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『最後の決闘裁判』で語る(第四回:マルグリットによるバタフライ・エフェクト)

ごきげんよう。雨宮はなです。
前回からだいぶ間が空いてしまいましたが、今回は「マルグリットによるバタフライ・エフェクト」について語ります。

今回はシーンに言及したり、史実から思考を巡らせるものではなく、随筆にちかい文章ですので好みでない方は前回までで完結としてください。
※ここから先はネタバレを含みますので、ご了承いただける方のみ読み進めてください。

バタフライ・エフェクト

蝶の羽ばたきがハリケーンを起こすことにつながる…この事象「バタフライ・エフェクト」が唱えられてずいぶん経ちました。そのものずばりのタイトルを付けた映画作品も、それを要素に組み込んだアクションゲームも普及し、比較的知られることになった単語のひとつでしょう。
作品を鑑賞し帰路につきながら私は思いました。

「もし、彼女が声を上げなかったら現代はどうなっていたか?」

マーガレット・サッチャーが政界に踏み込んでくれていなかったら、ルース・ベイダー・ギンズバーグが差別解消に尽力してくれていなかったら、イギリスで婦人参政権を求めて闘った名もない女性たちがいなかったら…。そんな映画が数多くみられるようになってきたけれど、そもそも、彼女たちが声を上げることになったきっかけや要素がマルグリットに繋がったとしたら?マルグリットはこのような問題を考えるための大きなバタフライ・エフェクトを起こしたのではなかったのかと、そう思えてならないのです。

理想の状態にはまだほど遠いけれど、マルグリットが起こしたバラフライ・エフェクトは時を超え、海を越え、多くの様々な女性を助けることに繋がっているのではないだろうかと思うと「彼女が声を上げなかったら」のパターンはまるで想像がつきませんでした。ひょっとしたら、別の誰かがマルグリットの代わりの働きをしたのかもしれない、けれど現れないことも考えられるとなるとその場合は…。
不便や対等でないものごとは多くあれど、それでもまだこれで済んでいるうえ改善に向けて動こうとする社会にある現段階での幸せを、マルグリットに感謝せずにはいられないのでした。

現代はマシになってる?

映画を通して当時と現代を比べると、それでも少しは進歩していますが…。今回のテーマにおいて、今も昔も実はそんなに大して変わらないなぁと感じてしまう部分が多くありました。
特に裁判のシーンは少なからず法律を勉強した身として許せないものがいくつも重なっていて、心境はなかなか荒れていました。

2021年は女性への性差別を浮き彫りにし、真正面につきつけるような作品が多く見受けられたように思えます。そこまで多くの新作をタイムリーに観られなかった私でさえ、『プロミシング・ヤング・ウーマン』『sns 彼女たちの10日間』『最後の決闘裁判』『ラストナイト・イン・ソーホー』と4本は観ることになったのですから。

本文中に例として挙げた3本の映画を紹介します。
あらすじや映画情報はWikipediaや公式に任せるとして、個人的におすすめな理由とともに簡単に紹介します。

バタフライ・エフェクトを感じる映画1
『マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙』

書籍やほかの映画を知らないせいかもしれませんが、私にはサッチャーがキツい女には見えませんでした。誰よりも人間らしく、ただただ不器用な人に見えました。ただ、母親に向いていないのは確かですけど。政治と女性だけでなく「老い」を見つめるのに良い作品です。

バタフライ・エフェクトを感じる映画2
『ビリーブ 未来への大逆転』

人生で初めてのオンライン試写会で観た作品でした。予告編にもある娘の「未来の私のために闘って」というセリフや「男は料理ができないというのは性差別だ」「そのとおり、君(主人公、女性)もできない」という掛け合いなど、家族とのやりとりに和みつつ今より酷いアメリカにおける性差別を眺めることができる作品です。

バタフライ・エフェクトを感じる映画3
『未来を花束にして』

イギリスで「女性に選挙を!」という運動があったのは子供のころからなんとなく知っていました。『メリー・ポピンズ』に出てくる子供たちの母親は女性の選挙権を得るための運動に参加している女性のひとりでしたから、そのような描写があったのです。そんな、名もなき女性たちに焦点を当てたのがこの作品です。先導したり、新聞に名前が載るような女性はもちろんいましたが、この運動自体は名もなき女性たちの戦いなのだと改めて思い知ることになります。

さいごに

メリル・ストリープは紹介した3作品のうち2作品に出演されていて、どちらもリーダーの役割であることから、そのような求められ方をしているのかなと感じました。繊細な女性を演じたりもするけど、基本的には芯の強い女性を演じることが多い女優さんですよね。

最近では同性愛を扱った作品や、作品の中に同性愛がなじんだ作品が増えてきたことですし、今後のトレンドとして「男性への性差別」「男性を強姦する」を扱った作品が上がってくるのではと思っています。そうしてやっと、「性差別や性被害に男も女も関係ない」ことを受け入れる人が増えるのだと。

最後まで読んでくれてありがとうございます。
ではまた次の記事で。ごきげんよう。

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