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街も人もそこで生きている。【筑豊、山陰】

古い列車にはその土地を長く走ったという証が刻まれていた。
列車だってその土地の人と生きているのである。

ローカル線、ゆっくりと走る列車からはその土地の文化が見える。

福岡の内陸部、筑豊地方はかつて栄えた筑豊炭田の名残だろうか、そんな雰囲気があった。とある駅は両側をセメント工場で挟まれている。何もない土地がただ広がっている場所もあった。

博多から直方までの快速列車は新型の綺麗な列車だったが、乗り換えて筑豊本線に入るとそんなことはない。1両編成の古いディーゼル車。地元を走っているあれ。島鉄のあれ。

列車にはほとんど人はいない。スーツケースを引いた若いカップルがいて珍しいなと思っていたが、どちらかのご実家があるのだろう、他に誰も降りない駅で2人仲良く降りて行った。

溢れる幸せ、美しい。

乗り換えの駅では30分ほど列車を待ったが、恐ろしいほどに何も起こらなかった。ただ、ここにも人の生活があることだけは確かだった。筑豊と書かれた車のナンバープレート、スーパーでしめ縄を買うおばあさま、駅前の横断幕。ここで生きていくと決めた人たち、ここで一生を終えようとしている人たち、これからその選択を迫られる人たち。

マンションの駐車場に初心者マークのついた車が何台かいたのがとても印象的だった。

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日本海に抜けると赤い瓦屋根がちらほら。進むほどにその数は増えていく。調べてみると近くにそういう瓦を作る土地があるらしく、その影響だという。雪に強く、産地の島根県だけでなく、広島県の北部でも見られるらしい。夜にはその産地だという街を通った。

倉敷でも特徴的な家の造りを見たことを思い出す。あれは確か瀬戸内海側の気候に合った白壁の話だったかな。美観地区はとても綺麗な街だったと記憶している。ただ人がものすごく多くてちょっとストレスだった。

家の造りにはその土地の気候や生き方がよく表れていて面白い。北海道の家が暖かいというのも面白い話だ。

こういうのは実際にその土地に行って、本物を見て初めて気づくもの。旅の醍醐味だなって。

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途中、長門という街に降り立った。乗り換えの間、わずか20分ほどしか滞在しなかったが、また来てみたい街、今回通過するだけだった萩と合わせて来るのもよさそうだ。この辺りの街はまた来ることになるだろう。また1つやっておきたいことができた。

荒れ狂うイメージが強い日本海だが、今日は妙に凪いでいた。雨の予報だし、雪になって風が吹けば列車が止まるのではないかと心配もしたが、そんな必要はなく。無事本日の最終目的地、米子行きの快速列車も軽快に進む。

ひとまず今日も無事終われそうだ。連日の移動は腰にくるな。

明日は往路最終日。
またどこかで。

にゃーん。