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雑文「うたスト! グランプリ頂きました」

 僕の書いた短編小説が、PJさん主催のイベント「うたスト(歌からストーリー)」で、グランプリを頂きました!
 受賞したのはこちらの作品。

 ちょっとここでは、受賞の喜びに加えて、作品の創作過程や、作者による作品考察をして見たいと思います。


グランプリ、ありがとうございます!

 いや、正直グランプリを獲れるとは全く思っていなくて。何らか賞に引っ掛かれば良いな、とは思っていましたが。
 作品自体は自分でも気に入っているのですが、なんせ好き嫌いが分かれる作品だろう、という思いがあったので。もしかして特別賞みたいな、王道から外れたところで評価してもらえるかも・・・と言うぐらいで思っていました。

 また、結果が出る前に読んだ闇夜のカラスさんの「盲目」が良い作品で。正直、こう言うのがグランプリに選ばれるだろうなぁ、と思っていました。実際に準グランプリを獲得されています。

 嘘みたいな本当の話なのですが、事前に僕は妄想していました。闇夜のカラスさんの「盲目」がグランプリを獲って、「すごいけどグランプリにする作品ではない」枠で、僕の作品が特別賞とか裏グランプリみたいな賞を受賞できれば・・・と。

 今回はたまたま、審査員の方々に僕の作品がハマった、と言うことかと思います。好き嫌いが分かれる作品の、好きの方がたまたま集まった。
 調子に乗らずに、また面白い作品を書いていきたいと思います。


本作の創作過程

 ここからは少し、裏話的な話をしたいと思います。ネタバレですので、作品を未読の方はぜひ、作品から読んでください。

 まずは本作ができた創作過程について。

 今回は歌から小説を書く、と言う僕にとって初めての挑戦でした。しかも、複数の歌からお題を好きに選べる。全部聞き込んで、解釈を自分の中で作れたら良いのですが、それはなかなか骨の折れる作業です。
 僕はひとまず「1回聞いて、一番気になった歌」をお題にしようと考えました。それがハナウタナベさんの「盲目」という楽曲。

 盲目。そして「見えるから 見えなくて 見えないから 見えてくる」という歌詞を聞いて、まず思ったのは「恋は盲目(Love is blind)」という言葉。元々はシェイクスピアですね。
 見えているのに見えない、この矛盾を落とし込むには物理的ではなく、精神的に「見えなく」なってもらうのがわかりやすい。そこで最初は恋愛小説のプロットを考えました(なのでこの作品は恋愛小説、と言い張ります)。

 でも、僕は捻くれてるんでしょうかね、ただの恋愛ものでは面白くない(面白く書く筆力がない、ということでもあります)。物理的にも「見えないから見えてくる」を盛り込みたくなった。あと、曲が怪しげなこともあり、その雰囲気も盛り込みたかった。

 そこで、昔から「面白そうなシーン」として書き留めておいたものを引っ張ってきました。それは、学校の机の引き出しの中に手に入れると、誰かの手に触れる、というもの。ずいぶん昔に書き留めていたものの、作品にはしないまま、放置していたものです。

 書き留めたものは学校でしたが、それを生活感のある「食器棚」にして、中年女性の歪んだ恋物語に落とし込んでいった、という感じですね。あとは、「なぜそんなことをしているのか」「なぜ隙間に手があるのか」を考えて、ストーリーに仕立て上げました。


短編小説「花にふれて」考察

 さて、そんな作品ですが、作者自身でその内容を考察してみましょう笑
 僕が意識的に「仕込んだ」ものと、後から考察して「もしかしたら」と思ったこともあります。

意識して仕込んだもの

 まず初めに、今回の作品では、意図的に「具体的な数字」を盛り込みました。10年ぶり、とか14年目、とか16時間後、とか・・・。これはストーリーの中で「精神的」「物理的」に「盲目」になることに加えて、文章でも「盲目」を仕込みたかったからです。具体的な数字が示されているのに、サラッと読んだら意図が見えない。しっかり考察すると、何かが見えてくる・・・。そんな仕掛けにしたかったのです。

 例えば、最初のシーン。「私」は大掃除をしていて「手」を見つけます。でも次の日、16時間空けてまた隙間を覗き込んだ時は「夕方」だったとも書いています。
 夕方というと16時〜18時頃でしょうか。その16時間前、つまり冒頭は0時〜2時の「真夜中」に大掃除をしているシーンなのです。その時点でおかしい、と思えば思える。でも、おそらく誰もおかしさには気づかない。こんな仕掛けを何個か盛り込んでいます。

 あとは、マイホームに住んで14年目、夫は3年目には「私」への興味を失っていた。なのに「私」の手に誰かが手や唇で触れるのは10年ぶり。はてさて。

意識していなかったもの

 一方で、意識していなかったもので、作者も「あれ?」と思ったシーンがあります。
 それは結婚指輪のシーン。途中で結婚指輪は少し太って外れなくなった、という言葉が出てきます。これは「私」なのか「夫」は記載されていません。でもおそらく両方なのかな、と思います。
 ただ、ラストのあたりでは、夫の左手から指輪が簡単に外れるシーンが描かれています。普通に考えると、血が抜けた分で細くなったのでしょうが。もしかしたら夫は「外れないから」と言いながら、自分の意図で結婚指輪をつけていたのかもしれません。

 ここは一応、推敲しているときに気づきましたが、そのままにしておきました。夫が嘘をついていたとしたら、それはなぜか。そんな想像をして見るのも面白いかも知れません。


 さて、そんなわけで改めてまして「うたスト!」という楽しいイベントを作ってくださったPJさんに感謝します。楽しかったし、何より自分だけでは生まれなかった作品を、「歌をストーリーにする」という過程で生み出すことができました。

 そして最後にもう一度、グランプリ受賞、嬉しいっ!

(了)

#うたスト #受賞 #短編小説

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