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引きこもりを外に出す映画『ヘアスプレー(2007)』の魅力、4選!

ごきげんよう、雨宮はなです。
落ち込んだときには元気になれる映画か、むしろ暗い映画を観る癖があるのですが、先日は「元気になれる映画を観る」タイミングでした。
Blu-rayディスクで持っているほど大好きな『ヘアスプレー』です!

この記事では私が感じるヘアスプレーの魅力を4つ紹介します。

1.’60年代の、衣装!音楽!振付!!

「ママ、60年代へようこそ!」とトレイシーが歌うことでもわかるように、時代は黒人差別ゴリゴリの1960年代です。オープニングに出てくる新聞の日付でも時代を確認することができます。

映画作品なので多少の誇張はあるのでしょうが、その時代をみるなら女性をみるのが一番ですね。膨らませてセットした「ビッグ・ヘア」、腰で絞り裾を広げたラインのドレスはまさしく’60年代。ドレスはカラフルで華やかで、襟のデザインまで可愛いのが特徴ですね。カチューシャ、カーディガン、バレエシューズと組み合わせると本当に可愛いです。

ダンスの振付は、その時代に実際にあったステップで構成されているそうです。たしかに、ヒップホップやトゥウォークのような動きはありませんでした。
主人公がオーディションを受けるシーンで「キックして、マンボ」と説明される個所は英語では「マッシュポテト」と言われています。これは’60年代によく使われた、代表的なステップの名前なんだとか。振付にも「その時代にあるかどうか」や流行があるのだということを初めて知りました。

2.脇役からアンサンブルまで、魅力的な登場人物たち

主人公やその周囲に魅力的な人物がいるのは、当然といえば当然のこと。ただ、この作品のすごいところは、ほんの3シーンしか出てこなくても、名前も台詞もなくても魅力的な人物たちで作品ができていることにあります。
私がぜひ注目して欲しい人たちと登場シーンを紹介します。

ペニー(主人公の親友)の母親
敬虔な…というよりは行き過ぎたと言えるキリスト教徒である彼女はとてもミステリアスな女性です。ぜひスピンオフを作って欲しいくらい。
初登場は主人公の自宅兼クリーニング店に、自分が出したペチコートを取りに来たシーンです。主人公の母でありクリーニング店の主であるエドナに「あなたがペチコートにつける汚れは落ちにくいのよ!」と指摘されてしまします。”石で強くこすらないと落ちない”汚れって…?
そして、夫が出てきません。ですが、ペニーに向かって「あの人が出てきたら、私より厳しいわよ!」と怒鳴りつけているので生きてはいるし、いわゆる”おつとめ”中なのかなと推測ができます。
他にも、自分の娘に向かって「悪魔の子!」と怒鳴ったり、海軍もびっくりの緊縛技術を持っています。彼女がどんな人生を歩んできたのか、何を考えているのか…。なんともミステリアスな女性です。

リンクのバックコーラスたち
パーティーのシーンにだけリンク(ザック・エフロンが演じる、主人公の片想い相手)のバックコーラスが出てきます。あまり長時間映るわけでもないし、ひょっとしたら映像に映っている彼らと実際の声の主は違うのかもしれません。ですが、一本のマイクに笑顔で楽しげに、すてきな低温ヴォイスでコーラスをいれる彼らはとても魅力的に見えます。

ミスター・ピンキーのお店にいる肥満女性たち
「その肉付きでよくそんなに動けますね?!」と驚かされます。どうしても他の痩せたダンサーさんたちに比べれば動きが硬くなったり、可動域は狭くなるのですが、それでも肉付きを感じさせない軽やかさやピシっとした動きは素晴らしいものです。主人公の衣装替えが終わり、道を開けて彼女を通すシーンが個人的には一番かっこいいと思います。スカーフを持った手を広げながら道を開け、主人公を送り出す寸前の1カウントで内側の腕を腰にぴっと当てるのです。その動きのぱきっとした感じや、揃い具合が本当に素晴らしい。ぜひその一瞬を気にしてみてほしいです。

3.ベテランから若手まで、銀幕スター勢ぞろい!

さらっと贅沢仕様なキャスティングがされています。

ジョン・トラヴォルタ
クリストファー・ウォーケン
ミシェル・ファイファー
クイーン・ラティファ
ジェームズ・マースデン
ザック・エフロン

いちいち紹介していたら記事の長さが倍になってしまいますが、何をどう見ても贅沢すぎるキャスティングです…。個人としては、ミシェル・ファイファーが20年ほど前なのだろうなと思えるヘアメイクでチュチュ付きのレオタードで踊るシーンに「この人は一体、おいくつなんだ…?」と度肝を抜かれました。

クリストファー・ウォーケンはこのMVで知っているだけでしたが、「あれ?あの踊るおじさんじゃない?」とすぐに気づいた記憶があります。
もし特典映像を観る機会があればマストでみてほしいのは、ザック・エフロンの練習着姿です。髪を下ろしてて少し幼さがあって可愛いし、骨格が立派で肩幅だけでもうかっこいいです。

4.一緒に踊るのもダメ?!差別の歴史にふれる

2020年、黒人男性が警察官に窒息死させられた事件が全世界を駆け巡りました。

未だに差別が色濃く残るこの世界ですが、ほんの半世紀前はもっと酷い状態が「あたりまえ」として広がっていたのです。例えば、オープニングで写る新聞記事のタイトルは”黒人男性が大学への入学を拒否された”というものです。試験に通っても”黒人だから”という理由で入学を拒否されるような時代だったことがわかります。

また、パーティーのシーンで「貴方が教えてくれた振付で一緒に踊ろう!」と無邪気に提案する主人公に対してシーウィード(主人公の友人、黒人男性)は「白人と一緒に踊っちゃいけないんだ」と返します(その後も”ブラック・デー”がなくなると知った際に主人公が「一緒に踊ろう」と提案して同じ返事をされます)。「君が俺の振付で踊ればいいよ」「いいの?ありがとう!」と会話をして二人はハグをしますが、これは現実で起こったら即アウト案件だったそうです。

授業態度が悪かった罰が”黒人クラスで居残り授業に出る”というのも、「あの空間にいなくてはならないほど、いけないことをした」という意味なのだそうで…。私は全く知らず、「ここにいる黒人生徒は授業を聞かないんだな。学級崩壊じゃん」くらいにしか思っていませんでした。

一見、明るくて元気にそこそこ平和的に無差別への大きな一歩を実現させた物語というだけに見えますが、作品中のエピソードを切っ掛けに当時のことを調べるととんでもなく重要な歴史のお勉強になる題材でした。
主人公の台詞に「あの人は自分と違う人を排除したいのよ。黒人や黄色人種や…私みたいな、太った人をね」というものがあります。ここで言う”あの人”とはベルマ(番組担当、テレビ局部長)のこと。白人で、金髪で、スタイルが良くて、富裕層…”アメリカofアメリカ”というキャラクターである彼女の考えにアメリカの性質が上手く投影されています。

おわりに

予想以上に文章量が多くなって、書いている本人がいちばん驚いています。ただ、それでも紹介しきれない内容がありまして…後日、番外編として別記事にしようと思います。もしよければ、引き続きご覧ください。

今回も最後まで読んでくれてありがとうございます。
ではまた次の記事で。ごきげんよう。

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