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エクソンモービルの最新決算から見る4つの事業部門の成果と未来


エクソンモービルは、エネルギー業界におけるリーダーとして、持続可能な未来に向けた多角的な戦略を展開しています。最新決算発表では、川上部門、エネルギー製品部門、化学製品部門、特殊製品部門の4つの主要事業の成果が明らかにされています。このnoteでは、米国のシェール革命を簡単に解説。そしてエクソンモービルの最新決算をもとに再生可能エネルギーへの取り組みやグローバル展開の進捗についても見ていきます。

創業と初期の歴史

  • 創業年: エクソンモービルの起源は、ジョン・D・ロックフェラーによって1870年に設立されたスタンダード・オイルに遡ります。

  • スタンダード・オイルの設立: 1870年、ロックフェラーとそのパートナーたちはスタンダード・オイル・カンパニーを設立し、石油の精製、輸送、販売を行います。

  • 独占的地位の確立: スタンダード・オイルは急速に成長し、19世紀後半には米国内の石油精製の90%を支配するまでに成長します。

冷酷だった、ロックフェラー

ロックフェラーは16歳のときにクリーブランドのドライグッズ店で簿記係として働き始め、すぐに昇進するほど彼は非常に優れた簿記能力を持っていたとされ、この時期の経験が、後のビジネスにおける財務管理能力の基盤となりました。ロックフェラーは極めて倹約家であり、若い頃から節約を心がけ、一日の支出を細かく記録し、無駄遣いを避けることに努めていたというエピソードがあるほどです。

一方で、ビジネスにおいては、彼は競争相手を圧倒するために、独占的な戦略を巧みに駆使し、価格を一時的に下げて競争相手を市場から追い出し、その後、独占的な地位を確立して価格を引き上げるという手法を用い、小規模な石油会社を倒産に追い込むなど、冷酷な面も持ち合わせていました。

また、鉄道会社との秘密協定を結び、競争相手よりも有利な輸送コストを確保しました。彼は市場での競争を不正に歪め、これらの協定は後に独占禁止法違反として問題視されるほどでした。さらに、労働者に対しても冷酷であり過酷な労働条件や低賃金で働かせることが一般的であり、労働者の待遇は非常に悪かったとされています。

ジョン・D・ロックフェラーの成功には、彼の冷酷さと計画的な戦略が大いに寄与しました。彼のビジネス手法はしばしば倫理的に疑問視されましたが、その当時はスタンダード・オイルの圧倒的な市場支配を支える重要な要素でした。こうして彼はアメリカの石油産業を変革し、世界一の富豪となることに成功しました。

分割とエクソン、モービルの誕生

1911年、アメリカ合衆国最高裁判所は反トラスト法違反としてスタンダード・オイルを34の小さな企業に分割する判決を下しました。この中には、後のエクソンとモービル社も含まれていました。

エクソン(Esso): スタンダード・オイル・オブ・ニュージャージー(Standard Oil of New Jersey)が後にエクソン(Exxon)と改名。

モービル(Mobil): スタンダード・オイル・オブ・ニューヨーク(Standard Oil of New York)が後にモービル(Mobil)と改名。

歴史的事件

1989年のエクソン・ヴァルディーズ号原油流出事故(アラスカ州プリンス・ウィリアム湾で発生)は、環境に大きな影響を与え、企業としての環境管理の重要性が再認識されるきっかけとなりました。

エクソンとモービルの合併

エクソンとモービルは1999年に合併し、エクソンモービル(ExxonMobil)として再出発。この合併は当時、史上最大の企業合併とされました。

エクソンモービルは、その創業から150年以上にわたり、石油産業のリーダーとして多くの歴史的な出来事を経て、現在も世界有数のエネルギー企業として成長を続けています。

シェール革命


シェール革命(Shale Revolution)は、2000年代初頭からアメリカで始まったシェールオイルとシェールガスの大規模な商業生産の拡大を指します。これにより、アメリカのエネルギー自給率が劇的に向上し、世界のエネルギー市場に大きな影響を与えました。

