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【試写レポ】『オードリー・ヘプバーン』特別試写会【28_2022】

ごきげんよう。雨宮はなです。
今回はドキュメンタリー映画『オードリー・ヘプバーン』を鑑賞してきました。フロントロウさん、ありがとうございました。

今回は作品についてとイベントについて語ります。
※今回は公開前作品を扱いますが、ドキュメンタリーのためネタバレするものがないとして作品に触れています。

”アイコン以上の”

ファンにはおなじみの内容

原題は『AUDREY MORE THAN AN ICON』、直訳で「アイコン以上のオードリー」です。いつまでもアイコンとして君臨する彼女を「アイコンじゃない。彼女は人間だ」と伝えたい人たちがこの映画を作ったのだと私は思いました。しかし皮肉なことに、私には「スクリーンのアイコンから、ユニセフのアイコンになったのだな」と見えてしまいました。オードリーはアイコンという立ち位置から動けなかった人なのだと、そう思えるつくりでした。

彼女の「人間」を感じる”闇”

親からの愛情に枯渇した人だと今まで以上に感じさせられました。母親には外見を貶され、父親に捨てられたうえ再会を喜ばれないのは、「子ども」にとって耐えられない事実だったことでしょう。

「もっと目が大きかったら。顔が四角くなかったら。もっと背が低く、足が小さかったら…。何もかも変えたい」美のアイコンとして世界中に認められても、幼少期に母親から受けた否定が理由でこんな認識で固定されてしまうのは本当に恐ろしいことです。父との再会後「彼は自分の要求に応えてくれない。でも、許そう」なんてセリフが出てきたときは、そう思わないとくじけてしまう可能性があったのではと思わずにはいられませんでした。「子どもとして愛されない」という闇はこんなにも人を人間だと証明するのかと驚きました。そして同時に、親しみを感じました。

「人間」として「本物の生活」をおくる

後でも触れますが、彼女のいう「無償の愛」には疑問を覚えます。ですが、彼女がいくつも興味深いことばを残しているのは事実です。その中でも私が気に入っているのは、「私生活を公表しないのは、本物の生活を送りたいから、人生は一度きり、それは私と家族と子どものためのものです」というもの。

昨今のSNS万歳な人たちからしたら目からうろこでしょうし、まともな神経をしていれば恥ずかしいと感じるはず。時代や文化の違いがあるとはいえ、ひけらかす生活…ひけらかすために用意された生活は「本物の生活」ではないと彼女は言い切ってくれました。このシーンは思わず「そのとおり!」と拍手をしそうになりました。

無償の愛、とは。

キャリア<子育てと家族、という生活

ドル箱女優でありながら、よく引退(休業?)が可能だったなと驚きました。子供たちがある程度大きくなってからは女優業に復帰していますが、何よりもまず子どもが最優先という考えは譲れなかったようです。ただ、私はそこにやはりいびつさを感じてしまいました。

「父にはいつでもそばにいて私を愛してほしかった」
「子どもには父が必要」
「愛されないと与えたくなる。そうすることで無償の愛があると信じたかった」

おじょうさん、父親はそばにいたって愛してくれるとは限らないんだよ。いない方が良い父親だっている。愛されたいから愛するのは、果たして「無償」といえる??
あなたは自分の子供を使って生きなおしをしようとしていない?
母親からの愛情は感じなかったの?見返りを求めて接すると、貴方の子どもも愛情を感じずに育ってしまうよ。

心の中で、そう彼女に語り掛けていました。

今の世界を彼女はどう感じるか

体だけでなく魂も飢えることを知っていたオードリー・ヘプバーン。彼女はユニセフ親善大使として世界中を飛び回りながら「現代でこんなことがあってはならない」「子どもたちが空腹ではいけない」「第二次世界大戦で終わったはず、社会は学んだはず」と、それをかなえられない自分たちに腹をたてていました。

そんな彼女がまだ生きていたら、今の世界を見ていたら何を思うでしょうか。どんな発言をするでしょうか。皮膚の色、自分の主張する性別、世界規模の感染症、そして戦争。
特に戦争について、彼女がどんな働きをするのか見てみたかったなという気持ちです。

トークイベント:小原ブラスさん(ゲスト)

鑑賞前は「歴史上の美、時代を超えて継承される美という印象」、鑑賞後は「”人”やったんや…」と感想を伝えてくれた小原ブラスさん。Twitterなネットニュースの見出しではウクライナ情勢へのコメントばかりが起用され、非常に残念でしたが、映画についてもご自身の活動やその理念についても語ってくださいました。

作品の感想

作品には完ぺきではない弱い部分を見せてくれて安心できた。自己との共通点も見つけられた。自分が欲しいものはまず人に与えなければと気づいた。この作品は「ココ!ココ見てー!」というものではなく、人によって学びが違う。そしてそれはオードリーの魅力の量なんです。
生き様だけでなく、ボーっと観ていて大丈夫。ずっとキレイだから。途中でわからなくなったりしたら、ボーっと観てて。

一般社団法人外国人のこども達の就学を支援する会

小原ブラスさんのお話で初めて知ったのですが、外国人の子どもには教育の義務が生じていないそうです。恥ずかしながら、日本で生まれ育っていれば消費税と同じレベルで発生する義務だと思っていました。教育の義務が無いことで何が問題か。

日本語がわからず勉学に励めない子どもは2万人もいるそうです。日本語がわからないため公立の学校では脱落してしまい、かといってインターナショナルスクールは私学でしかも高額のため入学すらままならない。体を使った仕事やアングラな仕事しかできずにギャング化してしまうパターンも多いそうです。

誰かを嫌うと、嫌った方にも困る要素がある。文化を消そうとしたり、ルールが守られなかったり。歌舞伎町キッズのような日本の子どもが抱える問題もあって気にしていられないという声も多いけど、知って欲しい。

オードリーが世界中の子どもたちに手を差し伸べたように、小原ブラスさんもたくさんの子どもに手を差し伸べる人でした。この内容こそ、メディアには拡散してほしかった!

さいごに

私は彼女のいう「無償の愛」を否定しますが、「無償の愛」とは何なのかを考えるのにとても良い作品であることに間違いはないです。不倫されたときの考え方や、3人目のパートナーとの結婚なしの関係など、自立した女性として生きていくために参考にしたいシーンも多くあります。

子どもへの接し方に自分のルーツを見る『オードリー・ヘプバーン』は、5月6日(金)よりロードショー!

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