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ジェレミー・シーゲル氏:『エヌビディアは最高値をつけているが、ハイテクバブルには遠くおよばない』〜バロンズ・ダイジェストの7月28日版から

日米の株式市場が、大幅な下落をしていますが、このような時は、どちらの市場においても、長期・分散投資の観点からは、慌てることなく、スタンスを崩さずやり過ごし、先人と知恵に学ぶのがよろしいかと思います。

バロンズ・ダイジェストの7月28日版~エヌビディアは最高値をつけているが、ハイテクバブルには遠くおよばない』、7月1日に行われたシーゲル氏へのインタビューが掲載されていましたので、まとめておきます。参考にして下さい。

インタビューの後に、主要株価3指数は、過去最高値を更新し、そして今回の下落をむかえています。

ジェレミー・シーゲル教授の見解

ペンシルバニア大学ウォートン・スクールの金融の名誉教授であるジェレミー・シーゲル氏は、1994年に「株式投資長期投資で成功するための完全ガイド」を出版しました。当時、多くの現在人気のある企業は存在していませんでした。例えば、アマゾンは1994年7月に創業し、グーグル(現アルファベット)はその数年後、テスラやメタ(旧フェイスブック)は2000年代前半から事業を本格化しました。エヌビディアは1993年に創業したばかりでした。

1994年のダウ工業株30種平均

1994年のダウ工業株30種平均には、以下の企業が含まれていました。

  • 鉄鍋メーカーのベツレヘム・スティール

  • 写真用品のイーストマン・コダック

  • タイヤメーカーのグッドイヤー・タイヤ・アンド・ラバー

  • 米小売大手のシアーズ・ローバック

  • 小売り大手のウールワース

その後の30年どころか中長期的に見ても、いずれも優れた銘柄とはならなかったとしています。

補足:上記の企業で、現在ダウ工業株30種平均(NYダウ)にとどまっているのゼロ。経営環境の変化や市場の動向に対応できず、破産や買収、業態転換を余儀なくされました。現在、存続している企業もありますが、かつてのような影響力を持つ企業はなくなっているのは、個別企業を選ぶ難しさを表しています。

シーゲル教授の投資哲学

シーゲル教授は、分散投資を推奨し、市場のタイミングを図った売り買いを避けるように勧めています。彼が提唱するパッシブ投資は、S&P500指数などのインデックスファンドを通じて継続的に投資し続けることです。

株式リターンの安定性

シーゲル教授は、株式市場の長期的なリターンの安定性を強調しています。彼の著書には1802年から現在までのデータが含まれており、インフレ調整後の実質年平均リターンは6.8%です。過去30年の間には金融危機や新型コロナウイルスのパンデミックなどがありましたが、それでも年平均実質リターンは6.5~7%の範囲内でした。

テクノロジー株のバリュエーション(valuation)

シーゲル教授は、現在のテクノロジー株のバリュエーションが1999年から2000年のハイテクバブルとは異なり、合理的な水準にあると述べています。特にAI関連株は利益を伴っており、バリュエーションも以前より安定しています。

補足:バリュエーションは企業の価値評価を意味し、株価が企業の本来の価値に対して割安か割高かを判断する指標として使われます。ハイテクバブルは1999年から2000年にかけてのインターネット関連株の異常な高騰とその後の急落を言いますが、現在のAI 関連企業は実際に利益を上げており、そのため株価の評価も企業の実際の価値と釣り合っているのではと、しています。

株式市場の永続性

株式市場の永続性について、シーゲル教授は今後10年間の年平均実質リターンを5~5.5%と予想しています。現在のPER水準が約20倍であるため、将来のリターンは若干低下すると見ています。米国債のリターンと比較されることがありますが、シーゲル教授はインフレ調整後のリターンを重視しています。

債券投資とインフレリスク

シーゲル教授は、債券がインフレに対するヘッジとしては役に立たないと述べています。地政学的リスクやリセッションリスクには有効ですが、インフレリスクには弱いです。1990年代からパンデミックまでの30年間、物価がほとんど上昇しなかったため、人々は低利回りでも債券を購入していましたが、現在はインフレリスクが高まっています。

FRBの利下げ予想と株式市場の見通し

シーゲル教授は、今年中にFRBが利下げを行うと予想しています。景気は軟化しており、インフレも低下しています。年内に9月と12月にそれぞれ一度の利下げがある可能性があります。株式市場の二極化が進んでおり、ハイテク株は高PER、小型株は低PERとなっています。

ビットコインの位置づけ

シーゲル教授はビットコインに投資していないものの、銀行制度の古さを解消する可能性を評価しています。ビットコインは、銀行制度の改革を促進する可能性がありますが、ナスダックとの相関性が高いため、分散投資には適していないのではと述べています。

選挙の影響

株式市場は、税金と規制の観点からドナルド・トランプ前大統領を好んでいます。トランプ氏が再選された場合でも、議会の動向が重要です。長期的には、政府が経済を社会主義化しない限り、市場は民主党政権下でも共和党政権下でも上昇しています。

財政赤字の危機

シーゲル教授は、財政赤字の増加が長期的な問題であり、2030年代の半ばから後半にかけて危機が訪れる可能性があると述べています。政府は、債務削減のための手段を講じなければなりませんが、近い将来ではないと予想しています。

投資初心者への助言

シーゲル教授は、分散化されたポートフォリオに投資し、*確定拠出年金や個人退職年金に投資することを勧めています。**バリュー株の比率を高め、長期思考の投資家としての姿勢を持つことが重要です。トレーディングと長期投資は別物であると強調しています。

※バロンズ・ダイジェストの7月28日版
『エヌビディアは最高値をつけているが、ハイテクバブルには遠くおよばない』
から引用しています。

補足:

*日本で言うところの、iDeCoや新NISAがこれにあたります。
**バリュー株とは上記のバリュエーション、企業の本来価値に注目する株となります。

バリュー株の特徴

  • 割安な価格: バリュー株は、企業の業績や資産価値に対して市場価格が低いと見なされる株式です。

  • 評価指標: バリュー株の評価には、株価収益率(PER)や株価純資産倍率(PBR)などの指標が用いられます。

  • 高配当: 一般的に、バリュー株は高配当を提供する傾向があります。これは、企業が成長よりも利益を株主に還元する姿勢を示しているためです

まとめ

米国株式市場はこれまでにも、多くの困難を乗り越え、下落からの回復を果たしてきました。日本の株式市場も、バブル崩壊後の高値を記録したばかりの段階です。ここ数日の変動は、新NISAをきっかけに、はじめて株式市場に参戦された方にとっては、不安でたまらないものかもしれませんが、シーゲル教授の言葉を思い出し、粛々と自信を持って、積み立て等の継続に取り組んで下さい。


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