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シェブロンの成長戦略: 最新決算とシェールオイル・ガスの取り組み

シェブロンは、最新の決算で予想を上回る業績を発表し、シェールオイルおよびガスの生産戦略が功を奏していることを示しました。特に、パーミアン盆地での生産増加が大きな要因となっています。このnoteでは、シェブロンの最新決算情報とシェールオイルおよびガス戦略が、持続可能なエネルギー未来に向けてどのように貢献しているかを見ていきましょう。

創業は1879年

ロサンゼルスの北

シェブロンの歴史は、1879年に設立されたパシフィック・オイル・カンパニー(Pacific Coast Oil Company)に始まります。この会社は、カリフォルニア州ロサンゼルス近郊で石油を発見したドイツ出身の実業家、ドミニク・ミノール(Dominick M. Menocal)によって設立。最初の油井(ゆせい)は、ロサンゼルスの北に位置するピコキャニオンで掘削されました。

名前の由来

「シェブロン(Chevron)」という名前は、軍事や航海で使われる「シェブロン(山形)」のシンボルに由来。この名前には、企業の強さと安定性を象徴する意味が込められており、現在でもその精神が企業文化に根付いています。「シェブロン」という言葉自体は、V字型や山形の模様を指す言葉で、同社のロゴマークにも使用されています。この特徴的な形状が、ガソリンスタンドなどで目立つブランドシンボルとして機能し、消費者に親しまれてきたことが、社名採用の背景にあると考えられます。

合併の歴史

シェブロン(Chevron Corporation)は、以下のような経緯を経て発展してきました。

創業からスタンダード・オイルへの統合

  1. 1879年 - 創業

    • シェブロンの前身である「パシフィック・コースト・オイル・カンパニー」がカリフォルニア州で設立。これは、米国西海岸で最も古い商業石油会社の一つです。

  2. 1906年 - スタンダード・オイル・カンパニー・オブ・カリフォルニア

    • ジョン・D・ロックフェラーが創設したスタンダード・オイル・カンパニーの一部として、パシフィック・コースト・オイル・カンパニーは「スタンダード・オイル・カンパニー・オブ・カリフォルニア(SOCAL)」に改称されました。これにより、シェブロンはスタンダード・オイルの強力なネットワークの一部となりました。

独立と発展

  1. 1911年 - スタンダード・オイルの解体

    • 反トラスト法訴訟により、スタンダード・オイルは分割され、SOCALは独立企業として存続しました。これにより、シェブロンは自らの運営と成長を進めることができました。

  2. 1930年代 - シェブロンブランドの使用開始

    • SOCALは、一部の州で「Chevron」というブランド名を使用。後に全米で広く認知されるブランドとなります。

合併とブランド統一

  1. 1984年 - ガルフ石油との合併

    • シェブロンは、セブン・シスターズ(石油メジャー7社)の一角であったガルフ石油と合併。これにより、会社は規模と資源を大幅に拡大し、世界有数のエネルギー企業の一つとなりました。

  2. 1984年 - シェブロンへの社名変更

    • ガルフ石油との合併を機に、SOCALは社名を「シェブロン」に変更し、ブランド名を統一しました。これにより、ブランドの一貫性と市場での認知度が向上しました。

シェブロンは、このような歴史を経て、現在のグローバルなエネルギー企業としての地位を築いてきました。

ビジネス概要

シェブロン(Chevron Corporation)は、世界的なエネルギー企業であり、石油および天然ガスの探査・生産、精製・販売、化学製品の製造など多岐にわたる事業を展開。シェブロンのビジネスは主に川上(アップストリーム)、川下(ダウンストリーム)、およびその他の部門に分けられます。

川上部門(アップストリーム)

  • 探査と生産: シェブロンは、石油および天然ガスの探査、開発、生産に従事しています。これには陸上および海上での探査プロジェクトが含まれ、特に深海掘削が重要な活動の一つです。

  • LNG(液化天然ガス): LNGの開発と生産にも積極的に取り組んでいます。オーストラリアのゴーゴンプロジェクトやウィートストーンプロジェクトが代表的な例です。

川下部門(ダウンストリーム)

