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夜間飛行 「死んでもいいわ」とは返せない

『BUTTERFLY EFFECT』(以下BE)が発売されたのが、2017年と知って少しびっくりしました。
それ以来、アルバムの予定がない状態なので、結構空いているんだなと思うとともに、次のアルバムに入るであろう曲たちを考えると、シングルだけでも強すぎないか、と思います。

正直に言うと、BEは好きな曲がとても多く、買った当初からもっと金を払わせてほしいと思った記憶があります。神神でも1日目の開始3曲で元を取ってしまい、泣きながら貢がせてほしいと友人に話したのも、記憶に新しいです。
さて、今日はそんなBE収録曲の中の『夜間飛行』についての話をしていきたいです。この前Twitterのトレンドにあった『THE DAY』と迷ったのですが、今回は『夜間飛行』で行きます。

初めて夜間飛行を聴いたときは、ふつうにいい曲だなと思ったのですが、歌詞を頭に入れた状態で聴くと、一つの小説のような構成力と歌詞の対比の美しさが、やさしい声ですっと入ってきてとんでもないいい曲だなと思いました。
この曲も全編通して聴いていただきたい、短編小説のような歌詞です。

この先は個人的に好きな部分を取り上げて、書いていこうと思っています。

対比構成について

紫に煙る 君の気持ちが Oh,carry on,carry over 愛であるように私は耳を澄ましている
美しい瞳が青く陰って 君が言ったのは「月が綺麗」
外さないままの腕時計 音もなく時を刻んでいる Oh,carry on,carry over  止まればいいのに 私は耳を塞いでいる

全て歌詞から参照していますが、引用の最後の歌詞は本当に大好きなのでたびたび参照します。
この三つの塊ですが、まず「紫」と「青」が対比されているのかな、と思っています。いずれも、この曲の主人公が見ている「君」あるいは「君」のしている行為についての色という視覚情報です。
※「紫」=「君」の吸っているタバコの煙の表現
 「青」=「君」の瞳の色? これも何か比喩のような気も。

また、引用した中にもう一つ、対比があって、
愛であるように「耳を澄ましている」に対して(時が)止まればいいのに「耳を塞いでいる」と、「私」の行為が反転しています。

愛であるように、「耳を澄まし」た「私」が2番では時が止まることを願って「耳を塞いで」いるのです。この時点で「私」に対する「君」の心を、「私」は察していたのだろう、と思われます。

ところで、三番目の引用の歌詞が大好きという話をしましたが、その話をしていきます。

「君」の心がわかっていてもいじらしい「私」

夜間飛行を聴いたことがあるならわかると思うんですけど、この「私」はすごく「君」のことを好きなんだな、と感じられると思うんです。
それは各所にちりばめられた「君」への想いがにじみ出ている歌詞から察せられると思うんですけど、一番それが効果的に出ているのが上記引用の三番目の歌詞であると思うんです。

「君」は腕時計を外しておらず、その腕時計が「音もなく」時を刻んでいるのに「私」は「耳を塞いでいる」んですよね。
おそらく別れの時が近づいていて、時間の経過を認めたくないが故の行為だろうことが推測されますが、音もなく時を刻む腕時計に対して、耳を塞ぐのは対抗にならない。それでもそうしてしまう。それだけ、「君」の気持ちがわかっていて、別れが迫っていて、それを認めたくがないゆえの行為なのかなと思っています。

「私」の結末 「死んでもいいわ」とは返せない

君が言ったのは「月が綺麗」 美しい言葉ね 的外れでも

この歌詞を聴いて思い出したのが、夏目漱石が「I LOVE YOU」を「月が綺麗ですね」と訳したという逸話(この逸話は創作では、という話があるそうですが)でした。
私は「君」も「私」のこと好きってことでは?を思っていました。でも、この歌の最後って

甘く香るの 私好みじゃないパフューム

で終わるんですよね。あれだけ「君」に対しての想いを募らせていた「私」が、「君」のことを「好みじゃない」と断じて、別れを示唆して終わるんですよね。この結末で、「私」と「君」の恋愛関係(あるいはパフュームから考察するに不倫関係? パフューム=別の女の示唆?)が好転したとは思えないと思います。

作詞が新藤先生なので、この逸話を知らないはずがないと思うし、と思っていて、ふと思ったのが、「月が綺麗」では青く陰った瞳の「君」は月を見て言っているのでしょうが、「私」は直接好きと言ってほしかったのかな、婉曲な言葉ではなく、はっきりと「好き」と言ってほしかったのかな、と。
ここで、「私」の好みではない甘く香るパフューム=別の女がいることの示唆?と考えると、この二人は不倫関係で、だからこそ、別れの時間が決まっていて、そういう関係だからこそ、直接的な「好き」を望んだのかな、という考察に至りました。
実はずっと、「月が綺麗」にひっかかっていて、夜間飛行を語ることができなかったのですが、やっとひとつの考察ができたので、記念に書いておきます。

彼女は「死んでもいいわ」とは返せなかった。

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