ブラザーズ・ブラジャーを読んで

佐原ひかりさんのブラザーズ・ブラジャーを読みました。

好きなものを大切にすること、好きなものを好きでいる自分をみっともないなんて思わないこと。そうしなければいけないなんてことはなく、そうするのは時に難しいけれど、そうできたら素敵だと、ただ思う。

そして、人と親しくなるということ。

相手の思い浮かべる流れに沿わない事は見せてはいけないように思っていた。ただの相槌にも、異を唱えることが憚られた。そうじゃなくて、とさらっと修正すればいいだけのことだと思うけれど。
相手の知らないことは話題に出さない方がいいように思っていた。それで思い浮かんだ物事を取り下げていって、何も残らなくて口を開かない。言わないから、いつまでも知られず、いつまでも何も言わない。相手が知らないなら少し説明すればいいだけだと、今は思うけれど。誰かが輪の中に入れなくなることを気遣うような心配りは、記憶に浮かんでくるどの場面でも、きっといらなかった。

知らない人の中身が初めて見えたとき、嫌悪してはいけない、あとずさってはいけないと頭の中に標識を立てるようなことがある。
けれど、反応をしなければ、その場に何も生まれない。
人を簡単に蔑むことも、人を傷つけることも、きっとしない方がいい。それでも、そうする可能性をはらんで、できる限りにそれを避けて、進む勇気が必要なんだと思う。何が誰を傷つけるかなんて、考えたって、窺ったって、分からない。全く避けようとすれば、何も言えない。何も言わなければ、何も、生まれないのだ。孤独になりたいわけではない。
せいぜいヒントに目を光らせていればいい。きっと。
それに、無批判に受け入れる必要はない。きっとまずは、ただ知ればいい。

胸の中がもやもやすることがあったら、まずは言えばいい。

知ったときに何を言えばいいんだとか、どう言えばいいんだとか、そんなことは、答えらしいものを、言う直前に掻き集めればいいのかもしれない。

そんなことを思ったところで、いろんなものを想像して怖れるから、その勢いをいきなり生み出すことはできないのだけれど、現実は想像より柔軟なのだと信じて。

好きなものを好きだということを、まずはひとりで、認めようと思う。
腰が引けたままでも、爪先だけでも、踏み込んでみようと思う。


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