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『牛久』を観て、日本人であることを恥じた。

ごきげんよう。雨宮はなです。
今回は久しぶりに作品の紹介をします。『牛久』というドキュメンタリー作品です。これは、老若男女問わず、すべての国民が鑑賞するべき必須課題ともいえる作品だと、私は思いました。

鑑賞を終えたあとは、恥ずかしさと申し訳なさでいっぱいでした。

作品との出会い

名画座を観に行ったキネカ大森でのことです。ずらりとならぶフライヤーの中にそれはありました。

”おもしてなし”の国、日本─?
この国の”偽りの共生”が暴かれる

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こちらを見つめてくる5人の目元とキャッチコピー、それにタイトルと少々の映画情報。至って簡素なつくりのフライヤーから、なぜこんなにもエネルギーを感じるのだろう。ベタ塗の背景に白の明朝体、そこに目元だけの写真。暗いようで重いようで、ほんの少し明るく感じるのはなぜだろう。

私はもうずっと、日本という国に対して疑問を抱いています。それに、「全く良い国ではない」と思っています。そんな私だから、「”おもしてなし”って、本当に?」と問いかけるようなキャッチコピーに「そう、そのとおり!」と不謹慎にもわくわくした気持ちさえありました。今となっては、そんな自分も本当に恥ずかしい人間だと反省しています。

現代のアウシュヴィッツ

東日本入国管理センターなんて名前がついていますが、私は国営の拷問施設にしか見えませんでした。肉体的にも精神的にも追い込んで、収容している人たちを見下している。経験したことのない私が言えることではないのでしょうが、私はあの場所がアウシュヴィッツ収容所に見えました。センターの従業員たちはナチス党員に見えました。もちろん、上層部のような教養はあるけどよろしくない方向に突っ走ったタイプではなく、権力をかさに自分を偉いと思い込んでいる下っ端の方です。

「暴れないか!」「おとなしくするか!!」「静かにしろ!」
「面会者に手紙は渡せないよ。前はできなたんてありえない。(嘘)」
「訴えればいいよ。弁護士に話せばいい」

収容している人たちを怒鳴りつけ、訴えを適当に流し、高を括ってせせら笑う。いつの時代の人間かと。どんな教育をされたらそんな人間になるのかと。気持ち悪いし、不思議でなりませんでした。そんな非人道的な人間の給料を払うのに、納めた税金が使われるなんて不本意極まりない。

監督者としての勉強も訓練もしていないのがまるわかりで、収容された人たちの命が危ないシーンも何度も写されました。こんなのと同じ日本人だなんて、本当に恥ずかしい。そして何より、申し訳なかったです。

SDGsより先にやることがある

SDGsの課題のひとつに数えられるのかもしれませんが、そんなかっこつけた、漠然としたものよりもすぐにとりかかれる、とりかかるべき課題がありました。予告編にもあるとおり、作品中には国会の様子も組み込まれており、お偉方は「専門家を呼んで、慎重に、進めたいと思っています」という旨を繰り返すばかり。”早急に”行うべき内容だという主張はまるで伝わっておらず、その決断が何人殺すことになるのかまるでわかっていないようでした。

以前、派遣先でお世話になった会社の従業員教育で「SDGsについて考えよう。業務でできるものはなにがあるか」というワークショップが開かれました。そこでは従業員たちが「〇〇という仕事を全うすることが顧客満足につながり、それは××という課題解決になり、△△というSDGsの課題解決に繋がっています!なので自分はそこを意識してがんばります!」というような意見発表を行っていました。それはそれで重要なのでしょうが、そんなことよりももっとすぐにやるべき大切なことがたくさんあるだろうと私は思っていました。そしてこの『牛久』で明らかにされた問題はまさしくそれなのです。

収容された人たちにしかるべき対応を迅速にとること。書類を提出させて、適当に却下するのが東日本入国管理センターの仕事ではないはずです。

私たちに何ができるか

今はコロナの関係で施設の運営規模を縮小する目的で仮釈放され、施設の外に出られてはいるようです。ですが、彼らは生活保護を受けることも就労をすることもできません。どうやって生きろというのでしょう?コロナが落ち着けば、また施設に収容されて心身の健康からは程遠い環境におかれます。

この問題を知らないままでいるのも、知ったのに改善しようとしないのも、入国管理センターの人間と同じ。そんな恥ずかしい人間のままいてはいけません。収容された彼らが入国管理センターで人生を無駄遣いしなくて良いように、人として生きてもらえるようにするため、変える必要があります。

政治家でも入国管理センターの従業員でもない私たちに何ができるか。まずは、この問題を知ること。次に、広めること。そして、声に出すことです。おもてなしなんて考えなくて良い。人に人として接するだけです。日本人とか外国人とかわけるまえに、相手を「ひとりの人間だ」と認識するところからです。

さいごに

作品について細かく触れるのはまた別記事でと考えています。紹介したい協力者たちや彼らの言葉、エピソードがたくさんあります。すべて文字起こしして書籍化したいくらいです。

上映館は決して多くありませんが、全国の劇場で順次公開されています。少し足をのばせば観に行ける、ということがわかったらぜひ足を運び、目の当たりにしてください。

最後まで読んでくれてありがとうございます。
ではまた次の記事で。ごきげんよう。

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