シェールオイルとシェールガスは、シェール層(堆積岩の一種)に存在する油やガス。従来の技術では、シェール層からの採取は困難でしたが水平掘削技術水圧破砕法(フラッキング)の進展により、これらの資源を経済的に採掘することが可能になりました​。アメリカは、シェール革命により近年生産量を大幅に増やし、世界最大の原油生産国となっています。

シェールガス・オイル革命への参入

エクソンモービルは、2010年にXTO Energyを410億(当時のレートで約3.6兆円)ドルで買収し、シェールガス・オイル革命に本格的に参入、この買収により、同社は北米のシェールガス・オイル生産の主要プレイヤーとなります。

同社はシェールガス・オイルを今後の成長戦略の中核に位置付けており、パーミアン盆地での生産量を2027年までに日量100万バレルに増やす計画を立てています。

このように、エクソンモービルはシェールガス・オイル事業を通じて、エネルギー市場での競争力を強化し、収益性の向上を図っています。

持続可能なエネルギーへの取り組み

エクソンモービルは、化石燃料の提供だけでなく、再生可能エネルギーや持続可能な技術の開発にも力を入れています。近年、エクソンモービルは以下のような具体的な取り組みを行っています。

  1. 二酸化炭素の回収と貯留(CCS)技術の開発:
    エクソンモービルは、二酸化炭素の回収と貯留(CCS)技術のリーダーとして知られています。CCSは、二酸化炭素を排出源から回収し、地中に貯留することで大気中への排出を防ぐ技術です。同社は、年間約900万トンの二酸化炭素を回収・貯留しており、これにより大気中の温室効果ガスの削減に貢献しています。

  2. バイオ燃料の開発:
    エクソンモービルは、バイオ燃料の研究にも注力。特に、藻類から作られるバイオ燃料に関する研究を進めており、この技術は従来の燃料に比べて二酸化炭素の排出を大幅に削減できると期待されています。エクソンモービルは、バイオ燃料の商業化を目指して、多くの研究機関や企業と協力しています。

  3. 水素エネルギーの推進:
    エクソンモービルは、水素エネルギーの可能性にも注目。水素は燃焼時に二酸化炭素を排出しないため、クリーンなエネルギー源とされています。同社は、水素の製造、貯蔵、輸送に関する技術開発に投資し、水素経済の発展を支援しています。

  4. エネルギー効率の向上:
    エクソンモービルは、エネルギー効率の向上にも取り組んでいます。最新の技術を駆使して、生産プロセスや設備のエネルギー効率を改善することで、全体的なエネルギー消費を削減し、環境への影響を最小限に抑える努力を続けています。


About エクソン・モービル

  • 設立 1882年

  • 上場1980年

  • ロックフェラーの系譜を引く、6大メジャーの1つ

  • セクター:エネルギー(Energy)

  • ティッカーシンボル:XOM

  • 株式時価総額:5,122億ドル(約82兆円,7/2現在)

  • 年間の売上高:3,347億ドル(会計年度2023年1月通期)

  • ライバル企業:シェブロン(CVX)

  • 日本での同業:ENEOS ホールディングス(5020)

  • 本社:米国テキサス州

  • 従業員:62,000人

1-3月/Q1,2024年、第一四半期決算

  • 売上高:804億ドル

  • 営業利益:99億ドル

  • 当期利益:82億ドル

  • EPS(一株当たり利益):2.06ドル

エクソンモービルの2024年第1四半期の利益は82億ドル、希薄化を前提とした1株当たり利益は2.06ドル。利益は前年同期の114億ドルから減少したものの、前四半期の76億ドルからは増加。エネルギー価格の上昇とともに、回復基調にあります。設備投資と探鉱費は58億ドル。通期会社計画の230億ドルから250億ドルで、ほぼアナリストの予想通り。

