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クアルコム(QCOM)の最新決算、エッジAIでも:スナップドラゴンがスマホ市場をリード、自動車とPC分野でも大きな成長へ。【4-6月/Q3,2024】


クアルコムは、モバイル通信技術と半導体チップの大手。特に、スマートフォンやタブレット向けのSnapdragonプロセッサで知られています。自社で半導体製造工場を持たず、チップセットの設計と開発に特化しているファブレス企業です。最新決算から、クアルコムがどんな会社か、見ていきましょう。

2024年度第3四半期決算のハイライト

  • 売上高:93億9,300万ドル(前年同期比+11%増)

    -*QCT:80億6,900万ドル(Handsets 58.9億ドル,Automotive8.1億ドル,Iot13.6億ドル)特に自動車部門の売上が同87%増と大きく伸びました。
    -**QTL:12億7,300万ドル

  • 営業利益:22億2100万ドル
    -EBT(課税前利益,Earning before taxes):22億7,900万ドル(同+30%増)

  • 当期利益:21億2900万ドル

  • EPS(1株当たり利益,希薄化後):1.88ドル

*QCT (Qualcomm CDMA Technologies): スマートフォンや携帯電話、自動車、IoT向けの半導体チップを開発・販売する部門。業界をリードする、3G、4G LTE、5Gなどの無線通信技術の開発も含まれます。

**QTL (Qualcomm Technology Licensing): 同社の特許ライセンス事業を担当し、携帯電話メーカーなどから特許使用料を徴収する部門。

プロセッサ、チップって何?

スマートフォンの心臓部とも言えるのが、プロセッサ、チップ。これらは「SoC(System on a Chip)」と呼ばれる一つのパッケージにまとめられています。SoCの中には、CPUやGPUといった演算処理を担うプロセッサ、通信を司るモデム、カメラ画像処理用のISP、音声処理用のDSPなど、スマホの様々な機能を実現するための部品が詰め込まれています。

特に重要なのがCPUで、アプリの起動速度やマルチタスク処理の性能を左右します。またGPUは、ゲームのようなグラフィック処理を担当しています。

つまり、SoCはスマホの性能や機能を決定づける最も重要な部品であり、これらの性能がスマホの処理速度、通信速度、カメラ性能などに直結しています。

クアルコム(QCOM)は、スマートフォン向けに高度なAI機能を搭載したSoC(System on a Chip)「Snapdragon 8 Gen 3」を多くのスマホメーカーに提供し、業界をリード。

SoCは、特にハイエンドスマホ市場でその真価を発揮しており、優れた電力効率とパフォーマンスを兼ね備えています。スマホメーカーは、クアルコムのSnapdragonシリーズをはじめとする高性能なSoCを搭載することで、より高機能で使いやすいスマホを実現しています。

ファブレスとファンウンドリー

ファブレスとは、文字通り「ファブ(半導体を製造する施設)を持たず、設計に特化した」クアルコムのような企業のことです。設計したあとは、製造をファウンドリー(前工程)やOSAT(後工程)に委託します。

クアルコムが設計・開発したチップは、TSMCなどの外部の半導体製造サービス企業(ファウンドリ)に製造を委託しています。このようなファブレスモデルにより、クアルコムは製造設備への大規模な投資を避けつつ、技術開発とイノベーションに集中できるのです。

エッジAIとは・・

AI対応スマホの需要が高まる中で、クアルコムのSnapdragonシリーズは、*エッジAIの処理能力を大幅に向上、スマホユーザーに新たな体験を提供しています。

スマホ市場でのエッジAI対応SoC、Snapdragon 8 Gen 3がリード?

スマートフォン市場全体では、エッジAIの利用がますます拡大しており、クアルコムの技術はその中核を担っています。特に、リアルタイムでのデータ処理やパーソナライズされたユーザーエクスペリエンスの提供が求められる現代のスマホ環境において、Snapdragon 8 Gen 3はその要求に応えるために開発されました。このプロセッサは、AI機能の最適化を進め、通信の遅延を最小限に抑えるとともに、電力消費を抑えた設計が特徴です。

エッジAIはエッジデバイス(端末)にAI(人工知能)を搭載し、端末側で推論や判断などを行う技術のことです。

従来のクラウドAIでは、端末で収集したデータをクラウドに送信し、クラウド上で処理を行っていました。しかし、エッジAIでは端末自体にAIを搭載することで、データをクラウドに送信せずに端末内で処理できます。これにより、通信コストの削減や、通信遅延の解消、プライバシーの保護などのメリットがあります。

エッジAIは、自動運転車や産業用ロボット、IoTデバイスなど、リアルタイムな判断が求められる分野での活用が期待されています。端末内での高速処理が可能なため、素早い意思決定が必要とされるシーンでの利用に適しているのです。

エッジAIとは

自動車市場での成長はSnapdragon Digital Chassisで加速する?

クアルコムは、自動車向けにも強力なエッジAIソリューションを提供。その中でも「Snapdragon Digital Chassis」は、車両のデジタル化と自動運転技術の進化を支えるプラットフォームとして注目されています。このプラットフォームは、自動車メーカーに高度なAI処理能力を提供し、車内エンターテインメントや安全機能の強化を実現します。

クアルコムは、この分野での売上高を2026年までに40億ドルに拡大する計画を立てており、現在も急成長を続けています。自動車市場におけるエッジAIの利用拡大は、今後数年間でさらに加速すると見られており、クアルコムの成長エンジンとなると言われています。自動運転やコネクテッドカーの普及に伴い、Snapdragon Digital Chassisは、より多くの自動車メーカーに採用されることが期待されます。

PC市場でもSnapdragon Xがシェア拡大中?

