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ノイズキャンセリングヘッドフォンが魔法みたいだった話。

 こんばんは! 星が降るラボラトリの物書き、雨谷とうかです。
 今回は、物書きとして、っていうよりは、「音」で困ってる聴覚過敏当事者のひとりとしての記事です。


 このたび、SONY製のノイズキャンセリングヘッドフォン、WH-1000XM5をお迎えしました!

 めっちゃめちゃ高かった……けど、お値段以上の価値がある買いものをしたなあ、と思って。
 せっかくなので、この感動を書きとめておくことにしました。

 聴覚過敏を含め、日常の音でなにか困ってることがあるひとには、お財布のご都合さえ許すなら積極的にご検討いただきたいアイテムだなと思います……!
 ほんとに、魔法みたい。


●購入に至るまで

 聴覚過敏、で通じることも多くなってきていますが、さっくり説明しておくと、「音に対して過剰反応しちゃう」ってことですね。
 大多数のひとより、耐えられる(受け流せる)音の範囲が極端に狭い、ってイメージですかね。ボリュームにせよ、音の種類にせよ。

 で、この症状への対策として、効果的とよく言われているのが、ノイズキャンセリング機能。
 まあそうだよね。

 ただ、わたしは長年、この機能が搭載された再生機器には手を出せずにいました。
 触覚過敏といって、「触れるもの」に対する過敏性も持ち合わせているためです。


 ノイズキャンセリングって、わたしの記憶を頼るなら、出始めのころは「カナル型イヤフォン」がほとんどでした。
 わたし、あのカナル型イヤフォンとの相性が致命的に悪くて……ぐにぐにした感覚が、もう、マジでダメで。数秒すら耐えられなくて。
 でも、ノイズキャンセリングって、その仕組み上、「なるべく耳の空間を密閉したい」ようなのです。そうすると、まあ、耳栓みたいなカナル型は、メーカーさんとして都合がいいですよね……

 ……ヘッドフォン型のノイズキャンセラーが出回るようになったのって、いつごろなんでしょうね? ちょっと詳しくないのですが、ヘッドフォンも側圧で頭痛がしたり、そもそもつけ心地が耐えられなかったりと、あんまりいい体験がなくって。

 ノイズキャンセリング、いいなあ。でも、わたしにはご縁がないんだろうなあ。
 と、かなり諦めていたんですけど。

 次の制作で、大きなテーマになる予定なのが「感覚」で。自分と似たような症状、ようは感覚過敏と闘っている子も描いてみよう、と思っていて。
 そうなると、情報いろいろ集めるんですよね。そのなかに、「ノイズキャンセリング」まわりの話題も必然的に含まれており。
 調べていくうちに、「なんかこのヘッドフォン評判いいな……?」と思ったのが、今回のWH-1000XM5だった、という。


 取材も兼ねて買っちゃえ!!


 と、いうわけで、お迎えに至りました。ノイズキャンセリングデビュー。めっちゃ高かった……しばらく節制しなきゃです。
 それでも、後悔は一切ないです! いい買いものした!


●1日使ってみた

 おうちに届いて、初期設定して、自分の部屋でつけてみて。「めちゃ静か!」って。
 その時点で衝撃だったんですけど、音楽をちょっと流してみたあとで外したときのショックがもっと大きかった。
 テレビにつなげてあるレコーダーの音とか、外を車が走っていく音とか、べつの部屋で家族が動き回ってる音とか、あと、集合住宅なのでほかのおうちの音とか。「自分の部屋でさえ、こんなに音で溢れてたんだな……」って気づかされて、ほんと衝撃で。

 聴覚過敏のない世界って、こんなかんじなのかもな、と思いました。すごい、めっちゃ快適だ〜……
 で、外してみると「こんなにいろんな音を片っ端から拾っちゃってるのか自分は」って愕然としちゃう……そりゃ疲れるわけだよ……

 触覚過敏まわりで懸念していたつけ心地もすごく軽くて、圧迫感も最低限。
 これならだいじょうぶかも、と判断して、念のためちょいとヘッドフォンを充電してから出かけてみることにしました。


 外に出てみると、さらに顕著。もう、玄関から一歩出た時点で、世界が静かだし、穏やか。
 歩いてるのを感知して外音取り込みモードに切り替わってくれたので、「ほどほどに外の情報を取り込みつつ、苦手な音は音楽で覆っちゃう」っていうのが、わたしからの操作なしにできちゃう。ほんとに感動。
 音楽の聞こえ方も、低音にいい感じの厚さがあって、中〜高音域も聞きやすくて。すごく、わたし好みなサウンドでした。

 最寄りの駅まで歩いて、コンビニちょっと覗いてから電車乗って。電車の振動は伝わってくるのに、走行音がほとんど聞こえなくて、不思議な感じで。
 駅前のマックで、お昼ごはんを食べて。モバイルオーダーしたえびフィレオを持ってきてくれた店員さんに、数秒ほど遅れて気づいて。店内のガヤガヤが、きょうはぜんぜん気にならないな、って、マスク外すためにヘッドフォンずらした瞬間にようやく自覚して。
 かかりつけ医を受診して、ここでも呼ばれてるのに気づかなくって、手招きされて「あ! わたしか!!」ってなって。
 薬局行って、普段だとすごくうるさく感じるテレビの音がぜんぜん苦痛じゃなくて。ぼーっと音楽聴いてたら、またしても呼ばれてるのに気づけなくて。

