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2020年読んだ本ベスト3

へいへい2020年が終わるよ!

コロナ下で本がたくさん読めるかと思いきや、緊急事態宣言の時はなかなか冊数読めてなかった。日常があって、初めて本を読む余裕ができるのだなあと痛感した次第です。

さて今年読んだ本は146冊。ちょっと少ないかな。そんな中で、いろんな部門に分けたベスト3を記してみようと思いまさこでございます〜(今年はYouTubeもよく見る年であった…kemioとエミリンがすき。)


ノンフィクション部門

あくまで、今年私が読んだノンフィクションの中で、です。出版年が2020年ではないので注意してね。新しい視野をくれたものが多かったように思うよ。

3位 金敬哲「韓国 行き過ぎた資本主義」講談社新書


映画「パラサイト」から始まり、ネトフリドラマ「sweet home」に至るまで、韓国の映像作品をよく観る機会に恵まれたのですが、ちょこちょこ台詞に「江南に子どもを通わせてる〜」とか「留学してイングリッシュネームがあるのが高等民」みたいな描写があり、ぴんときていなかったところに、補助線を引いてくれた本。

要するに韓国は、凄まじい競争社会であり、入学制度の都合上住む地域が関係してくる、という話。いやはや日本の新卒採用が屁みたいに思えてくる(みんな等しく大変なのにね!)


2位 播田安弘「日本史サイエンス」講談社ブルーバックス


蒙古襲来、秀吉の大返し、戦艦大和は無駄な建造だったのか? について、当時の日本の地形・天候・特徴・必要な資材などをざっくりと数字で算出しながら「後世伝わっているようなことがほんとうにあったのか?」と考察している本。

シンプルに面白い! 

例えば秀吉の大返しにしても、それだけの兵士を動かすには一日20個くらいのおにぎりが必要で、それを賄うにはどれだけの馬が必要で、馬がいるなら馬の餌も必要で……と、言われてみれば確かに! というような考察をしているのがすごく新鮮。

つい歴史の教科書を鵜呑みにしちゃうし、兵士数万人〜とか言われると、いまいちその規模感も分からないまま、ふーんって流してしまうけれど、突き詰めてゆくと凄い数なんだと思う。そしてこの数字は盛ってるな、とかが分かる笑。


1位 ローン・フランク「闇の脳科学 『完全な人間』をつくる」文藝春秋

個人的ナンバーワンはこれ、闇の脳科学。

闇、とかついてると、何となく厨二っぽいけれど、でも読み終えると闇の理由がわかる。

1950年代に、脳に電極をさして、てんかんや、家族が迷惑するほどの暴力衝動を抑えられない人間や、同性愛者(!)の治療を試みた医師ロバート・ヒースのあまりにも後世に残っていない微かな痕跡を辿りながら、現代の脳科学が目指す場所を考察する話。

人格とは単に脳の化学物質の反応にすぎず、外から刺激を与えるor過剰な化学物質の発生を取り除くことで、怒らず、穏やかで、色んなことをエンジョイできる最高の人間を作り上げられる。

人間の人格を作れるということは、冷静で攻撃力の高い兵士なんかも作れるしーーそもそも、怒らず、穏やかで、楽しめる善人が『人間のあるべき姿』なのか? 怒りっぽくて、意地悪で、嫉妬深い人間は、いてはいけないのか?

そもそも、人の人格をいじくることは倫理的に正しいのか? なるほど暴力的な人間の衝動を抑えることは、周りの人間にとっては利益だ。けれどその暴力的な人間の定義って、誰が決めるの? 誰がどうして、誰かの人格を変える権利を持つの? 

……などなど、今後の人類が目指す姿、について考えることができる。七転び八起き! 人と交流して、失敗も成功も楽しんでこ! と言える人間が、あるべき理想の人類ーーなんて、陰キャオタクには地獄でしかない。


小説部門

さてここからはフィクション部門!

今年は豊作ですが! あえて三つ選びます!

3位 アンドリュー・メイン「生物学探偵セオ・クレイ」 ハヤカワ文庫

主人公は生物学者のセオ・クレイ。ある日突然、教え子が殺された!?

