『嵐を呼ぶレース参戦記』(復刻版)第八話「嵐を呼ぶセカンドステージ」
◇プロローグ◇
2004年6月4日(金)
我々は再び桶川の地に立っていた。
この日開催されるのは「セカンドステージ」という走行会。
参加台数34台がグリップA、グリップB、ドリフトA、ドリフトBの4つのクラスに分かれ、朝から晩までサーキットを走りまくるのだ。
なにしろ、一回15分の走行を一日7回できるのである。
ちなみに、ジムカーナのときは7分の練習走行が2回+競技走行2回だったのだから、それと比べるとまさに7倍近い時間を走れるのである。
そして、今回この走行会に、私、kyu氏、T氏の3名が参加したのである。
kyu氏はインプレッサでの走行だが、私とT氏は、嵐を呼ぶアルトワークス、を2人で乗ることになる。
すなわち、グリップAクラスは私が、グリップBクラスではT氏がアルトに乗って走るのだ。
従って、アルトちゃんはなんと30分×7回という、耐久レース並に過酷なスケジュールをこなさなければならないのである。
平成3年式、13万円で買った13年前のマシン…。
果たして無事、壊れずに走りきることが出来るのであろうか。
◇グリップAクラス、一回目走行◇
今回の私の課題。「ヒールアンドトゥ」が出来るようになる。
もうね、これまでのお話を読んだ人ならお分かりでしょうが、私はヒールアンドトゥが出来ない。
それだけでなく、そもそもシフトミスが多すぎる(笑)
これを何とか改善したい、というのが今日のテーマなのである。
15分×7回も走行時間があるのだから、たっぷり練習しよう。
◇ウォームアップラン◇
というわけで、先頭を行くペースカーの後に続いて、私の乗る嵐を呼ぶアルトワークスが真っ先にコースイン。
1周のウォームアップラン中、同乗してくれたT氏から、アドバイスを受けつつ、私は上機嫌でハンドルを握っていた。
なんといっても、先週のジムカーナで、すっかりサーキット走行の楽しさにハマった私である。
「ごーごー♪」
まさに浮かれまくり。
遅いスピードで走っているうちは、余裕綽々なのだ。
しかし、ペースカーがピットに戻り、いざ走行開始、となった瞬間、事件は起きた。
2コーナーをクリアした私だが、背後からkyu氏のインプレッサが迫ってきていたのである。
そして、ヘアピンへの進入で、インプレッサがアルトワークスのインに飛び込む。
そのとき、インに飛び込まれた私は…
大パニック。
◇重大事故発生(笑)◇
パニックに陥った私は、無意識のうちにグランツーリスモの癖が出たらしく、一生懸命左足でブレーキを踏む…つもりでクラッチを踏み、次の瞬間には「あ、ブレーキは右足だった」と気付いたらしく、右足でブレーキを踏む…つもりで、アクセルを踏んでいた。
一応、左足はクラッチを踏んだままだったので、むなしく「ぶおーん」とエンジンが吼える。
それでも、コースの外に少しはみ出したものの、とりあえずどこもぶつかることなく、コースに復帰。
とっさにT氏に声をかける。
「大丈夫ですかっ?」
一番パニクっていた私が言うセリフではない、と思うのは書いている今は冷静だからだろう(笑)。
まぁ、この場合、私が心配したのはアルトが大丈夫かどうか、ということだったのだが。
「大丈夫、大丈夫」
苦笑しつつ、T氏が応じてくれる。
さすがは百戦錬磨の大ベテラン。肝が据わってらっしゃる。
しかし…
「ちょっとゆっくり行ってみようか、始めは(苦笑)」
実は怖かったらしい(笑)
そりゃ、私みたいな素人の助手席の乗るのは怖かろう。
だが、何周かして慣れてきた私は、身の程をわきまえず、今度は左足ブレーキに果敢に挑戦することにした。
普段グランツーリスモで遊ぶときやカートなどでは私は左足でブレーキを踏んでいる。
ちなみにレンタカーなどでAT車に乗るときも、私は左足でブレーキを踏んでいる(!)
