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TSMC(TSM)最新決算:微細化の先端技術では、他の追随を許さず!!スマートフォンとAI需要にも強みを発揮!【4-6月/Q2,2024】


TSMC(Taiwan Semiconductor Manufacturing Company)は、台湾政府とフィリップス・エレクトロニクスのジョイントベンチャーとしてスタート。設立当初から、世界初の集積回路(IC)に特化したファウンドリ事業者として、他社の設計に基づき半導体を製造するモデルを採用しています。このモデルは、電子機器メーカーが製造をアウトソーシングするニーズに応えるものでした。第2四半期の決算を紐解き、TSMCの強みを深掘りします。


ファウンドリーとは

半導体産業において、他社から委託を受けて半導体チップを製造する専門企業のことを指します。これらの企業は自社で設計を行わず、製造に特化しており、設計はファブレス企業や応用機器メーカーが担当。ファウンドリは製造技術の向上やコスト削減を可能にし、最先端技術を迅速に取り入れることができます。台湾TSMC以外には韓国のサムスン電子があり、ファウンドリーは半導体製造の前工程を担当しています。

これに対し、IDM(アイディーエム:Integrated Device Manufacturer)は、半導体デバイスを自ら設計し、製造から販売までを一貫して行うメーカーで、インテル、サムスン電子、キオクシアなどがあります。

近年インテルとサムスンは、IDMとしての一貫した製造能力とファウンドリとしての柔軟な製造サービスを組み合わせることで、半導体業界における競争力を高めようとしています。

TSMCの第2四半期売上高はどうだった?

  • 売上高:208億2,000万ドル(前年同期比+32.8%)

  • 営業利益:88億5900万ドル

  • 当期利益:76億6200万ドル

  • EPS:0.30ドル

今四半期の好調な業績は、3nm(*ナノメートル)および5nm技術に対する旺盛な需要が寄与しています。TSMCは、これらの先端技術を駆使して高性能な半導体を提供し、特にスマートフォンやAI関連の市場での存在感を強めています。

利益率はどの程度改善したのか?

売上総利益率は53.2%、営業利益率は42.5%、そして純利益率は36.8%でした。TSMCの効率的な生産プロセスと強力な市場ポジションを反映しており、業界内での競争力を一層有利なものとしています。

3nm技術の需要は高まっているのか?

業界をリードする、最先端のプロセス技術である3nmと5nmは、今四半期においても、前年同期比32.8%の売上増を達成しました。

いわゆる先端技術と言われる、7nm以上の出荷比率は、3nmウェハーが15%を占め、さらに5nmウェハーが35%、7nmウェハーが17%。ウエハー総売上高の67%を占めており、TSMCの最大の強みとなっています。

第3四半期の見通しは?

ウェンデル・フアン上級副社長兼最高財務責任者(CFO)は「2024年第3四半期に向けて、当社の最先端プロセス技術に対するスマートフォンやAI関連の旺盛な需要に支えられると期待しています。

  • 売上高は 224 億米ドルから 232 億米ドルの間となる見込み(為替レートは1米ドル=32.5台湾ドルの前提)

  • 売上総利益率は53.5%~55.5%と予想

  • 営業利益率は42.5%から44.5%と見ています。

技術と市場の地位

TSMCは、高性能コンピューティング(HPC)、スマートフォン、IoT、自動車、デジタル家電など幅広い産業にサービスを提供しており、Apple、Nvidia、AMDなどの主要なテクノロジー企業を顧客としています。

第2四半期のプラットフォーム別売上高の構成は

  • HPC:52%<Q1比+28%>

  • スマートフォン:33%<同▼1%>

  • IoT:6%<同+6%>

  • 自動車(Automotive):5%<同+5%>

  • デジタル家電(DCE):2%<同+20%>

  • その他:2%<同+5%>

微細化とは?

ナノメートル:半導体の微細プロセスに使われる単位です。ナノメートル(nm)よく使われているメートル(m)単位を基準にすると、1ナノメートル(nm)は10億分の1メートルに相当します。

ナノメートル
  • 微細化(びさいか): 微細化とは、半導体のトランジスタをどんどん小さく作ることを意味します。これにより、同じ面積の半導体にもっと多くのトランジスタを詰め込むことができます。

  • 半導体の微細化は「プロセス技術」として表されます。プロセス技術とは、半導体製造の際にトランジスタをどれだけ小さく作れるかを示す指標です。例えば、10nm(ナノメートル)プロセス技術や5nmプロセス技術などがあります。この数字が小さいほど、トランジスタのサイズが小さくなり、結果として高性能で省エネルギーな半導体を作ることが可能になります。

