誰よりも前に出ることの大切さ
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誰よりも前に出ることの大切さ

鈴木亜美

海外で仕事をするようになってから、それまで以上に外国人モデルと接する機会が増えました。というか、日本から出たら私が外国人なわけで…自国で培ってきた自分の中の当たり前の考え方が通用しなくなり、戸惑ったり悩んだり、落ち込んだりすることも多くありました。
その中でも今回は、他のモデルの立ち居振る舞いを見て、自分自身に足りないものを痛感させられたときのお話です。

◆ビデオキャスティング

その撮影では、会場でのオーディション以前に、ビデオキャスティングと呼ばれる一次審査がありました。マネージャー経由で撮影のシチュエーションが伝えられ、それに対する演技を自分で動画に撮って送るというもの。

このときの演技の内容は、「スタジアムでフットボールの試合を応援している際の、自分の応援しているチームがゴールを決めて喜んでいるときの様子と、相手に点を入れられてガッカリしているときの様子」の2パターンでした。

本番に動画の撮影はなかったのですが、単なるポージングではなく、本当に応援しているときのような熱気や勢いのある絵を撮りたいとのことで、実際に動いている様子をフォトグラファーが写真に収めるという形で撮影しました。
その理由から、事前のオーディションも写真ではなく動画。セリフはないにしろ、「演技」という普段の私の仕事にはないものだったため、ビデオキャスティングの詳細を見たときにはドキッとしたのを覚えています。

当時の私はNYのブルックリンで家を借りており、貸してくださった大家さんと一緒に住んでいました。マネージャーからのメールにはASAP(as soon as possible)と書かれていたので、友達にビデオ撮影を頼む時間もなく(頼めても友達に見られるのは嫌だけど笑)、大家さんに撮ってもらうことになりました。

撮る前は、めちゃくちゃ恥ずかしかった!笑
現場ならまだしも、自分の知ってる人の前で、仕事の顔を見せなければならないなんて…しかも、いつも撮るようなポージングの写真ではなく、苦手とする演技を、動画で。もう正直、"嫌だ〜!"って思ってました笑

でも、カメラを回し始めたらそんな感情を持つ余裕もなく、ただただお題に忠実に、声を上げながらぴょんぴょん跳ねながら、夢中になって応援していました。
(そのときの写真!マッシュルームカットも相まって、こどもみたいですよね笑)

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この動画を送ってから10日後、最終オーディションに呼ばれました!

◆オーディションは負けず嫌いの集まり

会場に着くと、そこにはすでに10人以上の男女が集まっていました。私が到着した後も、どんどんモデルが入ってくる。用意されていた椅子も足りなくなるくらいに集まったところで、オーディションがスタート。1人ずつ名前が呼ばれ、衝立ついたての向こう側へと消えていきました。

そしてどうやら、オーディション内容はビデオキャスティングと同じ。

それがわかった理由は簡単でした。最初のモデルが入っていって数十秒、衝立の奥から物凄い声量の雄叫びが聞こえてきたからです笑 メンズモデルの雄叫びという名の声援が。待っていたモデルたちも、あまりの叫び声に笑っていました。

が、その後に続くモデルたちも皆、負けず劣らずのもの。笑っていても、自分だってやってやる!という気持ちが人一倍強いモデル。カメラ前に立ったら速攻でスイッチON!になります。

衝立の向こう側は、自分の目の前にフォトグラファーの男性(本番もこの方でした!たまにオーディションと本番で違うときあるよね)、その奥にもう1人女性のフォトグラファーが座っているだけのシンプルなものでした。規模の大きな仕事だし、もっとたくさん審査する人がいるのかと思っていたので、少し拍子抜け。

でも、人数が少ないのは私にとっては好都合。変な緊張感もなく、ビデオキャスティング以上に集中して、やはり負けず劣らずの声援を届けました。

◆撮影は目立った者勝ち

結果は、見事合格!
しかし、本番はここからだった…!

撮影当日。早朝のホテルに集合したのは、20人以上のモデルたち。男女は少しメンズが多いくらいの比率で、身長や肌の色、国籍も皆バラバラ。
そこからバスで出発し、2時間の移動を経て、撮影場所のサッカースタジアムに到着しました。

ヘアメイクをし着替え終わると、最初は全員揃っての撮影からスタート。みんなで声を出して応援の雰囲気を作っていると、フォトグラファーが数人の名前を呼ぶ。そのあたりにフォーカスした写真が撮られていく。今度はその奥に立っている数人、次はその横にいる2人…というふうに、流れるように撮影が進んでいきました。飲料水の広告だったため、飲んでいる様子や手に持って応援している様子など、その場で瞬時に対応していくことが求められました。

全員での撮影が終わると、今度は数人が呼ばれ、場所を変えて撮影。横並びになって、名前を呼ばれたモデルから飲料水をあおっていく。
この撮影くらいから徐々に、モデルたちが本領発揮していきました。

