見出し画像

「法律なんでも1000」No.006 法律上より事実上-弁護士の視点のタネ明かし

これは、神田英明氏が発行するニュースレター「法律なんでも1000」のバックナンバーです。
ーーーーーーーーーーーーーー

紛争の解決において、法律上権利はあるか、という視点はもちろん重要です。しかし、それよりも事実上どう処理されるかの方が、何倍も重要です。
裁判で最後まで争えばこういう判決が出るという大まかなラインがあります。すなわち、確定した判例、実務例、想定などがあり、法律家はそれを前提に相手と交渉します。
しかし、法律家はその要因だけで動いているわけではありません。以下の観点から、どうすれば裁判という方法によらずに円満かつ早期に権利の実現ができるかを常に考えて動いています。
第一に、法律上権利があるとしても、裁判しないと実現できない、さらには裁判しても実現できないというのでは、権利はあって無いようなものです。例えば、100万円を貸し付けている場合、証拠があり、時効にもかかっていないのであれば、法律上は明らかに権利があるわけです。しかし、相手には返せる当てがないという事態がしばしばあります。こういうときに重要なことは相手方の人間性です。相手がいかに真摯に反省し資金集めに奔走しているか。その態度が円満な解決へと繋がります。権利はスタートに過ぎず、事実がゴールという認識が重要です。
逆に第二に、法律上そこまでの権利がなくても、相手方が納得の上で気前よく対応してくれるのであれば、それは理想的な解決です。「権利はなくて有るようなもの」(?)です。例えば、慰謝料を気前よく支払って離婚する夫のような場合です。
要するに、「法律上の権利」以上に重要なことが「事実上の人間」です。弁護士は、法律上の権利のみに拘泥することなく、この点を意識しながら、何が依頼者にとって最上の利益となるのかを考えているのです。

「なんでも1000」通算No.009>「法律なんでも1000」No.006 

ニュースレター「なんでも1000」の登録・解除はこちら↓
https://t.bme.jp/bm/p/f/tf.php?id=nandemo

神田英明(民法学者・東京弁護士会弁護士)

ーーー
神田英明氏のプロフィール

民法学者(明治大学)、弁護士(東京弁護士会)、法曹教育の第一人者(司法試験首席合格、20歳合格者を輩出)。教え子弁護士が全国各地に100人。
自身の海外経験をもとに、遺産相続に関するミュンヘン講演(在ミュンヘン日本国総領事館後援)や「親が認知症になる前にすべきこと」のフランクフルト講演、「脳が喜ぶ勉強法」という教育に関するデュッセルドルフ講演、さらには国をまたいだ往来が気軽にできなくなった状況をふまえ、世界規模でのzoom講演(「日本にいる老親のためにすべきこと」など)を開催中。
ーーー

お問合せ:AMF2020 

amfofficialinfo@gmail.com

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?