  • ナノメートルはとっても小さな長さの単位です。どれくらい小さいかというと、1メートルを10億個に分けたうちの1つの長さです。例えば、人の髪の毛の太さは約80,000ナノメートルくらいです。

  • 代表的な5ナノメートルはとても小さく、目で見ることも、普通の顕微鏡でも見ることができないくらい小さいサイズ。この長さは、ウイルスやDNAのような微生物のサイズと同じくらいです。

  • 私たちが使うスマホやコンピュータの中には、たくさんの小さな部品(トランジスタ)が入っています。5ナノメートルの技術は、この部品をとても小さく作ることができる技術です。小さく作ることで、コンピュータがもっと速く、もっと省エネになります。

  • 半導体の微細化は、単にトランジスタのサイズを小さくするだけでなく、製造プロセス全体の改善も伴います。リソグラフィ技術の進化や新材料の導入、製造プロセスの高度な制御が求められます。これにより、半導体業界は常に技術革新を追求し続け、高性能なデバイスの実現を目指しています。

先端技術をさらにステップアップ

2nm製品(N2)は2025年に量産をはじめ、N2の性能を強化したN2P製品は2026年後半に量産開始を予定しています。同社は、AIの普及により電力効率の高い先端半導体の需要が増加し続けると予測。2nm製品は3nmプロセスの第2世代「N3E」と比較して、同じ処理速度での電力消費が25-30%削減できると推定しています。

まとめ

TSMCは、第2四半期において堅調な業績を達成し、今後もスマートフォンやAI関連市場での需要増加を背景に、さらなる成長が見込まれています。特に、先端技術の3nmと5nm技術に関しては、他の追随を許さず、この分野での地位を揺るぎないものとしています。また、

同社は、最先端の半導体技術に対する強い需要に応えるために積極的に投資を行っており、スマートフォンやAI、さらには自動車産業などの成長分野でも存在感を高めています。今後もファウンドリのトップとして、投資家にとって魅力的な企業であり続けるでしょう。

About TSMC

  • 設立:1987年、モリス・チャン(張忠謀)によって設立。

    -創業者モリス・チャンは、米国の半導体企業テキサス・インスツルメンツ(TI)での経験を活かし、台湾の半導体産業の基盤を築く上で重要な役割を果たしました。彼のビジョンとリーダーシップの下、TSMCは半導体製造の分業化を推進し、世界最大の専業ファウンドリとしての地位を確立。

  • 上場:1994年(台湾証券取引所)
    -1997年、台湾企業として初めてニューヨーク証券取引所(NYSE)にADRで上場。
    -TSMCは最先端の半導体技術を提供し、AppleやNvidiaなどの主要テクノロジー企業にとって不可欠なパートナーとなっています。TSMCの成功は、台湾の半導体産業全体の発展に大きく寄与しています。

  • ティッカー・シンボル:TSM

  • 株式時価総額-約8,690億ドル(およそ135兆円,8月)・・7月には1兆ドル超えも。

  • 年間売上高:667億ドル(およそ10兆円,2023年)

  • ライバル企業-インテル(INTC)、サムスン

  • 日本での同業種:ラピダス

  • 従業員数:76,478人(2023年)


よくある質問 Q&A

Q: TSMCの第2四半期の売上高が増加した要因は何ですか?
A: 主に3nmと5nmの先端技術に対する強い需要が売上高の増加に寄与しました。スマートフォンやAI関連の市場での需要が特に影響しています。

Q: TSMCの第3四半期の見通しはどうなっていますか?
A: TSMCは、第3四半期に224億~232億米ドルの売上高を見込んでおり、スマートフォンやAI関連製品の強い需要が引き続き業績を支えると予想されています。

Q: TSMCが注力している先端技術とは何ですか?
A: TSMCが注力している先端技術には、3nm、5nm、7nmのプロセス技術が含まれます。これらの技術は、特に高性能が求められる分野で重要な役割を果たしています。

Q:日本でも製造施設を建設するというニュースを聞きましたが
A:TSMCは、米国、日本(熊本県菊陽町)、ヨーロッパでの新しい製造施設の建設を計画しています。半導体業界におけるリーダーシップを維持し、先端チップに対する世界的な需要を満たすための戦略の一環と言われています。

TSMCの危機からの復活と第1四半期決算についてはこちら↓

*ご注意-このnoteは企業IRや直近のニュース等を参考に、一般的な情報提供を目的として書いています。投資家に対する投資アドバイスではありません。投資における最終意思決定は、ご自身の判断でお願いいたします。またデータ等の数字は、細心の注意を持って記載していますが当noteに載せている情報に基づく行動で損失が発生した場合においても、一切の責任を負いかねますので、ご了承ください。

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