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007_INPEX企業分析~有事の際は原油関連株買っとけ!?

 久々ですが、今回は企業分析関連の記事を書きたいと思います。最近(2022年2月)は、日経の地合いも厳しい日々が続いていますが、そんな中でこそ注目した銘柄を取り上げてみます。では、どの銘柄を取り上げるかというと・・・1605_INPEXです。
 なお、あくまで個人的分析のため、該当銘柄への投資を勧めるものではありません。投資は自己責任でお願いいたします。
 
 それでは、今回の銘柄分析は、下記の流れで進めていきたいと思います。なお、思ったより長くなったので1~3を今回、4~5を次回に。

 1.企業分析 2.業界分析 3.財務諸表分析
 4.各指標分析 5.まとめ

1.企業分析

 それでは、まず最初に「INPEX」という会社がどのような企業か=どのようなビジネスを行っているのか等を抑えたいと思います。内容は、INPEX社のHP、IRでの開示資料から引用しています。
(引用元:INPEX社HP(IR 投資家情報))

 気になる部分を抜粋し下記に記載。
 プラスの印象としては、国内1位、国策企業の色合いが強く、参入障壁も高いビジネスの中で圧倒的な存在感がある企業という点(知っている人は知っている、唯一の黄金株発行企業)。
 一方でマイナスの印象は、生産活動の拠点が、アジア・オセアニア・中東・アフリカといった紛争等による地政学リスクを含むカントリーリスクが高いところ。また、為替はもちろん、メインの生産物である石油の価格変動が高すぎることも業績を考える上ではマイナスか。

企業分析まとめ

2.業界分析

 該当セクターとしては「鉱業」になりますが、メインは油。短期的には、原油価格は高騰中なので、追い風。INPEX社以外、同業他社や商社も業績好調なことからも業界自体が好調なことがわかる。ただ、原油価格はとにかく乱高下が激しく(一時はマイナスになった時もありましたが)、この一点だけからも投資するには怖さが残る印象。
 参考までにWTI原油価格のチャートを貼り付けます。原油は他にもブレント、ケロシン等ありますが、ここではCFD取引でも馴染みのあるWTIで。
 ぱっと見で恐ろしいほど変動していることがわかります。
(チャート引用元:Trading View)

WTIチャート
業界分析まとめ

3.財務諸表分析

 続いて、財務諸表分析(BS、PL、CF)です。ぱっと見の印象としては、BSはとにかく資産規模が大きい、PLは当たりはずれが大きい、CFは直近はバランスいいが油断禁物、と言ったところでしょうか。
 詳細は下記にまとめていますが、そこから気になる点をピックアップ。

【BS分析】

 Cashの保有率から、直近の資金繰りは問題なさそう(当座比率も高い)。ただ、長期借入金1兆円は目につきます。どうしても主要産地が海外であり、その開発・生産の過程では多額の資金が必要になることは、この業界として当たり前かもしれません・・・。
 ちなみに、類似のモデルでは、不動産系(多額の資金で土地やビルを購入し、賃貸・ホテルとして利用)やJALやANAといった航空系(1機200億~の機材)の企業にも見られる傾向ですね。多額の資金で資産を調達し、その資産を効率良く活用して資金調達した以上の利回りを実現するというモデル。
 さて、話を戻します。改めてBSを見ると、科目で気になるものがあります。それは「生産物回収勘定」です。初見では「何ですか?」って感じですが、会社の説明等から推察すると仕掛品や建仮のようなイメージに近いかもしれません。特徴は、ざっと下記のとおり。
 ①作業コスト等、原油生産までのコストプール勘定
 ②探鉱・開発の結果、生産に至れば売上原価として費用化
→生産物は産油国政府や石油会社へ販売。生産・販売のタイミングで、この収入計上と費用計上を対応させている(=費用収益対応)。
 ③仮に生産に至らなかった場合は、損失処理
 要は、資産として計上されているけど将来費用化されるもの、また、プロジェクト次第で万が一の場合にはそれが収入を伴わない損失になるものということ。規模の推移はモニターしながらリスクの把握はした方がよいかもしれません(ただ、必要に応じ引当を計上しているようです)
(引用元:INPEX社HP参考データ集)

「生産物回収勘定」の説明

【PL分析】

 続いてPLです。業界の特性かもしれませんが、それでも利益率は高い印象。主因はやはり原油価格の高騰。有価証券報告書にも記載がありますが、原油価格、為替、この2つがあまりにもインパクトがありすぎます。石油のビジネスなので当たり前ですが。
 なお、FY20は最終利益が損失になっていますが、これは特損で減損損失1,900億程度の計上が悪さをしています。PLの中身はしっかりと見た方がよいですね。コロナ影響もあり減損したようですが、CF的には影響なし、PL的にも一過性なのでさほど気にする要因ではないかと思います。この影響を除けば、FY20も最終利益は黒字です(▲111,699M→+78,241M)。
 それでは、最後に参考で①19/9 vs 20/9、②20/9 vs 21/9の収入額差異分析下記に記載します(こちらも開示資料より)。あわせて原油価格のチャートも再掲。
 原油価格の上昇と売上の相関が見えてきますね。それにしても1年で3,000億規模の±が反転するとは・・・。
*なお、原油は簡便的にWTIを参照しています。
(チャート引用元:Trading View)

売上差異要因別分析
WTIチャート

【CF分析】

 意外に見方がよくわからないというコメントをみるCF。会社の継続性を見る上では、他の財務諸表以上に重要となる決算書だったりします。
 さて、営業CF。こちらはしっかりプラスのCIFで手堅い印象。見るポイントとしてCFのバランスがありますが、営業CF>投資CF、財務CFが成立し、非常に良い状況ということがわかります(=稼いだCashで新規の投資や借入の返済ができている)。
 ただ、BSでも触れましたが借入金の影響は甚大です。有報から推測するとFY22以降、5年の間に5,000億レベルの返済がやってきます。5,000億レベルです。この返済は、財務CFのマイナスとしてじわじわ効いてくるはず。そのため、当該営業CFの高水準をいかに継続して保てるかがポイント。
 しかし、この営業CFの水準は、前述のとおり、直近の原油価格高騰の追い風が大きいので、果たして来期以降、原油価格が反転した場合は大丈夫なのか・・・。

というところで今日はここまで。次回は残りの各指標分析と、各分析を通してのまとめを記載予定。(続く)

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