誰かが名前を呼ばれてフォーカスされると、それ以外のモデルは、カメラを向けられているモデルに絡んでいってポージングしたり、近くで目立つような動きを披露したり、皆が我先にと前に出る。特にメンズモデルの前に出ていこうとする力には、物凄い勢いがありました。

その積極的な動きにフォトグラファーもノリノリになり、もっともっと!とどんどん指示が加速していきます。モデルたちが前に出て踊り始めたりすると、さらにダイナミックな動きはできないかと要求したり、終いには男女でキスして!という指示まで出ました。

皆知っているのです。何百枚何千枚と撮るこの撮影で、前に出ておくことの大切さを。少しでも多く写っておくことで、広告が公開になった際に自分の露出度合いが高くなるのはもちろん、積極的に動くモデルにはチャンスが多く回ってくることを。

そんな中、私も積極的に前に出ようとやってはみるものの、中々メンズたちのようにはできない。。普段よく撮影している雰囲気とは違い、明るく元気な自分を出していかなければならないことにもプレッシャーを感じていました。

でも、自信がなくてもやらなければいけない。撮影中にへこたれることはできない。落ち込みそうになったところに気合いを入れ直し、みんなみたいに前には出れないけれど、自分が呼ばれたときには精一杯努めるようにしました。

撮影は全部で4日間。そのうち最初の2日間は、仕事が決定した際に確定していました。後半2日間のメンバーは、撮影をしていく中で決めていくというシビアなもの。
前半の2日間だけで終わってしまったらどうしよう…と思っていましたが、結果は、中1日は休み、最終日に再び呼んでもらうことができました。

自分が前半にベストを尽くしたから呼んでもらえたんだと思うと、とても嬉しかったです。もしかしたら、そんなことは関係ない理由だったのかもしれないけれど、こうしてポジティブに考えることで、最終日も気持ちを保って臨むことができました。

◆撮影終了後にダウン

炭酸飲料の広告だったので、写真に撮った時に泡が写るよう、撮影直前には毎回、飲料水の中に二酸化炭素のタブレットを入れていました。

飲んでしまうと体に悪いから、「もし飲料が口に入ってしまっても、その場で吐き出すように!」と指示が飛んでいたのですが…
飲む仕草のポージングが長いと、どうしても飲み込んでしまう、、!他のモデルたちは慣れているのか、その場にペッと吐き出していたのですが、私は中々うまくそれができませんでした。不器用。。笑

初日から3日間そんなことが続き、けれど撮影中にも中1日のお休みの日にも、特に体調に変化はありませんでした。

しかし、最後の撮影を終えたその夜、緊張が解けたのか、大変な腹痛に襲われることに。。最終日には飲むカットが今まで以上に多かったため、明らかにタブレットが原因でした。
次の日に仕事が入っていなかったから良かったものの…疲れもドッと出て、ベッドから身動きできず。
撮影中に痛くならなかったことが不幸中の幸いでしたが、次に同じような仕事が来たら、絶対に!意地でも吐き出します!笑 

◆環境を変えると自分も変わる

撮影からおよそ1年後、このときの広告が出ました。
日本と韓国以外のワールドキャンペーンだったので、ちょうど日本にいた私は直に見ることは叶いませんでしたが、SNSやWEBで検索した際に見つけることができました。

やはり前に前に出ていたメンズたちの勢いのある写真は素晴らしかったし、たくさんの枚数が出ているように思えて、少し悔しかったです。
でも、私も普段の撮影では見せないような自分がたくさん写っていて、そういう仕事もやればできる、少し経験が足りなかっただけだ!というように、自分にとって本当にいい仕事をさせてもらえたと感謝することもできました。

ちなみにその仕事はこちら!
2018年のワールドカップに合わせた、コカコーラの広告です。

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私は元々前に出ることが苦手な性格だったので、今でもそういう自分が顔を出すことはあります。勝手にこういうことやったらダメかな、やりすぎかな、何か思われちゃうかな…

けれどNYでの撮影は、その考えを見事に吹き飛ばしてくれるものばかり。指示はあってもそれ以上にやることを認めてくれる。やりすぎもOK!むしろ何かやってくれないかと期待されることばかり。

この撮影以外にも、こうした前に出ていく力のあるモデルたちに出会い、自分ももっとできる…!と奮起したことが何回もありました。やっぱり、やったもん勝ちなんだなぁって。そしてそれを認めてくれる、出る杭は打たれない、私が経験したのはそんな素敵な世界でした。

その後、日本で仕事をしたときの私は、ショーの仕事で「ここは音楽に乗ってフリーで動いて」という場面で、隣のモデルの手を取ってガンガン踊るような人になっていました笑
人って、環境によって経験によって本当に変わるんだよね。そんな変化が私は大好きです。

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鈴木亜美
24歳からモデルをスタートし、現在は東京とNYをベースに活動中です。海外での苦い経験・笑い話になったエピソードを書き留めています。活動履歴はこちらから: https://satorujapan.co.jp/models/ami-suzuki-4/