「メイフラワー号」から社名を取ったアメリカの引っ越し会社なのかな」とかどうでもいいことに気がついた。ビンゴ。

83. Casino Royal(2006)

9月10日。Amazon Prime。Directed by Martin Campbell.

007シリーズ視聴第一弾。見放題期間が終わるまでに全24作品見れんのかな。ダニエル・クレイヴがジェームズ・ボンド役の作品。オープニングの楽曲からもうスパイ映画ですね、って感じ。ほかのスパイ映画だとわりと、「完全無欠の諜報員」が綿密な計画とチームワークとあと少しの運とを手に、「めちゃくちゃ困難な任務」を果たしてくる、という筋書きが多いけど、007シリーズはそうでもないのかな、というのが第一印象。なんでかって、このジェームズ・ボンド、そこそこ単純な罠に引っかかったり、それ飲まないでしょっていう毒を自ら飲んじゃったりと、結構抜けている。それが魅力であるのかもしれない。

カジノと聞くと、無条件にラズベガスの喧騒を連想してしまうけど、「紳士」が付き物なスパイが活動する舞台はそんな賑やかなところではなく、こじんまりとした優雅なカジノでした。この映画見てるだけでポーカーのルール覚えてしまいそうだよね、ってくらいボンドと悪役の駆け引きのシーンに尺を割いていた。その一方で、事象が発生してからの任地への赴任、といったようなシーンはめちゃくちゃ早送りだったので、時間をかけて展開される場面がこの映画の見所、というのがわかりやすい。

マッツ・ミケルセンが割と簡単に死んでしまったのは残念…。

84. Quantum of Solace(2008)

9月11日。Amazon Prime。Directed by Marc Forster.

慰めの報酬。quantumは量子という意味もあるのね。耳でタイトルを慰めの「応酬」と覚えていた作品だけど、全然違いましたね。

「復讐」がサブタイトル的なストーリーでしたが、結局復讐をしても死人は喜ばない(喜ぶの否定ではなくて、そもそも喜べないし、喜んだとしても分からない)という感じのことをボンドが言って作品を締めくくっている。

「地獄は自分の中に」
この台詞も印象に残った。NHKの朝ドラ(おかえりモネ)で「傷ついた経験がある人って〜〜」みたいなことを神野さんが言っていたけど、そういう経験≒地獄を表に出さずに、自分の中に持って生きている人もいるのだから、決して羨ましがることではないんだなと思う。

85. Skyfall(2012)

9月11日。Amazon Prime。Directed by Sam Mendes.

ダニエル・ボンド作品では一番好きかも知れない。
軍艦島出てきた時は、「島内はこんな風になっているんだ〜」とまじまじ見てしまった。

86. Spectre(2015)

9月11日。Amazon Prime。Directed by Sam Mendes.

人物関係よく分からなくなってきた。これまでの作品にしてはエンドロール長い気がした(すっ飛ばした)。

ダニエル・ボンドの007シリーズをここまで見たわけだけど、個人的にはミッション・インポッシブルの方が好きだな〜と思う。ジェームズ・ボンド派かイーサン・ハント派かで分かれるよね、きっと。あとMIシリーズの方が、テーマがわかりやすいのかも知れん。もっと言えば、ジェームズ・ボンドは(スパイとしての力量的に)抜けすぎなんじゃないかな……と思うわけです。「ボンドガール」が好きになれない。ワンナイトラブしすぎ。というか最初の方でボンドは「感情に乏しい」みたいな設定ありませんでした?まぁそこが受ける層を狙っているんでしょうけど……。

87. The Silence of the Lambs(1991)

9月15日。BSP(録画)。Directed by Jonathan Demme.

『羊たちの沈黙』。もう少しグロいのかと思っていたけど、そうでもなかった。まぁ映像的にはグロくないというだけで、想像すればグロい。人を食べる精神科医殺人犯とFBI訓練生の映画な訳ですから。頭の中で泣いている羊たちの静けさの中に、クラリスの安眠はあるのだろうな〜。

88. Hannibal(2001)

9月16日。Netflix。Directed by Ridley Scott.

