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ロンドンで受けた、その後を左右する大きなキャスティング

初めてNYでランウェイを歩いた年、NYFWも終盤に差し掛かっていた時に、急遽ロンドンに行くことが決定しました。

実は期間中にプレキャスティングで行ったディレクターの元から、何度かCall backされていたのですが、それがなんとNYFWの為のキャスティングではなく、パリファッションウィーク出演に向けてのものでした…!!

有名なキャスティングディレクターたちは、NY以外の都市、ロンドン、ミラノ、パリでもランウェイを抱えているため、それぞれの都市に入る前からキャスティングを始めています。

4都市で一番はじめに開催されるNYFWでは、いいモデルを見つけると、NYだけでなく他の都市で開催されるランウェイにも抜擢して連れて行くことがほとんどです。
つまりNYFWには、ヨーロッパでのランウェイ出演のチャンスもある、ということです!

◆エクスクルーシブをかけたキャスティング

私が呼ばれたブランドはセリーヌ。
それもエクスクルーシブ(独占契約)と呼ばれる、1年もしくは1シーズンは特定のブランドと契約を結び、他ブランドのランウェイには出演しない、という契約をかけたキャスティングでした。

エクスクルーシブに選ばれると、期間中はそのブランドの顔の1人として活動しますが、次のシーズンには”エクスクルーシブに選ばれた注目のモデル”という目で見られ、あらゆるブランドから声がかかるという、モデルとしては”成功した”と言ってもいいようなランウェイ出演の仕方をします。

◆まずはNYで

さて、ロンドンに行く前に、NYで何回かCall backをされましたと言いましたが、会場に行くと同じように呼び出されたモデルが数人集まっていました。中には同じ事務所のモデルも。
(実はこの時点で、NYに集まった数百人から選出されています…!)


全員、その場で用意されていたシンプルな服に着替え終わると、1人ずつ呼ばれ、ディレクターの前を皆に見守られながら(これがちょっと緊張する。歩く先にはディレクター、振り返って帰ってくる場所には他のモデルがいるという状態)何度も何度も歩きました。それはそれは長い道のりに思えました…。

私が歩いた時は、”もっと力強く、メンズのように歩いて!”などお題も出されて、それに応えようととにかく必死に歩きました。

当時は夢中でわかりませんでしたが、声をかけられて何度も歩いたのは、少なくとも興味を持たれていたからで、中には1往復歩いただけで帰っていいと言われていたモデルも。
ピンと糸を張り詰めた状態とはこのことを言うのか、と思うほど、とても緊張感のあるキャスティングでした。

そしてその数日後、NYFWも終わりという頃に、マネージャーから呼び出しが。

明日キャスティングでロンドンに行ってほしい、と。

(モデルの移動はいつも唐突に告げられます。この時も、明日夜に飛んで、翌朝にはロンドンでのキャスティングを受けてほしいとのことでした!急すぎる…!)

ランウェイ自体はパリで開催されるけれど、ブランドのアトリエがロンドンにあるので、そこで最終的なキャスティングが行われるとのこと。
世界各国からその年の注目を集める可能性のある新人が集められ、エクスクルーシブの新人枠(全体で何十人いるうちの数人)をかけて競います。
受かればそのまま本番までロンドン・パリに滞在、もし落ちればNYにトンボ帰り。

私はNYFWを終えると休む間もなく、ロンドンに飛び立ちました。

◆出発前にアクシデント発生!

出発前に事務所に立ち寄り、諸々の説明を受けながら雑談をしていると、もう飛行機の出発予定の3時間を切っている…!
慌ててマネージャーに言うと、

1時間前に着けば乗れるから大丈夫だよ〜

とのことでしたが…その日は道が混んでいて、タクシーが渋滞に捕まる。空港に着いた時はぴったり1時間前。

慌ててデスクに行くと、もう1時間を切ってるからあなたの席はなくなりました、と言われました。絶望的な気持ちになり、その場で涙が溢れてくる私…。今夜出発しない限り、ロンドンでのキャスティングは受けられない…。急いでマネージャーに連絡。

え?なんで?1時間あれば大丈夫でしょ?

