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小説

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2022年2月の記事一覧

和合の雨 後編

青年の言葉に、サヤカは一瞬言葉が出なかった。
「.....な、何、言って」
辛うじて出た言葉はどうも歯切れの悪いものになる。
「いや、なんかそんな気がしたから。水色のブラ付けてるし」
ブラの色関係ないだろ!というツッコミが咄嗟に出ないほど、わたしは動揺していた。
「てか、フツーに考えて、死にたいとか別に思う訳.....」
「あ、そう。なら良いけど」
先程までのうっとうしいほどの追求とは裏腹に、あっ

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和合の雨 前編

『世界は灰色に澱んでいる』

いつからだったか、私はそう思うようになっていた。

「もうっ!最っ悪!!」
降り注ぐ雨の中を夏目サヤカは駆け抜けていた。アスファルトにはところどころ水溜りが出来ており、通るたびにピチャピチャッと水が跳ねる。着ているリクルートスーツはすでにシャツまでぐっしょりと濡れていた。
予報は晴れだった筈なのに。ありえない。
文句をどれだけ言おうと雨が止むわけではない。
サヤカは高

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