リボルバー
手にしたスマートフォンの光に目にくらむ、愚かな男がおりました。
切りすぎた前髪を人差し指で弄び、昔話風に呟いております。
愛した男に気づかれない哀れな前髪。
触れる指先には、美しいネイルが施されております。
ベランダの窓を開けると、ネイルと同じ色に滲む朧月夜です。
あなたの額が好きでした。
私のわがままに困る皺が好きでした。
だから、あなたの、額に向けたのです。
朧月夜に染まる銃口を、あなたの額に向けたのです。
初めてのデートで貰った、人差し指の指輪はシリンダー。
くるりと回し弾丸を詰め込みます。
額に狙いを定め、引き金を引く前に尋ねます。
言い残すことはないですか。
「前髪、切ったんだね」
他には。
「ネイルもきれいだよ」
リボルバーは、エプロンにしまいました。
今日は、ハンバーグにしようと思います。
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