『ハンニバル』。『羊たちの沈黙』の続編。こっちの方が映像的には猟奇的。最後の最後にあのシーンを突っ込んでくるんだからな……。

レクター博士、分からなすぎる……。クラリスへの執念の強さが、自分の肉は食べないものの、片手を失うという結末になったよね。

89. Wonder Woman 1984(2020)

9月18日。Netflix。Directed by 

DCのヒーローをバットマンとワンダーウーマンしか知らないけど、日常を陰で支えるヒーローが多いのかな。マーベルのヒーローはもうめちゃくちゃ非日常のヒーロー感が強いので……。

ワンダーウーマンがぶっちぎりで強くて、全部一人で解決!というよりも、パワーとしては足りなくても、平凡な人間一人一人ができることをした上で、ワンダーウーマンが一押しだけするという、あくまで補佐的な役割にとどまっている気がする。
人間の心の中にいるヒーロー的な意識を顕在化したのが、ワンダーウーマンなのだろうか。

シリーズ一作目を観ていないのに二作目を見てしまった自分の頬をつねるとして、1984年という設定がおもしろかった、というか衣装だとかの雰囲気が好きだった。

90. Eye in the Sky(2015)

9月28日。U-NEXT。Directed by Gavin Hood.

1人を救うか、5人を救うか。あるいは、1人を殺すか5人を殺すか。こんな場面は、トロッコがドローンとなって、現代にも存在している。

ソマリアに拠点を置く過激派組織のアル・シャハブと繋がりを持つ(所属する?)英国人テロリストが、ケニアのナイロビに現れ、英国及び米軍の司令部は、これを捕獲あるいはミサイルヘルファイア(地獄の業火)により殺害せんとする作戦を敷いた。

1人か5人か。決断を他人送りにするコブラ(英国内閣府の会議?)のメンバーと、急遽実行することとなり、ミサイル攻撃による民間人の巻き添えを背負う現場の人間の間には、かなりの隔たりがあった。そして、巻き添えとなってしまったナイロビの少女とその家族にも。まじで関係ないのにね。

スネイプ先生(故アラン・リックマン)が、またも冷酷な(そして温かい顔を持つ)ベンソン中将を演じる。E作戦の終わりには、ただの子煩悩の父親に戻る。一般人が平和のために誰かを殺して、そして殺されている。

91. The Guilty(2021)

10月7日。Netflix。Directed by Antoine Fuqua.

2018年のデンマーク映画 The Guilty(Den skyldige)のリメイクらしい。3年でリメイクとは、オリジナルの評価高すぎでは。オリジナルみよう、多分Amazon primeで見れる(気がする)。

音・音声

92. Okja(2017)

10月10日。Netflix。ポン・ジュノ監督。

「翻訳は尊い」
ここでもジェイク・ギレンホールだった。

93. The Cell(2000)

10月12日。Netflix。Directed by Tarsem Singh.

思っていたよりもグロカッタ……。

冒頭で「あ、これはターセム監督の作品だ」と感じられるのすごいな。まぁ『落下の王国』しか見たことないんですけど。というかその作品の円盤が欲しい……。優しい物語だと思っている。

94. 八月の狂詩曲(1991)

10月13日。Netflix。黒澤明監督。

世界から記念碑が寄贈されているのは知らなかった。映画撮影時点でアメリカからのものはなかったけれど、そのあとセントポールから寄贈されたらしい。

縦男が演奏する楽曲が、シューベルトの「野ばら」とは知らなかった。戦争を体験した世代(=おばあちゃん)、ついついお金に目が眩んでしまう労働世代(大人)、素直な子供、と明確に分けられていることに加えて、大学生の縦男には「知識かぶれ」みたいな役割が充てられていたり、登場人物のキャラが分かりやすく立てられている。

どうして忘れるんだろうか。最後の嵐がとても印象的な映画。『羅生門』もだけど、ほんと雨が印象に良く残る。

95. Rebel in the Rye(2017)

10月13日。Amazon prime。Directed by Danny Strong.

