見出し画像

猫型ロボットによる報告書1

 ニニ世紀から一九六九年へと移動してから約半世紀が経った。ぼくが居た時代の日常とは程遠いが二◯二◯年の暮らしは実に「未来的」だ。
 暮らしの変化とはある日突然に訪れるものではない。新しい技術がうまれ、それが生活の一部として取り込まれる。新しい製品はときに従来の必需品をお役御免にする事もある。その最たるものは携帯式電話機である(添付資料B)。

 進歩とは、新しい製品が家に一つ増える事ではない。ぼく達の二一一二年での暮らしといったら、一つの製品に一つの機能が備わった道具が膨大に発明され、それらは小型軽量化の改良は行われない。なぜなら四次元という収納場所に頼っているからだ。

 ぼくは、ぼくが経験した一九六九年と二◯二◯年と二一一二年は、一つの線で結ばれていない事を確信している。ぼくが訪れたのは過去ではなく、並行世界だ。このまま二一一二年を迎えてもぼくの家はないだろう。妹も、居ないだろう。携帯式電話機に備わる写真機能の向上により本日、デジタルカメラをメルカリに出品した。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?