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雪の手紙

「お元気ですが。俺は元気です。今日、初雪が降りました。って言っても吹雪だったんだけど。お前がこの町を出て行ってから一ヵ月後に、俺はこの町に戻りました。交代制なのかよ。何から、この町を守るんだよ。ともあれ、元気にお過ごしください」

「お元気ですか。俺は元気です。今年もまた、初雪が降りました。去年みたいな吹雪ではなく、粉雪でした。お前が勤めていた駅前のホテルだけど、取り壊されて、大きな病院が出来ました。駅前の景色が、がらりと変わったから、今度帰ってきた時は、戸惑うかもしれないな。この前は、蕎麦を送ってもらって、ありがとう。お返しに林檎送ります。ともあれ、元気にお過ごしください」

「お元気ですか。俺は元気です。今年もまた、初雪が降りました。大きな牡丹雪で、地面に落ちると一瞬で消え、積もることはなかったです。もしかしたら、この初雪に気づいたのは、俺だけかもしれない。お前がこの町を出て行った理由を、最近ようやく知りました。辛いときに傍にいてやれなかった事が悔やまれます。もう、立ち直れましたか。3年も経つから、大丈夫かな。お前、忘れっぽいし。また、蕎麦を送ってくれて、ありがとう。てか、なんで、毎回、蕎麦なの?そっちの人は、蕎麦しか食わないの?たまには違うものが食べたいです。ともあれ、元気にお過ごしください」

地元の幼馴染は、毎年、初雪が降るたびに、手紙をくれます。

#小説 #掌編  


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