『ライ麦畑の反逆児 ひとりぼっちのサリンジャー』

バナナフィッシュは一語。題材が作家の話だからか、「言葉」をしっかり捉える脚本が印象的だった。「戦争」とかね。

「声」だとか「物語」だとか、自分はそういう勉強をしてこなかったから曖昧にピントのずれたイメージしかないので、「書くこと」や「物語」について学問的に勉強したいなと思った。

「反逆児」と「ひとりぼっち」という相反しそうなイメージを持つ単語が邦題には盛り込まれているけども、映画が映し出すサリンジャーの人生には、どちらの要素も溶け出して、不思議となじんでいる気がする。

好きな映画だな。

余談だけど、サリンジャーのPTSDについて、(おそらく)軍医が、「帰還兵には良くあることだ」とまともに対処せず、彼が自分でどうにかするしかなかった状況も「ひとりぼっち」という孤独を浮かび上がらせている気がした。

96. Catch Me If You Can(2002)

10月16日。Netflix。Directed by Steven Spielberg.

聖書を重し代わりにするフランクやばいな、という感想しか残ってない。実話に基づくストーリーなのもやばいな。主人公のフランクはどんな詐欺もするけど、パイロットと偽りつつも実際の操縦をしなかったり、医者と偽ることをすぐに辞めたり、命の大切さだけは分かっていた様子はおもしろい。「サイコ」ではなかった。

この映画でのフランクは、誰かに捕まえていて(関心を、愛情を持っていて)欲しかった一人の少年という描き方かな〜もろタイトル。
だからか、犯罪の痕跡を一つも残さない人物ではなく、むしろ尻尾を至る所に見せている感じ。

そんなにピンと来る映画ではなかった。トム・ハンクスとレオナルド・ディカプリオという、キャストで見た。

97. The Aviator(2004年)

10月18日。Netflix。Directed by Martin Scorsese.

Netflixでの配信が10月末で終わるとのことだったので鑑賞。あとホームに何度も出てくる(謎にマッチ度93%)。

レオナルド・ディカプリオの演技力は本物だなと思う。どんな役でも違和感なくこなしてしまうのすごすぎる。監督とのタッグもいいのかもしれない。ところで、マーティン・スコセッシ監督は伝記物がお好き?

『アビエイター』は、実在の実業家(・映画制作者・飛行家?)ハワード・ヒューズの半生を描いた映画。彼自身の操縦によって不時着を起こして大怪我を負っても、彼の飛行機への情熱は止まることを知らない。

スコセッシ作品の割に見やすかった。難解な印象を持ったマフィアの半生を描いた映画『アイリッシュマン』と比べて、題材が映画や飛行機、セレブ生活、心身の疲弊と、一般人にも身近だからかな〜。

終盤、ハワードが潔癖症に陥ったり、強迫観念に囚われたりしていたのは、飛行機(とそれに関連する事業?)への情熱がハワードに取り憑いたようで、おもしろく……はないけどリアルだなぁと思った。

98. Dune: Part One(2021)

10月19日。横浜ブルク13。Directed by Denis Villeneuve.

知っていることはティモシー・シャラメが主演であることと、SFであることくらいという、ほぼ事前情報を得ずに見たので、タイトルに「Part One」と付されていたことで初めて、続編があることを知った。なので当然原作は読んでいない。贅沢にIMAXで見たのだけど、続編もIMAXで見ることを決意。これはスクリーンの大きな映画館で見ると、より、世界観に浸れて楽しめる作品。

端的に言えば、乾燥したSF。第一印象は「砂」。タイトルが「砂丘」という意味なので、そうなるのも当然という感じもする。描かれる世界がとても詩的。パンフレットでも言及されていたけども、原作小説が詩情あふれる作品らしい。そしてとにかく(宇宙SFなので主に宇宙船とかの移動設備の)スケールがでかい。実際に砂漠で撮影もしたようだし、大変だったろうな……

え、めっちゃ好き。始まった瞬間、パンフレット買おうと思ったし、買った。円盤出たら即買う。

主人公ポールが夢で見る未来を織り交ぜながら、ストーリーが展開する構成。映画『メッセージ』みたいだなと思っていたら、どうやら同じ監督じゃないか!もうものすごい納得!てか『ブレードランナー2049』の監督でもあるのね!とっても納得!

