死にたくないのは今が幸せだから

僕は中1の頃、自分がいつか死ぬという事実を自覚した。そのときから、現実を見ることが嫌になった。
自分の運命を悟った時、自分はなんて不幸なのかと思った。ずっと生きていたい。今この瞬間を失いたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。

何度そう思ってきたことだろう。
今でもそう思う。

12年経っても、死の恐怖を克服することは出来なかった。その間、さまざまな本を読んだり、いろんな人の考えに触れた。一時的に恐怖が和らぐことはあったが、それでも根強く自分の中には恐怖が残っていた。

ある人は言った。
死ぬのが怖いのは、やりたいことを全部やっていないからだと。全部やってしまえば、後悔なんてなくなる。

藁にもすがる想いだった自分にとって、その人の言葉は金言だった。少なくとも、好きなことに一途な時間、僕は死の恐怖から解放された。

自分の人生から目を背ける、という選択を取るのではなく、自分の人生と向き合うことで恐怖と共に生きよう、そう思えた。

実は僕は、死ぬのが怖いと言うことを10年間誰にも言えなかった。言えたのは、つい2年半ほど前のことだ。こんなこと口にしてはいけないと思っていたから。
でも、今は、むしろ伝えるべきなのかもしれないと思ったりもする。人生の最後について、考えるキッカケになるかもしれないから。

僕は自分が死にたくないと伝えることで、その人も自分と同じように死ぬのが怖いという感覚を手に入れてしまったらどうしよう、という想いがあった。
でも、それは杞憂だったように思う。
他の人の意見を聞くことで、自分の状況を客観的に知ることができた。

話して良かった。

そして、話しながら思うのだ。
死ぬことを恐れていない人は、人生に対して未練がない。やりたいことをやりきった、という人もいるし、苦労してまで生きたくない、という人もいる。

僕はまだ、この世に未練がある。
だって幸せだから。
この幸せな世界を失いたくない。

僕はずっと、満たされていないと思っていた。
でも、本当は違ったのだ。

僕はたくさんの愛に触れて
たくさんの心に触れて
世界に希望を見出していた。

だから死にたくなかった。
自分だけのこの意識を失いたくなかった。

僕はこの意識があるうちに、
もっともっと自分を表現し続けたい。
命ある限り。

それが僕の生きる道なのだ。

正解とは呼べないかもしれない。
良い大学入って良い会社入った方がきっと幸せだったし、劣等感も感じなかった。
でも、自分はこの道が好きで選んでしまったのだ。

僕はずっと回り道をしていると思っていた。
でも違った。

ただ、別の道を歩いていただけだった。
みんなと同じ道を行くよりも、きっと険しい道なのかもしれない。

それでも、その道を歩いて行きたいと思う。
人生最後に後悔したくないから。

生き切ってやろう、今を。
できっこないの、その先へ。

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