事業別利益の内訳

川上部門(Upstream)-56.6億ドル<前年同期比▼12.34%>

この部門は

  • 探査: 地球物理学的調査、地質学的評価を通じて、新しい石油およびガス田を発見する。

  • 生産: 探査によって発見された石油およびガス田から資源を抽出する。

  • 開発: 発見された資源を商業的に生産するためのインフラストラクチャの構築と運用。

石油と天然ガスの探査および生産を担当する部門。エクソンモービルは、北米、南米、ヨーロッパ、アフリカ、アジア太平洋地域など、さまざまな地理的環境で石油とガスを生産。同社は、技術力と経験を駆使して、難易度の高い深海やシェール層などの資源開発に取り組んでいます。

エネルギー製品部門(Energy Products)-13.76 億ドル
石油製品の精製および販売を担当する川下部門(Downstream)。

  • 精製: 原油をガソリン、ディーゼル、ジェット燃料、潤滑油、その他の製品に精製する。

  • マーケティングおよび販売: 精製された製品を市場に供給し、小売店や産業顧客に販売する。

エクソンモービルは、世界中に多くの精製所を持ち、高品質の製品を効率的に生産しています。また、エクソンモービルのブランド(Exxon、Mobil、Esso)を通じて、消費者向けのサービスステーションネットワークも運営しています。

前年同期比で 28 億ドル減少。これは、業界の精製マージンが悪化したこと、および主にデリバティブの時価評価による 影響がタイミング的に不利に働いたことによるものです。

化学製品(Chemical Products)-7.85億ドル

化学事業もグローバルに展開しています。ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン、プロピレンなど、さまざまな化学製品を製造・販売しており、自動車、建設、パッケージング、ヘルスケアなどの産業に供給しています。

化学製品の利益は 7 億 8,500 万ドル(前年同期比+4 .14億ドル増)。ベースとなる販売量の増加と北米の飼料優位性の強化によるマージンの改善。

特殊製品(Specialty Products)-7.61億ドル
スペシャリティ・プロダクツの収益は、前年同期の 7 億 7,400 万ドルに対し、7 億 6,100 万ドルでした。完成潤滑油のマージン改善と構造的コスト削減により、ベースストックのマージン悪化とベース費用の増加が相殺されました。

飼料コストの低下と高価値製品の売上増加により、潤滑油完成品のマージンが拡大したことが利益に貢献。

企業および財務(Corporate and Financing)-純費用として▼3.62億ドル

キャッシュフロー

第1四半期の営業キャッシュフローは147億ドル、フリーキャッシュフローは101億ドル。このキャッシュフローの強さは、エクソンモービルが財務的に健全であることを示しています。

41年連続増配

当四半期の株主還元は68億ドルで、これには配当38億ドル自社株買い30億ドルが含まれます。そして、2024年6月10日に支払われる第2四半期配当として1株当たり0.95ドルが宣言されました。

配当利回りの目安

  • 配当実績:0.95ドル

  • 年間配当:0.95×4=3.8ドル

  • 株価:114.18

  • 配当利回り:3.8/114.18×100=3.33%

*手数料、税金は考慮していません。また購入時の株価によって、配当利回りは変わってきます。

まとめ

エクソンモービルは、伝統的な化石燃料の供給にとどまらず、再生可能エネルギーや持続可能な技術の開発にも注力。4つの事業部門を通じて、世界中でエネルギーの探査、生産、精製、販売を行っています。また、二酸化炭素の回収と貯留(CCS)技術やバイオ燃料、水素エネルギーの推進など、環境への配慮を重視した取り組みも進めています。

グローバルな事業展開を支えるパートナーシップの強化や、エネルギー効率の向上といった戦略的な取り組みを通じて、エクソンモービルは持続可能な未来に向けたリーダーシップを発揮しています。今後もエネルギー業界におけるリーダーとして、革新と環境保護への貢献に期待が高まります。

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*ご注意-このnoteは企業IRや直近のニュース等を参考に、一般的な情報提供を目的として書いています。投資家に対する投資アドバイスではありません。投資における最終意思決定は、ご自身の判断でお願いいたします。またデータ等の数字は、細心の注意を持って記載していますが当noteに載せている情報に基づく行動で損失が発生した場合においても、一切の責任を負いかねますので、ご了承ください。






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