「ご縁」という言葉
最近、「この出会いも、ご縁ですね」と言ってくださる方に出会いました。
10年近く前にも、「ご縁ですね」と言ってくださった方に出会ったことを思い出しました。
これは、そのときのお話です。
1.子連れで初めての引っ越し
第一子を出産して、丸2年を迎えようかという頃。
主人の転勤で、新しい土地へ引っ越しました。
秋の初めでとても寒くて、子どもを連れて公園に行っても、葉っぱは落ちて、お花も咲いていなくて、ただひたすら寒くてだだっ広い公園に行ったことをよく覚えています。
その前に住んでいた街では、公園に行けば、知り合いではなくても誰かしら遊んでいる子どもたちがいました。
それが、その公園では、本当に誰もいなくて。
その近くを自転車で走ってみたけど、ちっとも親子連れをみかけなくて。
すっかり、不安になってしまった私です。
その後、ネットで探した「子育て支援センター」「幼児教室」に電話をかけて、自分のための、子育ての悩みを共有できる友人と、親子で過ごせる「居場所」を探そうと動き出したのでした。
2.幼児教室との出会い
そこで電話したある幼児教室。
実際に幼児教室が始まるのは4月。その問い合わせ・・・という形で、電話をかけたのかもしれません。
電話に出てくれたのは、とても優しい声の先生。「引っ越してきたばかりで、知り合いもいなくて不安で・・・」と思わず話してしまったことを覚えています。
そのときは、問い合わせの時期が早すぎたんだと思うのですが、その先生に会うことはなく終わりました。でも、電話をかけて安心感をもらったことはよく覚えています。
そして冬を越えて4月から、その教室に通うことになりました。
今でも、その教室に通えてよかったと思います。
通ったのは、2歳児クラスで、幼稚園に入るまでの一年間でした。
人一倍人見知りで、お返事すら出来ないうちの子。そんなうちの子を、「大丈夫ですよ、ママの陰でちゃんとお話聞いてますからね。」と言ってくださるとても優しい先生でした。そして、悩みを話せば「わかります!皆そうですよ!ママは本当に頑張ってます!」と共感し、励ましてくださる。
周りにいたママさんたちも、少しでもうちの子が出来たことがあると「よかったね!」って一緒に喜んでくれる方々。子育てでうまくいかないことも、見栄を張らずに話せる、励まし合える仲間ができました。
先生には、引っ越してきたばかりの時に私が電話したことは、特に話す機会もなく、楽しく過ごしていました。
3.幼児教室卒業のとき
そんな幼児教室卒業のときが、やってきました。
幼児教室最後の日。
子どもたちは、おやつタイムにして、先生とママたちで最後のお話をする時間のこと。
みんな、話しながら、涙、涙・・・。
それだけ、とっても楽しくて安心する時間だったし、幼稚園は皆バラバラで、ママたちも離れるのが寂しくなっていたのです。
そして私の番。普段、人前で涙を流すのはものすごく苦手な私。
部活の最後の試合に負けたときも、小学校中学校の卒業式で、周りが泣いていても、どうしても涙を流せなかった私。
でも、そのときは、こらえることが出来ませんでした。
不安な気持ちで始まった、その土地の生活。
それが、こんなに素敵な出会いがあって、素敵な時間を過ごせたこと。
色々なことが頭の中に蘇ってしまったんです。
そして、「実は、引っ越してきたばかりの不安いっぱいの時に、こちらの幼児教室に電話をして・・・」と話したのです。
すると、その先生は、おっしゃいました。
「覚えています、お電話くださったこと。あなただったんですね。その後どうしたかなって、心配していたんです。そうだったんですね!本当によかったです、安心しました。これも、ご縁ですね。」
そう。先生も覚えていてくださったんです。
私からしたら、行ったこともない幼児教室、どんな人がいるかもわからない教室で、電話をするのも一世一代の決心。とても勇気が必要なことでした。
でも、先生からしたら、きっと、年に何度も受けるだろう問い合わせの電話の一つで、そんな電話があったことも覚えていないだろうと思っていたんです。
だから、あえて言いませんでした。
でも、覚えていてくださった。
とても嬉しかったんです。
「ご縁ですね。」
その言葉が、とても心に響きました。
そう。素敵な言葉だと思いました。
3.あのときの電話が引き寄せてくれた「ご縁」
先生の一言で、私にとって、あの電話は、とても重要な意味を持つものだったんだと気づきました。
あの電話をかけたときに、そっけない対応をされていたら。
勇気をくじかれるような、対応をされていたら。
その教室へ通うことはもちろん、他の習い事や幼稚園に電話をかけることも怖くなったでしょう。
友人を作ることもなく、不安な気持ちを抱えたまま、遅いパパの帰りを待って、家で子どもと二人でひっそり過ごしていたかもしれません。
勇気を出して書けたあのときの電話が、その後の私と子どもの人生を勇気づけてくれました。
今回、「ご縁ですね」と言ってくれた方との出会いで、そのことを思い出したのです。
とてもとても、大切なことを、思い出しました。
人と人との出会いがあってこそ生きていける。
でも、それは自分でコントロールできるものではない。
いつどこで、誰と出会うかわからないから、だからこそ、人との出会いは、素晴らしい。
「ご縁」って、いい言葉だなぁと、しみじみと感じてしまいました。
そして、今回「ご縁ですね」という言葉をいただいたことで、これからもまだまだ新しい「ご縁」があるのだ…という、当たり前だけど忘れていた希望のようなものが、感じられたのでした。
4.ついでに、思うこと。
そんな素敵な場所が出来たこと、そんな素敵な出会いがあったことは、その幼児教室の先生のお人柄が大きかったことは、間違いないと思います。
「『子育て支援』は、子どもだけでなく、その母親も受け入れ支えること」なのだと、心から思います。
私が、子育て支援に関わりたいなと思うのは、そんな経験も、理由の大きな一つです。
※夏乃まつりさんのイラストを使わせていただきました。
「あなたが動くとき、出会いがやってくるよ」と添えられた言葉が、私の気持ちにぴったりで使わせていただきました。
とても心が温まるイラストです。
優しい誰かが、困っている誰かに、そっと傘を差してあげられますように。
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