同社の勢いはPC市場にも及んでいます。同社の「Snapdragon X」は、AI機能を搭載したPC向けSoCとして注目され、最近ではマイクロソフトのAI対応ノートPC「Copilot+PC」にも採用されています。クアルコムは、この新しいプロセッサでPC市場でも存在感を高めており、AI対応PCが今後主流になると予測しています。

同社は、2027年までに世界のPC販売台数の50%がAI対応PCになると見込んでおり、その中心に「Snapdragon X」があり、優れたパフォーマンスと電力効率を兼ね備え、ノートPCの市場で強みを発揮しています。AIの活用が進むにつれて、PCユーザーに新たな価値を提供することができ、クアルコムの成長を後押しすることが大いに期待されています。

次期第4四半期(7-9月)ガイダンス、会社計画は?

クアルコムは2024年7-9月期の計画も発表しており、前年同期比10-19%の増収を見込んでいます。この成長は、主にスマホと自動車市場での需要増加に支えられており、今後もその勢いが続くと予想されます。
第4四半期のガイダンスでは、
売上高91億〜99億ドル、
EPSは2.15〜2.35ドルを見込むとしています。

クアルコムの今後の成長戦略は?

  • スマホ、自動車、PCという3つの主要市場での技術革新と市場シェアの拡大に重点を置いています。

  • AI技術を中心に据えたプロセッサの開発を進めることで、各市場でのリーダーシップを確立。

  • 自動車市場では「Snapdragon Digital Chassis」による成長が期待。

  • スマホ市場では「Snapdragon 8 Gen 3」が引き続き主力に。

  • PC市場では「Snapdragon X」の普及を通じて、AI対応PCの市場シェアを拡大する計画。

About クアルコム

  • 設立: 1985年
    -アーウィン・M・ジェイコブスとアンドリュー・ビタビによって設立。

  • 上場年: 1991年12月
    -1991年12月にナスダック市場に上場。

  • ティッカー・シンボル:QCOM

  • セクター:情報技術(Information Technology)

  • 年間売上高: 358億ドル(2023年)

  • 株式時価総額:1,918億ドル(約28.7兆円,8/16終値)

  • 従業員数: 26,000人

22年連続増配

配当利回り目安

  • 配当実績:0.85ドル(6月)

  • 年間配当:0.85ドル×4=3.4ドル

  • 株価:172.18ドル

  • 配当利回り目安:3.4÷172.18×100=1.97%

*手数料、税金等は考慮に入れていません。配当利回りは購入時の株価によって変わります。

投資金額目安

  • 株価:172.18ドル

  • 最低投資金額目安
    172.18ドル×147円×1株=25,310円~
    *手数料は考慮に入れていません。為替、購入時の株価によって変わります。

まとめ

"QCTの四半期収益およびEBTマージンは、ガイダンスの上限を達成。優れたパフォーマンス、比類のない電力効率、パーソナライズされたAIエクスペリエンスを実現するPC向けソリューション、Snapdragon Xシリーズの発売を楽しみにしています。この発売は、通信会社からインテリジェント・コンピューティングのリーディングカンパニーへの変革における重要なマイルストーンとなります。"

クリスチアーノ・アモン社長兼CEO

クアルコム(QCOM)は、スマホ、自動車、PCという多岐にわたる市場でのエッジAI技術のリーダーとして、着実に成長を続けています。

特に、スマホ市場での「Snapdragon 8 Gen 3」や自動車市場での「Snapdragon Digital Chassis」、そしてPC市場での「Snapdragon X」の成功は、同社の今後の成長を強力に後押しする要因となると思われます。

クアルコムの技術革新と市場拡大により、これからも同社は世界中の企業や消費者に新たな価値を提供し続けることが期待されます。


よくある質問 Q&A

今回の決算や事業内容をQ&Aでおさらい・・

Q1: クアルコムのSnapdragon 8 Gen 3は他のプロセッサと何が違うのですか?
A1: Snapdragon 8 Gen 3は、優れたAI処理能力と電力効率を兼ね備え、特にハイエンドスマホ市場でのパフォーマンスが高く評価されています。他のプロセッサに比べて、通信の遅延が少なく、よりリアルタイムなエッジAI処理が可能です。

Q2: クアルコムは今後も自動車市場で成長を続けるのでしょうか?
A2: はい、クアルコムは「Snapdragon Digital Chassis」を通じて、自動車市場での成長を続ける見込みです。2026年までに自動車向け売上を40億ドルに拡大する計画を立てており、自動運転やコネクテッドカーの普及がさらに成長を後押しすると期待されています。

Q3: クアルコムのPC市場への参入は成功していますか?
A3: クアルコムのPC市場への参入は成功しています。「Snapdragon X」がマイクロソフトのAI対応ノートPCに採用されるなど、PC市場での存在感が高まっています。今後、AI対応PCが主流になると予測されており、クアルコムはその波に乗る準備ができています。

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