だから、きっと左足ブレーキをものにすれば、強力な武器になるだろう、と踏んでいる。
さすがにサーキットデビューのジムカーナのときは、左足ブレーキには、二の足を踏んでいたのだが、今回こそはそのステップを踏んでみたいと思っていたのだ。
その結果、踏鞴(たたら)を踏み、虎の尾を踏み、薄氷を踏み、どじを踏み、地団駄を踏むことになる。
◇左足ブレーキ、練習の末路◇
コーナーへの侵入で勢いよく左足でブレーキを踏んだ瞬間。
アルトワークスのリアがブレイク。そしてスピン。
そして左足でブレーキを踏んだままだったので、クラッチを切れず、そのままエンスト。
むなしくコース上にストップするアルトワークス。
読者諸君は、前車の轍を踏まないように気をつけてもらいたい。
このようにABSが付いていない車では、あっさりとブレーキがロックしてしまうのである。
というわけで、左足ブレーキ作戦大失敗。
やはり慣れていないと、左足でのブレーキを踏む感覚を掴むのは、難しいようだ。
左足ブレーキは今後の課題として、ともかく15分間、しっかり練習しよう。
◇一回目走行◇
とりあえず、この一回目の走行での私のベストタイムは59秒5。
あとは1分を超えるタイムで走行していた。
これが今日一日でどれくらい速くなるか、楽しみである。
さて、一回目の走行が終わると、休む間もなく、グリップBクラスのT氏にドライバーチェンジ。
そして私は助手席に乗り込む。
凄腕T氏が、一体アルトをどんな風に操るのか、間近で見習うチャンス。
◇グリップBクラス、一回目走行◇
勉強に専念するため、今回はビデオ撮影はなし。
要所要所で、T氏からアドバイスを受けつつ、助手席で同乗体験。
そりゃもう、私とは全然スピードレンジが違うし、コーナーでタイヤは鳴りまくるし、操作はスムーズだし、『別次元』って感じ。
しかし、ライン取りであるとか、コーナーの通過スピードなどは、私の腕でも十分見て参考に出来る。
「そうか、ここはこうやって走るのか」とか、「なるほど、このコーナーは全開で行けるんだ」とか、上手い人の走りは、見るだけでも素晴らしく勉強になる。
濃密な15分はあっという間に過ぎていった…。
◇グリップAクラス、二回目走行◇
今回はビデオ撮影はなし。
一生懸命練習していたのだが、一回目のようなアクシデントもなかったので、書くことがない(笑)
◇グリップAクラス、三回目走行◇
今回は、私の走行は一旦お休み。
まだタイヤもマシンも熱ダレしないうちに、kyu氏がタイムアタックをしたい、と言ってきたためである。
さて、今回の走行会に隠された、もう一つの目的を明らかにしよう。
それは、2004年8月1日に参戦予定のK-CARインターカップ(耐久レース)の予選タイムアタックを行うドライバーの選出である。
私、kyu氏、T氏のうち、今日のベストラップをたたき出した人間が、栄えある予選走行ドライバーに選ばれる、というわけである。
本来はFF乗りであるE氏が選ばれるものと思っていたのだが、なにしろE氏はまだこのマシンでサーキット走行を経験していない。
そこで、今日走る3人の中から選ぶことにしたのである。
んで、このグリップAクラス、三回目走行の枠を使って、kyu氏がアルトに乗り込み、タイムアタックを行ったのである。
◇kyu氏タイムアタック中◇
タイムアタックを終え、一回ピットに入ったが、タイムが取れていなかった(笑)。
再びコースインし、やり直し。
◇まだまだkyu氏タイムアタック中◇
このときもなにやら計測が上手くいっていなかったようで、いまいちこのタイムも怪しいと判断し、グリップAクラスの四回目もT氏とkyu氏で走ることになった。
んで、結局kyu氏のベストは52秒1。
そしてT氏が49秒台のスーパーラップを出したため、これにて予選アタック担当はT氏に決定。
◇グリップAクラス、五回目走行◇
この回の走行中、私は本日の自己ベスト53秒437をたたき出した。
54秒台も4回出ているので、かなり速いペースで走行できていた。
1回目は59秒5だったので、そこから比べると6秒もタイムアップ。
やはりこれは、T氏の走りを見て、学習した成果であろう。
まぁ、T氏とはまだ4秒も差があるが、kyu氏とは1秒差。
これは結構嬉しい。
◇六回目走行◇
ビデオが残っているのは6回目の走行。
しかし、このときのタイムは不明。
タイムが残っているときはビデオを撮ってなくて、タイムが取れないときは動画があるというのはどうだろう(笑)
まぁ、最初と比べるとそこそこ上手くなっていると思いたい。
◇T氏の走行◇
とりあえず、グリップBクラスの6回目では、T氏の走りをビデオ撮影。
私の走りとの違いしっかり確認。
特に、コーナリングスピードと、タイヤの鳴り方なんかがやはり全然違う。
◇グリップAクラス、本日最後の七回目走行◇
いよいよ本日の集大成である。
私のひそかな目標が、kyu氏のたたき出した52秒1を超えることである。
◇七回目走行、マシンに異変が…◇
しかし、走り出してすぐに、私は違和感を覚えた。何かがおかしい。
なにやらコーナーのたびに、変な振動と、タイヤのキュキュキュキュキュという変な音がするのである。
しかも、前よりもマシンが曲がりにくい感じ。
これは…、タイヤか?
緊急ピットインした結果…。
右フロントタイヤがこんな感じ。
これでは走れません。
いわゆるスローパンクチャーというやつであり、酷使に耐え切れず、右フロントタイヤがお亡くなりになっていたのである。
これにて走行は中止。そしてグリップBクラスの7回目の走行はキャンセル。
本日は、これで店じまいである。
すぐに右フロントをスペアタイヤに履き替えて、この日は帰路についたのである。
(セカンドステージ編を1話で終わらせるため、かなりはしょってます(笑))
◇次回予告!◇
セカンドステージにて、散々走りこんだため、アルトワークスはかなりぼろぼろに…。
そこで、タイヤ、ミッションオイル、エンジンオイルを自分たちで交換することに。
その次の週にはブレーキフルードも交換。
6月20日のしのい走行会に向け、アルトちゃんのメンテナンスだ。
そして、そんな合間、我々の間である重要な会議が催されていた。
すなわち、耐久レースに参戦するときの我々4人のチーム名を決定する会議である。
果たして、どんなチーム名に決まったのか?
全国8千万人のグランツーリスモファンもびっくりのナイスネーミングとは?
次回、『嵐を呼ぶレース参戦記』第九話
「嵐を呼ぶインターミッション」
ご期待ください!
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