  • 精製: 原油をガソリン、ディーゼル、ジェット燃料、その他の石油製品に精製するための施設を運営。これらの施設は、世界中の主要市場に位置しています。

  • 販売とマーケティング: 精製された製品を小売および卸売市場に販売しています。これにはシェブロンおよびテキサコのブランドのガソリンスタンドネットワークが含まれます。

  • 潤滑油と添加剤: エンジンオイルや工業用潤滑油、燃料添加剤などを製造および販売し。

その他の部門

  • 化学製品: シェブロン・フィリップス・ケミカル・カンパニー(Chevron Phillips Chemical Company)を通じて、オレフィンやポリエチレンなどの化学製品を製造しています。

  • テクノロジーとサービス: エネルギー効率の向上、新エネルギー技術の開発、および持続可能なエネルギーソリューションの提供に注力しています。

  • 電力事業: 再生可能エネルギーやガス火力発電などを通じて電力事業にも関与しています。

シェブロンは、これらの多様な事業活動を通じて、グローバルなエネルギー需要に応え、持続可能なエネルギーソリューションの提供を目指しています。

日本との関係、シェブロン

  • 主に「Chevron Oronite」ブランド名で、燃料および潤滑油添加剤の製造と販売。

  • 静岡県御前崎のブレンド工場は、アジア太平洋地域における自動車およびパワートランスミッションオイルのセンター・オブ・エクセレンスでもあり、グローバルな技術開発の拠点となっています。

  • 三井石油開発(MOECO)との提携により、北海道での地熱発電技術のパイロットテストを実施、日本の低炭素化とネットゼロへの移行を支援。

  • シェブロンは日本市場でのLNGビジネスの基盤を強化のため、北海道ガスとの間で液化天然ガス(LNG)の供給契約を結び、2022年から5年間にわたり約50万トンのLNGを北海道に供給する予定。

シェール革命

シェール革命については、エクソンモービルのnoteで解説しています。↓

ここでは、シェールオイルと従来の原油との違いを見ていきましょう。

シェールオイルと従来の原油生産の違い

米国の原油生産においては、シェールオイルと従来の原油生産の区別が重要視されています。

  1. 技術と抽出方法:

    • シェールオイル: 水圧破砕法(フラッキング)と水平掘削技術を使用して、地下のシェール層から抽出されます。これにより、従来の掘削方法では採取が困難だった原油が採取可能になります。

    • 従来の原油: 伝統的な垂直掘削技術を使用して、地下の貯留層から直接抽出されます。

  2. 生産地域:

    • シェールオイル: バッケン層(ノースダコタ州、モンタナ州)、パーミアン盆地(テキサス州、ニューメキシコ州)、イーグルフォード層(テキサス州)などのシェール層が主要な生産地域です。

    • 従来の原油: テキサス州、アラスカ州、カリフォルニア州、ルイジアナ州などの従来の油田が主要な生産地域です。

  3. 経済性と環境影響:

    • シェールオイル: 開発コストが高く、価格変動に敏感です。また、水や化学物質の使用が多いため、環境への影響が議論されています。

    • 従来の原油: 長期的に安定した生産が可能で、コストも比較的低いですが、新たな大規模な発見は少なくなっています。

  4. 生産量:

    • 米国の原油生産量の大部分は、シェールオイルが占めるようになってきています。特に、2010年代以降のシェールブームによって、生産量が急増しました。

このように、米国の原油生産においては、シェールオイルと従来の原油生産の区別が明確にされており、それぞれの特性や影響に応じた政策や投資判断が行われています。

シェブロンとシェールオイル、ガス

シェブロン(Chevron)は、シェールオイルおよびガスの開発に積極的に取り組んでいます。

  1. パーミアン盆地の開発:
    シェブロンは、アメリカのパーミアン盆地での生産を大幅に増加。2023年には日量867,000バレルを記録し、2025年には100万バレルに達することを目指しています。この地域では、掘削速度の向上や横井戸の延長といった技術革新が生産性の向上に寄与しています。

  2. 技術革新と環境対策:
    シェブロンは、水平掘削や多段階水圧破砕(フラッキング)技術を駆使してシェールオイルとガスの生産を達成。これにより、石油とガスの回収率が大幅に向上しています。また、環境保護にも力を入れており、土地の修復や環境影響の最小化を図っています。