 通院済ませたら帰るつもりでいたんですけど、ついでに隣町の駅ビルで買いものができそうだな、と思ったので、ちょっと大きな駅まで出てみました。
 駅ビルのごちゃごちゃした雑貨屋さん行ってステッカー買って、べつの雑貨屋さん行ってヘアアクセサリー買って、もうひとつ雑貨屋さん見て「まあいいか」と思って。
 で、電車に乗って、帰ってきました。
 

 帰宅して真っ先に思ったのが、「あ、まだまだめっちゃ元気」って。
 普段だと、こんなにいろいろこなして帰宅したらおふとんへまっしぐら、そのまま60分はすやすや熟睡コースなんですけどね。きょうは、このまま近くのコンビニくらいなら余裕で行って帰ってこられるだろうな、って感覚があって。
 自分の疲弊に占める「音」の割合がどんなに大きかったか、っていうのを、すごく痛感しました。
 最大HPとMPを増やしたうえで、毎ターン少しずつ回復する効果がついてるアクセサリーを装備しました、みたいな体感。

 ひとの声や店内BGMみたいな、中〜高音域をカットするのはノイズキャンセリングの苦手分野、ってイメージがあったのですが、このヘッドフォンについてわたしの体感を言えば、「ぜんぜんそんなことなかった」です。
 なんなら、家で仕事してる家族のテレビ会議とか、普段はめちゃくちゃうるさいんですけど、きょうは気にならなかった。

 なんかもう、びっくりしちゃった。


●クイックアテンションめちゃ便利

 実際に使ってみて、想像してたよりはるかに便利だったのが、「クイックアテンションモード」っていう機能。

 このヘッドフォン、右耳に当たる部分がコントロールパネルになっていて、指や手で特定の操作をすると反応してくれるんです。そのなかに、「パネル部分を手で覆うようにすると、手が触れているあいだ、音楽のボリュームを絞りつつ外の音を取り込んでくれる」っていうコマンドがあって。
 これ、すごく役に立ちますね……!

 たとえば、ちょっと交通量の多い道に出てきたときとか。
 車に気づけないのマズイだろうなと思って、ヘッドフォン外すか悩んだんですけど(そして安全上は外すのがいちばんよいのでしょうけど)。試しに右耳のとこ覆ってみたら、すーっとノイキャンのモードが切り替わって、わたしの耳であれば通っていく車の音は問題なく聞こえるようになって。
 なおかつ、聞こえ方もすごく自然で、マイクで拾ってる音って感じがほとんどしなくて……! わりと、マイクやスピーカー通した音って、なんか音質が尖っちゃってる感触がして苦手なんですけど、これはぜんぜん違和感なく聞けました。

 そのあとも、「ヘッドフォン外したほうがいいかな?」って思う場面は、いったん右耳のパネルを触って、クイックアテンションで様子見してました。結果的に、ほとんどの場面ではヘッドフォン外さずに済みました! めちゃスマート! すごい!
 駅の構内放送とかも、ちょっとクイックアテンションで聞いてみて、「あ、わたしは使わない路線の話か」ってわかったら手を離す。それで、すぐノイズキャンセリングに切り替わってくれる、みたいな。

 ほかにも、外音取り込みのなかでもひとの声を優先して取り込めるやつとか、いろいろ便利機能に助けられてますが……
 この「クイックアテンションモード」は、わたしにとってずば抜けて助かってるやつかもしれない……


●「音の魔法は、とっくに存在したんだな」

 わたし、なにか魔法が使えるようになるのなら、音にまつわる魔法がほしいな、ってずっと思ってました。
 特定の音のボリュームを上げる、下げる。いっそ遮断する。そういう魔法がほしい、って。
 そのくらい、「音」ってものは、わたしが日常を生きていくうえで、避けられない障壁だった。

 都合のよすぎる魔法だし、存在しないんだろうな、と思っていたけど、そんなことはなかった。
 わたしが魔法使いになるための杖は、この世界に、ちゃんとあったみたいです。

 うるさいもんなあ、って理由でいままで諦めていた場所にも、これからは行けるようになるかも。
 疲れきっちゃうもんなあ、って理由で避けてきた遠出も、これからは、できるようになるかもしれない。

 それが、ほんとに、すっごく嬉しいです。


 わたしみたいに、「聴覚過敏だけど触覚も過敏あるんだよな……」って困ってるかたがいたら、ちょっと検討してみてほしい機種ですね、この子。少なくともわたしは、このヘッドフォン、つけてるのが気にならないくらいにはつけ心地が好みでした。
 お値段だけは……あんまりかわいくないんですけど……! それでも、活動の限界が広がるのを思うと、わたしは「いい買いものしたな!」の気持ちが圧倒的に強いです。


 SONYさんの公式サイトのリンクを、あらためてぺたりとな。


 そんなわけで! 音の魔法にめざめた飴屋さんの日記でした。
 それじゃあ、またね!


2023/01/06
雨谷とうか / 飴屋
@ameya_ayameya

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