って返信が返ってきたのですが、無いものは無いので笑、急遽他に乗れる便を探すことに。
なんとか別の航空会社でその日の最終便(危なかった…!)に滑り込むことができました。行く前からドッと疲れましたが、とにかくキャスティングに間に合うとわかって、ほっと一安心でした。

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◆ロンドンで最終キャスティング

そして着いたロンドン。結果次第でどうなるかわからないため、ホテルも取っておらず、数日泊まれる大荷物をそのまま持ってキャスティング会場へ。

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通された部屋には続々とモデルが集まり始め、その数が10人になったところで、担当者から、

これからデザイナーの前で歩いてもらいます

とだけ告げられ、順次1人ずつ別の部屋へ。

そして私の番。部屋に入るとデザイナーとキャスティングディレクターが並んで座っていました。物凄い緊張感のある中、その2人に向かって歩く。
やったのはそれだけ。たった数十秒だったと思います。
何往復したのかも覚えてないくらい頭は真っ白で、NYの時のように”もっとこうしてほしい”などと言われることもなく、すぐに終わったことだけ覚えています。

歩き終わった後は部屋で待機。モデル全員が終わった時点で、再び担当者がきました。そして、名前を呼ばれたモデルは帰っていいとのこと。

残念ながら、ここで私の名前は呼ばれてしまいました。

◆その結果

NYからロンドンまできて、最後の数十秒で落とされる…エクスクルーシブのキャスティングの厳しさを痛感しましたし、正直、ランウェイに出るモデルとして”ダメ”の烙印を押されたようでとても落ち込みました。
(オーディションに落ちただけなのに、なぜか人間性を否定されたような気持ちになる時があるんですよね。。)

しかも、新人でエクスクルーシブに選ばれなかったモデルは、以後大きなランウェイへ出演できる確率は特段に低くなると聞いていましたし、呼んでくれたキャスティングディレクターも、一度呼んで受からなければ二度と呼んでくれないことで有名でした。

そうは言われても、ここで簡単には諦められない!ここから数年、私は諦め悪く、ランウェイに挑戦し続けることになりました。
実際に何回も経験してみると、やっぱり最初がダメだったから…と思うこともかなり多くありましたが、そんな中でも、大きなキャスティングに呼ばれたり、Call backされることもありました。
そして驚いたことに、撮影で一緒になったチームから、ミラノで行われる某メゾンのランウェイ出演をリクエストされたことも…!(その時はシカゴで別の撮影が決まっており、結局出演は叶わなかったのですが。。涙)

確かに、最初が決まっていたら、モデルとして華々しくデビューできていたのかもしれません。

けれど、このロンドンでのキャスティングで受からなかったからこそ、何度も挑戦し続けることができ、意外なところから出演に繋がることがあるんだ、と知ることもでき、また素敵なブランドチームと仕事をすることもできました。同時に、たくさんのモデルの悔しい気持ちも想像できるようになりました。
そしてそれが、このnoteを書くことにも繋がっています。
今ではこの結果で良かったと、少しの悔しさとともに思っています笑

◆おまけ

ちなみにキャスティングを受けた日は、ちょうどロンドンでラグビーのワールドカップが開かれ、日本が戦う前日!
キャスティング後にカフェで会った友人から、

夕方は空港への道が混むから、絶対に早めに出た方がいいよ!

とアドバイスが。
そのお陰で、帰りは遅れることなく空港に到着。無事、NYに帰ることができたのでした:)


ロンドンでのキャスティング話、いかがだったでしょうか。モデルには1人1人にたくさんのエピソードがあると思います。ここではその”鈴木亜美の場合”をお話ししていこうと思っています。次回もお楽しみに!

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