主人公の未知の世界への旅(移住)に観客もついていくという展開なので、置いてきぼり感がない。説明が多すぎず少なすぎず映画の世界に浸るにはちょうどよかった。

「父」「母」「息子」に固定化されることの多い役割が強く出てこないところもいいなと思う。多くの作品では父親は息子を抑圧するものとして描かれ、息子はそれに反発するものとして描かれる。そして母親は父親を宥めて息子を慰める。Duneはそんな感じではなくて、それぞれが個人として独立、お互いに尊重している気がした。特に、香料採取の際の砂虫に遭遇してポールが失態をしたあとの「叱り」にそれが感じられる、と思うのだけど(なお、主人公ポールの両親は「結婚」はしていない)。叱ってはいるけども、あくまでそれは失敗をした個人に対して反省を促す程度に収まっている。

宇宙に進出しても「帝国」や「皇帝」、「血統」などの制度を残しているのは正直、人間ってどうしようもないな、と思った。「次の抑圧者が来るだけ」という先住民的な存在の諦めの台詞は印象的だった。
いつまでたっても、「搾取するもの」は存在し続ける。

「これからがはじまり」という台詞で終わるのはとても印象的。次に続けるのに、綺麗な終わり方だなと感じた。

女性だけの組織を登場させて、女には女の野望がある、的な描き方はおもしろいなと思った。ただそれを継ぐ?(予定)のが男性であるポールなので、「女」とまとめるべきかどうかは分からない。

真新しいSFというわけではないけど、物理的障壁となる「シールド」や、精神的に相手を屈服させ、こちらに従わせる「声」の存在は興味深い。

それは「恐れ(幻覚)」であり、現実には存在しない、ということを示すシーンが多々出てきた。劇中で恐れを乗り越えていくポールに、「精神を超えるもの」というフレーズをつけたくなる。いや、脳内をよぎっただけなので考察とかはしてないんですが…。ほんと、SFなのにすごく幻想的な作品。この二つの要素は両立する。

Part Oneを見て引っかかったまま残っているのは、ポールが「本物じゃない(かもしれない)」という台詞。どんな存在が、本物なんだろうか。

───
IMAX、冒頭のプロモで「針の落ちる音からー」というの、実際IMAXで撮るような映画は針の落ちる音よりもジェットエンジンの轟音の方が多い。

11月に公開される『エターナルズ』もIMAXで観たいな。プロモーションの冒頭がもろノマドランドで、ノマドランドが始まるのかと思った。そしてロブ・スタークが登場するじゃん〜〜楽しみ〜〜!

99. No Time to Die(2021)

10月19日。横浜ブルク13。Directed by Cary Joji Fukunaga.

007シリーズ26作目、ダニエル・グレイヴのボンド引退作。これもまたIMAXで鑑賞。

生物兵器をめぐる攻防でした。これだけシリーズ続いているとネタ切れそう。

歴代ヴィランの関係がこんがらがって、人物関係がわけわからん状態に陥ってしまった。ダニエル・ボンドのシリーズのなかでは、ボンドの相手役の女性を一人しっかりと登場させていたので、女の人でも見やすい気がする……。カップルで見にきている人もいたし。
前々作のSkyfall、ストーリーはめちゃくちゃ要素が詰め込まれてはいたけど、イントロはすごくよかったんだな〜

