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【日記】暮らしの爪先をととのえること

何かの拍子にいただいた素麺が入っていた木箱の蓋をひっくりかえして、ドライヤーとヘアブラシを入れていた。この家に越してきてから「そう」なので、都合5年になる。

素麺の木箱の蓋は、平べったくて大きい。ドライヤーもヘアブラシもちっともぴったりとはいかずに、収まりの悪いままで鎮座している。しかるべき置き場所から滑り落ちてきてドンガラガッシャンといった騒ぎになることも何度かあった。当然のことだ。私は非常に我慢強く、現状から目を背けることに長けているため、そういった暮らしの指先の不自由をそのままにして暮らしてしまう。

今日、籐の籠っぽいものを買った。高級な品ではない。長く伸びた前髪をくくっておくためのターバンを買いに出かけた300円均一の雑貨屋で見かけた品だ。レジの近くにお行儀よくならんでいる亜麻色のニスを塗られた籠はドライヤーとヘアブラシを抱えて洗面台の上に置かれるために製造されたような完璧なさまをしており、思わず手に取ってしまった。300円均一っぽい看板の店なのに800円だった。思ったよりレジに表示された金額が高くて、衝動買いには一家言ある私も一瞬たじろいだ。店の実体は「お値段300円より」であり、私は不注意にも客単価アップに貢献した客である。

相変わらず、体調も心調も幹線道路に舞うコンビニ袋(有料、1枚3円)のごとく翻弄されていて、12月も半ばを過ぎて大掃除だってままなっていない。けれど、今年は去年よりも少しだけマシだった気がするのだ。その証左が欲しくて、その籠を手に入れた。持ち帰った籠は10年前からそこに存在していたみたいに我が家の脱衣所に馴染み、生活の爪先を少しばかり整えてくれた。

来年は今年よりも、もう少しだけマシだといい。

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