  3. カナダのドゥヴァーネイ・シェールガス資産の売却:
    シェブロンはカナダのドゥヴァーネイ・シェールガス資産を売却する計画を進めています。この資産は、日量約40,000バレルの石油とガスを生産しており、同社のグローバルな資産ポートフォリオの再編の一環として売却される予定です。

  4. Hess社の買収:
    シェブロンは、Hess社を530億ドルで買収し、バッケンシェールの生産を強化。この買収により、同社のシェール資産がさらに拡大し、今後の生産増加が期待されています。

About シェブロン

  • 創業:1879年

  • 上場:1921年

  • セクター:エネルギー(Energy)

  • ティッカー・シンボル:CVX

  • 株式時価総額:2,866億ドル(約45.8兆円,7/3時点)

  • 年間の売上高:2,009億ドル(2023年12月通期)

  • ライバル企業:エクソンモービル(XOM)

  • 日本での同業種:ENEOS ホールディングス(5020)

  • 従業員:45,600人

  • 本社:カリフォルニア州

決算ハイライト

  • *報告利益:55億ドル
    -川上部門:52.4億ドル
    -川下部門:7.8億ドル
    -その他:▼5.2億ドル

*報告利益(reported earnings):企業が公式に発表する利益。通常、特定の会計基準に基づいて計算され、包括的な利益として報告されます。一方、オーガニック利益は、通常の事業活動から生じる利益を示し、非恒常的な項目を除外して計算されます。例えば、シェブロンの調整後利益が54億ドルである場合、これがオーガニック利益としての指標になります。

シェブロン(CVX)」は2024年第1四半期において、報告利益55億ドル、純利益54億ドルを計上。前年同期の66億ドルに対して減少したものの、為替の影響を受けて8500万ドルの増益。PDCエナジーの買収やパーミアン盆地での強力な操業により、米国の純石油換算生産量は、前年同期から35%増加しています。

"当四半期も堅調な操業と財務実績を達成し、株主の皆様に優れたキャッシュ・リターンをお届けすることができました。また、カザフスタンや東地中海、米国での主要プロジェクトのマイルストーンを達成しています。

マイク・ワース会長兼CEO

伝統の株主還元策

37年連続増配

2024年第1四半期のシェブロンの*資本利用効率(ROCE)は12%を超え、第4四半期からの配当金を1株あたり8%増やし、約30億ドル相当の自社株買いを実施しました。

*ROCEは 企業が株主および債権者から調達した資本をどれだけ効果的に使用しているかを評価するために使われます。企業のパフォーマンスを評価するための重要な指標であり、特に資本集約型の産業(例えば、製造業やエネルギー業)でよく用いられます。

配当利回りの目安

  • 配当実績:1.63ドル

  • 年間配当:1.63ドル×4=6.52ドル

  • 株価:156.71(7/3終値)

  • 配当利回り:6.52/156.71×100=4.16%

*手数料、税金は考慮していません。また購入時の株価によって、配当利回りは変わってきます。

まとめ

「シェブロン(CVX)」は、その歴史とブランド、そして最新の決算内容からも、今後注目すべき企業であることがわかります。特に、持続可能なエネルギーへの転換と株主還元の両立を図りながら成長を続けている点は、投資家にとって魅力的なポイントです。

シェブロンは、シェールオイルおよびガスの生産において、技術革新と効率向上に重点を置きながら、環境への影響を最小限に抑える取り組みを続けています。同社は、シェール資源の開発を通じて、持続可能なエネルギー供給の実現を目指しています。これらの取り組みは、シェブロンがエネルギー市場での競争力を維持し、持続可能な成長を遂げるための重要な戦略となっています。

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*ご注意-このnoteは企業IRや直近のニュース等を参考に、一般的な情報提供を目的として書いています。投資家に対する投資アドバイスではありません。投資における最終意思決定は、ご自身の判断でお願いいたします。またデータ等の数字は、細心の注意を持って記載していますが当noteに載せている情報に基づく行動で損失が発生した場合においても、一切の責任を負いかねますので、ご了承ください。





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