予告編でも度々宣伝されていたけど、最初の橋を飛び降りるシーンが好きかな〜。むしろクライマックスあたりでそのシーンが入るのかと思っていたら、全然冒頭でした。

time」がキーワードの本作。
でも最近流行りの相対性理論的な「time」じゃなくて、人の間を(物理的に?)流れるtimeって感じ?
Mの、ボンド追悼の「人生とは、存在するのではなく生きることだ」といった旨のメッセージにもそれが反映されているように思う。

ヴィラン側の科学者「(この生物兵器で)君の人種を滅ぼすこともできる」に対して放つ英国諜報員の「死ぬ時だ」という台詞は、明らかに時流を反映している。

最後絶対死んでるのにどうやったらJames Bondが戻ってくるのか……「007は戻ってくる」なら分からんでもないけど……

二作目の鑑賞だったこともあるけど、映画自体も長すぎて集中途切れ途切れだったわ……やっぱり私はイーサン・ホーク派。ミッション・インポッシブル、はよ新作公開しとくれ〜〜。トップガン/マーヴェリックも待っとるで。

100. Sicario(2015)

10月22日。Netflix。Directed by Denis Villeneuve.

邦題は『ボーダーライン』。原題はメキシコにおいて「暗殺者」を意味するみたいだ。こちらの方が、麻薬戦争における闇を象徴的に示している気がする。というか、この映画の舞台となったメキシコ、フアレス市で起こった麻薬カルテルの抗争は2000年代と、割と最近なことに驚き。今でも完全に治安が回復しているわけではなさそう。

Wikiの情報に頼りっぱなしだけど、メキシコ政府と麻薬カルテルの間では2021年現在も麻薬戦争(武力紛争)が継続中みたいだ。元警官・現職警官で構成されるカルテルもあるらしく、超平和な日本に住む私の頭は「?」でいっぱいです。

自称・ペンタゴンの顧問マットの相棒であるアレハンドロが実は暗殺者(そしてメキシコの元検事)で、米国CIAが主導して、彼を送り込み、麻薬カルテルの「秩序」の維持を目的とした作戦だったと最後に明かされる(アレハンドロは個人的の個人的な復讐も兼ねている)。邦題の『ボーダーライン』は、国と国との境目の意味のほかにも、法と無法の境目、という意味も本作では付与されている。

空からアメリカ・メキシコ間の国境を映し出したり、抗争の舞台となる街を引きで撮ったり、Eye in the Skyのように「俯瞰」の印象が強い映画だった。

101. Life(2017)

10月30日。Netflix。Directed by Daniel Espinosa.

またもやジェイク・ギレンホール。というよりもレベッカ・ファーガソン。

好奇心旺盛でいて、外からの刺激に対して生存本能が強く反応する「Life」は、火星の生命体のことを指してはいるけども、同時に人間のことも指しているんだろうなと思う。

火星の生命体、設定が強すぎるだろ〜とは思いつつも、人間を中心に据えないラストは、監督のメッセージなのかな。

捕食するシーンは結構グロかったけど、そのリアルさが妙に印象に残った。

102. Eternals(2021)

11月9日。109シネマズ湘南。Directed by Chloé Zhao.

11月になってから初視聴の映画だ。今日は辻堂まで足を伸ばして旬な作品を。もちろんIMAXで観ました。横浜ブルク13よりもスクリーンが大きい気がしたね。「IMAX」に「レーザー」が加わっていたけど、これは普通のIMAXとは違うのだろうか(よく調べずに見る人)。

メガホンを取ったのがクロエ・ジャオ監督だと知っていた色眼鏡も入ってしまう感想になるけど、マーベルにしてはとてもドライな感触が残る作品だった。

ネタバレ気味になってしまうけど、ふんわりと言及すれば、「エターナルズが人間らしくない」ってことが影響しているのだと思う。多分映画を見る人は、登場人物に自分と似ているところを見つけ出すからこそ感情を移入させやすくて、そして感情を揺さぶられることが多いのだと思う。まぁなにが「人間らしさか」と言われると、やっぱり「感情?」という機械的な答えしか出せないんですが。「機械」という単語が出てくるのも、映画を見てもらえれば感じると思うけど、飛んだ筋違いではないかもしれない。人間を別の立場から俯瞰するような映画なのかな。ちょっとドキュメンタリーチックな感じもする。

