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バーコード刑事 (2)

(1)

「怒るのも無理はありませんよね。こんなところに閉じ込められているのですから」
おっさんは、眼鏡を中指でくいっとあげると、悩ましげな表情で、ふうっとため息をついた。
違う、俺の怒りは、そういうことじゃないんだ。
「どういうことなのか、説明しろ」
なぜ、お前みたいなおっさんが、セーラー服を着て、それほどまでに魅力的な脚を持っているんだ。
「あなたは、ある組織に、ずっと後をつけられていたのですよ」
「そんなことは、どうでもいい。説明しろって言ってるんだ」
「おや、ご存知でしたか。じゃあ、後をつけられていた理由もわかりますね」
「俺の持っているデータのせいだろ。そんなのくれてやるから、説明しろ」
「おやおや、あなたの持っているデータは、世界を揺るがすほどの貴重なものですよ」
「そんなデータなんてクソだ。俺は、それよりも、ずっと探し続けていたものがあったんだ」
「世界を揺るがすほどのデータよりも、貴重なものですか」
「そうだよ、それをようやく見つけたというのに、何なんだよ、くっそ」
「もしかしたら、組織は、それさえも狙って……」
「だから、お前は、一体、何者なんだよ!」
すると、おっさんはくるりと一回転する。スカートがひらりとめくれ、魅惑の太ももがちらりと覗く。
やめろ。
「申し遅れました。私、刑事です」
「そんな格好をした刑事がいるか!」

おっさんは、ふっと笑みを浮かべた。俺の向かいに置かれたパイプ椅子に腰掛け
「それが、いるのですよ」
脚を組む。再び、スカートから、魅惑の太股が覗いた。なめらかな曲線、程よい肉付き、何よりも滑らかで、さわり心地のよさそうな……。
「ふざけんな!」
つい、見惚れてしまいそうになった俺は、叫んで我に返った。
「セーラー服を着ているのは、組織に潜入するためです。こんな格好をしていれば、刑事だとばれる事もないでしょうから」
「バレる以前に、変質者扱いだろ」
「まぁ、信頼されるまで時間はかかりましたね」
「心の広い組織だな、おい」
「ですから、安心してください。あなたを無事に逃がしてあげます」
おっさんは、パイプ椅子から、すくりと立ち上がる。ふわりとスカートが揺れ、滑らかで、ほどよい肉付きの、完璧な太股が見える。触りたい……けど、触ったら、終わる、色んな意味で。
「ありがたいけど、その格好なんとかならねーの」
「この格好じゃないと、組織の信頼を失うことになりかねませんから」
「一体、どんな組織だよ」
「私があなたと二人きりなのは、データの隠し場所を吐かせるという任務があるからです。どんな手を使ってもいいと言われています。拷問しているフリをして、その隙に逃げちゃいましょう」
バーコード刑事は俺にウインクをする。 これも、ある意味拷問だ。
「逃げるって、どうやって」
おっさんは、床にしゃがみこんだ。恥ずかしげもなく、しゃがみこむものだから、悩ましげな太股が見えている。
やめろ。
「じゃーん、ここに秘密の地下通路があるのです」
おっさんが、床を押すと、通路が現れた。現れた通路から風が吹き込み、おっさんのスカートが舞い上がる。魅惑の太股が丸見えである。
「おい!押さえろよ!」
「はい?」
おっさんは、地下通路の蓋を押さえる。
「それじゃねーよ!」
スカートを押さえろ!と、言いかけてやめた。おっさんの脚を意識してるのがばれてしまうではないか。
「いったい何を?」
「……眼鏡」
「なるほど」
くいっと、中指で眼鏡をひきあげるおっさん。再び、地下通路の蓋を開ける。吹き上げる風。 舞い上がるおっさんのスカート。丸見えになる魅惑の太股。 見てはいけない、けど、見てしまう。
「ああ!!」
俺は思わず声をあげた。
「拷問されているフリですね。さすがです」
おっさんは、グッジョブと親指を立て微笑んだ。

To be continued.

(3)

#小説 #コメディ


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