将来の夢が小説家だった頃

・将来の夢は叶う。わたしは今、国語の先生をやっている。だからもうひとつの夢も叶うはずだ。

・小学校の卒業アルバムに書いたそれは小説家だった。本が好きな子どもにはよくある話、だけれども、この間やっと気づいたことがある。わたしは「児童文学作家」になりたかったのだ。

・ただの小説ではない。児童文学だ。わたしは小中学生のとき、本が好きだった。今でも好きだが、あの頃の思いはもう帰ってこないように思う。それは、児童として児童文学を読んでいたからだ。わたしは児童文学が好きだ。

・大学のとき、「児童文学」という授業を取った。児童文学作家が講師で、前期は児童文学の解説を聞き、後期は創作の実践をした。

・なぜあのときに、はっきり気づかなかったのだろう。わたしは児童文学が好きだったのだと。わたしは今、はっきりとわかるくらいなのに。

・後期の最終レポートとして短編小説を提出した。先生が気に入ったものは冊子になり、クラスに配布された。そして、授業で音読した。

・わたしの書いたおはなしを人に読んでもらうのは、あれが2回目だった。

・1回目は、忘れもしない、小学2年の国語の授業でのグループ発表だ。わたしが書いた台本を、グループのみんなに演じてもらった。

・わたしはきっとそのときから、わたしの世界のすばらしさを信じている。

・先生はわたしの作品を冊子の先頭にしてくれた。そして授業で、「高校時代を思い出した」と言ってくれた。もしかしたらわたしのおはなしを読まなければ思い出さなかったかもしれない、些細な日常だ。

・わたしは、ありもしない話ではなく、どこかの誰かが経験しているかもしれない日常を書きたいし、読んでいたい。ウケなくても売れなくても、それがわたしの「ただしさ」であると、胸を張って言えるまで、わたしは戦いたい。

・わたしの信じる物語を書こう。

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