「僕学者だし気弱だし、サイコパスな犯人いたらどうしよ(ぴえん」

そんな主人公セオ・クレイが一番サイコパスであった、というある種様式美のようなサスペンス。

とりあえず、死体を嬉々として掘り起こすのは主人公ムーブとしてはいかがなものかと思う。

そんな感想があったかどうかは知らないが、続編『街の狩人』では、セオ・クレイの狂気はちょっぴり(当社比)抑え目。ほんとにちょっとだけどな!

2位 黒澤いづみ「人間に向いてない」講談社文庫

引きこもりの息子が、ある日奇病により虫になっていた。

というところから始まる不条理小説……と見せかけて、絶妙なラインでバッドエンドを乗り越えてゆく作品。家族という存在の、愛おしさとやるせなさと鬱陶しさがほんとにリアルなバランスで描かれている。

私がうぐうっとなったのは以下。

p323 家族が変異者に対して抱いている感情とは最早、殺意ですらないのかもしれない。あるのは問題を切り離したいという辟易とした想い、自分の人生の足を引っ張る元凶を処分したいという想いなのかもしれない。

同じ作者の「私の中にいる」もよかった。こちらは虐待と、母娘と、転生の話。安易な理解に落ち着かないのが、今の作家の筆力という感じがします。

1位 エイモア・トールズ「モスクワの伯爵」早川書房

主人公は、高級ホテルから一歩でも出たら殺されることになっている、アレクサンドル・ロストフ伯爵。

彼が手持ちの金貨、家具、そして伯爵としての誇りをもって過ごす、ホテル内の人生の物語。

ホテルの外に出られない伯爵。

コロナによって外出禁止となった私たち。

と、安易に重ねるのは早計だけれど、少なくとも家の中で不満ばかり言うのは見苦しい行為だな、と感じるようになる。背筋を伸ばし、先が見えなくても、本や音楽や酒、そして人々との会話と己の領分を守ることで、人生を律してゆく伯爵の姿が小気味良い。

私が最高に好きなのは、色んなことがうまくいかなかった伯爵が、ある計画を断念するシーン。

モスクワの美しい夏の朝、勤勉な蜜蜂、そして故郷を思わせるにおい。そんな光景がありありと浮かぶ、これはとても美しい小説だ。



以下は、ベスト入りしなかったけれど面白かった本を、ジャンル関係なく書いていきまーす。

門田充宏「風牙」東京創元社

瀬戸晴海「マトリ 厚生省麻薬取締官」新潮新書

室生犀星「蜜のあはれ/われはうたえどもやぶれかぶれ」講談社文芸文庫

多和田葉子「旅をする裸の眼」講談社

柚月裕子「凶犬の眼」角川書店

梶谷懐・高口康太「幸福な監視国家・中国」NHK新書

池田譲「タコの知性 その感覚と思考」朝日新書

梯久美子「サガレン 樺太/サハリン境界を旅する」角川書店

竹下大学「日本の品種はすごい」中公新書

チママンダ・ンゴズィ・アディーチェ「なにかが首のまわりに」河出文庫

林芙美子「下駄で歩いた巴里」岩波文庫

小川一水「ツインスター・サイクロン・ランナウェイ」ハヤカワ文庫

吉川英梨「ブラッド・ロンダリング 警視庁捜査一課殺人犯捜査ニ係」河出書房新社

西崎憲「蕃東国年代記」創元推理文庫

櫻木みわ「うつくしい繭」講談社

周浩輝「死亡通知書 暗黒者」ハヤカワポケットミステリ

小谷田奈月「神前酔狂宴」河出書房新社

遠藤遼「平安・陰陽うた恋ひ小町」宝島社文庫

若林正恭「表参道のセレブ犬とカバーニャ要塞の野良犬」文春文庫

吉川英梨「警視庁53教場」角川文庫

柴田勝家「アメリカン・ブッダ」ハヤカワ文庫

小塩真司「性格とは何か より良く生きるための心理学」中公新書

森田季節「ウタカイ 異能短歌遊戯」ハヤカワ文庫

布施哲「先端技術と米中戦略競争」秀和システム

岡田暁生「音楽の危機 第九が歌えなくなった日」中公新書


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