登場人物の彼らも言っていた。「私たちはヒーローではなかった」と。同時に明確な「悪(ヴィラン)」も登場しない。善悪というのは、立場によって全く変わる曖昧なものだと示唆する作品かな。

ギリシャ神話やメソポタミア神話をモチーフにする登場人物が多かった。そこは神話好きの心をくすぐる。「イカリスの翼を折ってみたかった」というファストスの台詞は、どこかで誰かが言うだろうなと思ったよ(好き)!イカリスとファストスはめちゃくちゃ分かりやすいよね。セナは誰かな〜と思ったけど、「A」を付けて女神アテナでしたね。メソポタミア神話はあまり詳しくないけど、ギリシャ神話についていえば、神々は人間を超える存在でありつつも人間味溢れる存在として描かれているものの、それを引いた本作は真反対であるように感じた。

マーベル、かどうかは分からないけど、歴史(一応の事実)をフィクションの世界、作品の世界に取り込む方法がうまいなとは思った。これはメソポタミア最大の都市バビロンのことだったり、広島の原爆のことだったりを念頭に置いている。知識がないと「そうだったんだ!」とか思う人が出そうな部分は怖いけど。まぁ流石に分かるよね…?

エターナルズは帰ってくるらしいので、続きを楽しみにしたい。キット・ハリントンも重要そうな役で出てきそうだし!あとホークアイの映画も見たい。あまり関係ないけど、クリスマスまでに帰れるか、というPRのフレーズで第一次世界大戦を思い出した。

103. Hitman's Bodyguard(2017)

11月10日。Netflix。Directed by Patrick Hughes.

めちゃくちゃ笑える。アクションコメディ。まぁ人はバタバタ銃弾に倒れるんだけど。そして権力はクソ。ゲイリー・オールドマンは悪役がハマり役なのかな。サミュエル・L・ジャクソンも美味しい役を演じることが多いよね。

「悪人を殺す俺と、(そんな)悪人を守るあんた、どっちが悪いんだろうな」という台詞はなかなか核心をついている。

104. Baby Driver(2017)

11月10日。Netflix。Directed by Edgar Wright.

主人公のBaby(役の本名はマイルズ)、耳鳴りを消すために音楽を聴いているんだけども、図らずも私も同じ方法を取ることになった(最近耳鳴りに悩まされている)。劇中で使用されている音楽がおしゃれだね。

最後、Babyが刑務所から出てくる場面で段々とスクリーンが色付いていく演出が素敵だった。

メインが「逃し屋」なので展開にスピード感がしっかりありつつ、Babyの物語もしっかり書き込んでいくおしゃれな映画、という感じ。私はこの曲の旋律が好きだな

105. Red Notice(2021)

11月17日。Netflix。Directed by Rawson Marshall Thurber.

タイトル、インターポールの「国際手配」という意味になるんだね〜。結末を踏まえるとポスターについて、「そのままかい!」って突っ込みたくなる。

これぞエンタメ映画。そして登場人物が過去に演じてきた映画のシーンを彷彿とさせる場面も多くて、サービス精神旺盛だなって感じ。終始笑ってた。

私はみてないけど、最後のアルゼンチンを探検するところなんてドウェイン・ジョンソンはもろ『ジャングル・クルーズ』なのでは?という感じだった。ガル・ガドットの『ワンダーウーマン』を思い起こさせるアクションシーンは見どころ。なにより深紅のドレスがめちゃくちゃ綺麗。

106. 6 Underground(2019)

11月17日。Netflix。Directed by Michael Bay.

