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アーム(ARM Holdings)のQ4決算:売上高47%増の快進撃
ARM HoldingsのQ4決算レポート:売上高成長が加速
はじめに
アームは、半導体設計に特化し、自社で製造は行わないファブレス企業。特にモバイルデバイスや組み込みシステムにおける*プロセッサ技術で知られています。第4四半期(Q4)決算(1月~3月)では、前年同期比で売上高が47%増と、前期の14%増から大幅に成長を遂げました。これは、前年同期が減収であったことを考慮すると、特に顕著です。
プロセッサ技術とは、コンピュータや電子機器の中核となる部品であるプロセッサ(中央処理装置、CPU)の設計や開発を指します。プロセッサは、計算やデータ処理を行う頭脳の役割。アームは、特に省電力性能に優れたプロセッサ設計に強みを持ちます。
ARMの概要:革新的な半導体設計企業
創業とアップルとの関係
アーム社(ARM)は、1990年にエイコーン・コンピュータ、アップル、VLSIテクノロジーの3社による共同出資で設立されました。アップルは資金提供を行うとともに、共同創業者の1社として関与。さらに、アップルのラリーテスラーがARMの初代CEOに就任しています。
1993年にはアップルがアームのプロセッサチップを搭載したPDA「Newton」をリリースするなどARMの技術を早くから活用していました。
そして、2023年にはアームの新規株式公開の申請書類で、アップルがアームと2040年以降まで続く新たな長期契約を結んだことが明らかになっています。これは、両社の関係がアーム設立時にさかのぼり、今なお強固なパートナーシップを維持していることを示しています。
以上のように、Appleは資金面と技術面の両面から、アームの設立と発展に大きく貢献してきたと言えます。両社は30年以上にわたって緊密な関係を築いており、今後もモバイル・組み込み向けプロセッサの分野で協力を続けていくものと見られます。
ライセンスとロイヤルティー
ビジネスモデルはライセンス収入とロイヤリティ収入が主な収益源。
ARMアーキテクチャに基づいたプロセッサの設計を行い、そのライセンスを他の企業に提供。
スマートフォン、タブレット、IoTデバイスなど、多様な電子機器に使用されています。
Apple、Samsung、Qualcomm、Huaweiなど、多くの企業がアームの技術をライセンス。
モバイルデバイス市場において、アームベースのプロセッサが圧倒的なシェアを持ちます。
IoT市場でも広く採用されており、低消費電力で高性能な設計が評価。
2024/Q4(1-3月)部門別売上高の詳細
概要
売上高-9億2,800万ドル
EPS(1株利益)-0.36ドル
ロイヤルティー収入
アームのQ4の売上高の55%を占めるロイヤルティー収入は、前年同期比で37%増加。これは、前期の11%増から大幅に加速。成長を牽引したのは、次世代アーキテクチャ「Armv9」の普及。Armv9は、高いロイヤルティーレート(料率)を誇り、先進的な設計仕様を持つことで知られています。これにより、ロイヤルティー収入の増加が実現しました。
ライセンスおよびその他の収入
売上高の45%を占めるライセンスおよびその他の収入も、前年同期比で60%増加しました。前期の18%増から大幅に成長しており、顧客によるAI向けの研究開発(R&D)投資の拡大がこの成長を支えました。AI技術の進展により、アームのライセンス需要が高まり、結果として収益増加に寄与しました。
Q1の会社計画
続く、Q1(4月~6月)の計画は、売上高が8.75億ドルから9.25億ドル(前年同期比30-37%増)、調整後EPSが0.32ドルから0.36ドル。特に、ロイヤルティー収入は「Armv9」の普及進展やスマートフォン市場の回復により、前年同期比で約20%増を見込んむ。ただし、IoT向けの収益は軟調な見通しです。
一方、ライセンスおよびその他の収入は前四半期比で若干の増加を計画しており、全体的に強固な成長が期待されています。
ソフトバンクによる買収
310億ドル(当時レートで約3.3兆円)で
2016年7月18日、ソフトバンクグループ株式会社は、英国の半導体設計会社であるARM Holdings plcを約240億ポンド(約310億米ドル、約3.3兆円)で買収することで合意したと発表。この買収は、ソフトバンクにとって過去最大規模の投資案件となります。
ソフトバンクは、IoT(モノのインターネット)の重要性に着目し、ARMがIoT分野で重要な役割を果たすと判断したことが、今回の買収の背景にあります。また、ソフトバンクはARMの従業員を5年間で倍増させる意向を示すなど、英国に対する強いコミットメントを表明しました。
アームの取締役会は全会一致でこの買収を推奨し、2016年9月5日に買収が完了。これによりARMはソフトバンクグループの完全子会社となり、ロンドン証券取引所の上場を廃止しています。
*3兆円超で買収後、米国の半導体大手エヌビディアへの4兆円超での売却計画が浮上しましたが、欧米の規制当局が競争をゆがめる恐れがあると指摘したため、2022年2月に白紙撤回となった経緯があります。
ナスダック上場
「これは1つの通過点にすぎない。Armの価値をしっかりとした上場価値として見ていただくということで、我々はこのステップをベースにArmとグループの発展を目指していきたい。AIの普遍化、多くの人々のライフスタイルやワークスタイルがこれから劇的に変化していく中で、Armの位置づけ、役割はより重要になっていくだろう。我々のグループ戦略の中でも非常に重要な役割をこれから果たしていく」
アームは2023年9月14日、米国ナスダックに上場を果たします。上場初日の株価終値は、前日に決まった売り出し価格の51ドルを12ドル余り(約24%)上回る63ドル59セント。これにより、時価総額は652億ドル余り(約9兆5900億円)に達し、2023年のアメリカにおける最大規模の上場となりました。
ソフトバンクグループにとって、アームの株式上場は、株式を担保とした資金調達が行いやすくメリットもあるとの指摘が、上場当時、一部市場関係者からありました。
アーム株への投資
アームは、ナスダックに上場した際、ADR(American Depositary Receipts)の形態を通じて上場。そのため、ARMの株式を購入する際にはADRとして取引されることになります。
ADRは米国外の企業が米国内で株式を提供するための手段。米国市場で取引されるアーム株はADRとして扱われ、ティッカーシンボル「ARM」で取引されます。
先進的プロセッサ技術
アームの強み
アームの強みは、先進的なプロセッサ技術と広範なライセンスポートフォリオにあります。特に、次世代アーキテクチャ「Armv9」の普及は、同社の成長を牽引するメインパワー。また、AI技術の進展に伴うライセンス需要の増加も、ARMの収益拡大に寄与しています。
今後の展望としては、スマートフォン市場の回復とAI技術のさらなる普及が見込まれ、これによりロイヤルティー収入とライセンス収入の両方が成長することが期待されます。特に、「Armv9」の普及が進むことで、アームの収益基盤は一層強固なものとなるでしょう。
まとめ
アームのQ4決算は、前年同期比で売上高が47%増と大幅な成長を遂げ、部門別ではロイヤルティー収入とライセンス収入が共に大幅に増加しました。次世代アーキテクチャ「Armv9」の普及やAI技術の進展が、この成長を支えています。今後も、スマートフォン市場の回復とAI技術の普及が続く中で、ARM Holdingsはさらなる成長を見込んでいます。
アームは技術革新と市場の需要を的確に捉えた強力なポジションにある企業であり、今後の展開に投資家からも熱い視線を受けています。
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