倫理観ぶっ飛んでしまう系の映画。『キングスマン』も似たような性質があるけど、本作の方が人が死ぬ。塵も積もれば山となるというけど、まじで山ができる。でも最後には「より良い世界」とか「人間は死んで初めて自由になる」とか、考えさせられる方向にまとめてくる。

ライアン・レイノルズこういう役所が多いのかな。結構好きな俳優さんだな。

こちらも他の映画を所々突っ込んでくる。リーダー「ワン」と他のメンバー(主に「フォー」)との「ジェネレーションギャップ」という文脈で。

107. Les traducteurs(2019)

11月29日。Netflix。Directed by Régis Roinsard.

フランス・ベルギーの映画。邦題は『9人の翻訳家 囚われたベストセラー』。

めちゃくちゃおもしろい。と言うよりも、奥行きのある映画かな?一つ一つの台詞が、視聴者に刺さるように意識されている気がする。例えば、利益に支配された出版社側の人間(恐らく社長)の、「発行部数が少ない言語(の翻訳者)から殺そうか」とか。

前半、もしかしてこの映画は人が死なないスリラーなのか…?と思っていたら、後半それを見事に裏切ってくれた。真犯人にアドバンテージあげすぎだろ、とも思うけど、まぁフィクションなので……でも上げすぎなところまで含めて、制作のメッセージなのかもしれない。

芸術たる文学と、言語と、資本主義と、救いがキーワードなのかな。

最初と最後の、本が燃えていくシーンは『華氏451度』の世界を彷彿とさせる(ちゃんと読んでないんだけど)。資本主義も共産主義も、なんというか「解放された自由」みたいなものをもたらすことはできないのかな、と思ってしまう。

「翻訳家はAIじゃない」という台詞も、強く印象に残った。言葉は生きている。

108. Venom: Let There Be Carnage(2021)

12月6日。横浜ブルク13。Directed by Andy Serkis.

あまりおもしろくなかったという印象が、鑑賞直後の感想。場面場面で笑えるシーンはあるんだけども、なんというか全体で見たら物足りなかった(わがまま)。エンタメだからかな。というか(声を出さずに)笑ってたら後ろから座席を蹴られたんですが。許せん。故意ではないだろうけど、2回もやられたからな。一瞬で笑って幸せな気分が覚めたわ。

主人公エディが「記者」である理由は、「偏った記事だ」という連続殺人鬼クレタスの指摘の部分で詰め込まれているように思う。メディアも結局、誰かの意見に過ぎない。

自分と他者の「共生」もキーワードだった。というか、ヴェノムが人に寄生して生きる存在である以上、エディとヴェノムの選択肢は共生しかない。クレタス、カーネイジ組は、お互いの考えを受け入れず仲違い(?)していたからこそ負けた、という描き方。なんだかんだで「人を食べない」というシンビオートにはなかなか辛いルールをヴェノムは守ることで、エディを尊重している。日本でもアメリカでも世界でもどこでも、「自分と異なる存在との共生」が重要であると伝えている。映画ではヴェノムが、「仮想パーティ」という場を借りつつも大勢の人間の前で自らの容姿を「カミングアウト」していたけど、自分らしく生きることと、誰かとの共生は矛盾しない。

これはスパイダーマンの最新作を見ないとな!、となる締めくくりだった。

109. Wrath of Man(2021)

12月8日。Amazon prime。Directed by Guy Ritchie.

邦題は『キャッシュトラック』。邦題よ……たしかに現金輸送車がメインで出てくるけども、そっちに意識が持っていかれすぎるタイトルだよ。

フランスの映画『ブルー・レクイエム』を原作としているらしい。鎮魂歌。こちらの情報を得た後の方が、「たしかにそういう映画だよね」という納得感がある。アクションはサイドメニューで、メインディッシュは「怒り」だったり「復讐」だよね。ジェイソン・ステイサムがいい味を出していた。渋い。

全然関係ないけど、実写版『アラジン』の監督はガイ・リッチーだったのね!ちょっと毛色の違う映画なので驚き!多彩な監督だ〜。というかエドワード1世の末裔らしい。驚き…!『コードネームU.N.C.L.E.』も早いうちに見ておこう!

110. Last Night in Soho (2021)

12月15日。横浜ブルク13。Directed by Edgar Wright.

鑑賞後の顔や腕の筋肉がこわばる感じが、今まで見てきた映画の中で一番な気がする。最後まぁまぁハッピーエンドだけど、ラストシーンまでの「怖い」刺激(印象)が鑑賞後の余韻を支配している。身を守るための本能的なセンサーがびりびり作動している感じ。
無意識のうちに腕とかめちゃくちゃ力を入れていたというか、そのことに無意識の中でも意識的に気がついていたという不思議な感覚。

サイコホラー(?)映画。超常現象というわけじゃないけど、怖い。「人間の怖さ」というジャンルだろうか。普通の人間に隠れるサイコ性、みたいな一種の狂気?

初対面のジョン(入寮時の階段で助けを提案していたシーン)や元警官のリンジーに対する主人公エロイーズの「先入観」がわりと大きめに扱われている。
(第六感が働いて)「見える」エロイーズを追いかけるのっぺらぼうの男たちは「助けて」と言っていただけだったけど、見かけの怖さに押し流されて、声を聞くことができなかった彼女。

「先入観」は身を守るために必要なこともあるけど、事実にたどり着かないこともある。さらには、リンジーの事故死のように、新たな被害が生まれることもある。加えて、のっぺらぼうの男たちの幻影の下にいた元ルームメイトをエロイーズが刺しそうになったシーン。これはやばかったね。

エロイーズが犯人だと思い込んでいたものの、実際にはリンジーは行方不明になった男たちと関連していた(というか犯人であった)アレクサンドラを探していた警官であった。

アレクサンドラが貸し出していた部屋は、なるほど、「女性限定」な物件なわけですね。

ソーホーの街は新しく上書きされてはいるけども、そこには過去の声も人間も確実に根付いている(残っている)という、不思議な雰囲気が詰め込まれた映画。好きだな。

音楽やファッションとかの文化のトータルコーディネートのうまさ?シナリオへの肉付けの仕方がうまいと、映画監督は成功するのかなとか思った。推し監督の一人にエドガー・ライトが連なった。

111. Ophelia(2018)

12月20日。Amazon prime。Directed by Claire McCarthy.

シェイクスピアの有名すぎる『ハムレット』を、オフィーリアの視点から描いた映画。いつか見た映画『ハムレット』よりも「悲劇」感が出ていた。音楽とか背景の写し方の影響かな。ストーリーはほぼほぼ原作に忠実。

オフィーリア視点ということで、ハムレットの台詞「生きるか死ぬか、それが問題だ」は出てこないけども、これはオフィーリアの物語なのだから当然だ。

112. Spider-Man(2002)

12月30日。Amazon prime。Directed by Sam Raimi.

年明けにスパイダーマンの最新作が公開されるので、それまでにシリーズ全部見ておこう会を一人で開催。
私の中でスパイダーマンといえば、トビー・マグワイアのスパイダーマンかなぁ。なんだか「平凡」「隣人」という単語がよく似合う気がする。

113. Spider-Man 2(2004)

12月30日。Amazon prime。Directed by Sam Raimi.

初期スパイダーマンに出てくるヴィランは、野望を持つ人が「心(あるいは脳)を乗っ取られちゃいました」ケースを中心としているのかな。まだ3を見ていないから何とも言えないけど……。

「誰でも心の中にヒーローを持っている」(メイおばさん談)ように、ヴィランもまた、心の奥底に潜んでいるという対比なのかもしれん。

それにしてもJ.K.シモンズの豪快(適当?)な役が面白すぎるな。

年内にサム・ライミ版のスパイダーマンを見てしまいたかったけど、時間的に無理だった…正月に見るか〜。というわけで2021年に見た映画は112本!(ちゃんと見ていないからカウントしてないだけの作品も入れたら120くらいかな〜)振り返ってみるとなかなか充実した映画ライフですね。来年もたくさん映画見よ!映画館にもたくさん行こう!とりあえず年明けたら『Kingsman』と『スパイダーマン』は確実に行くぞ〜!

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