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幕が上がる、音が鳴る【サカナクション】

11月20・21日に行われたオンラインライブ【SAKANAQUARIUM アダプト ONLINE】
そこで次のアルバムに収録される新曲たちが一斉に披露された。


その中の1つが、『プラトー』
この曲は、サンテFXのCMソングとしても起用されている楽曲だ。

オンラインライブ開催前から、
これからのサカナクションについてのプロジェクションについて、告知があった。


アルバム2作品に渡るプロジェクション。
第1章となる【アダプト】は、11月20日より行われたオンラインライブから幕を開けた。
オンラインライブ、リアルライブ、そしてアルバムを通して、
コロナ化での音楽業界、そしてサカナクションとしての在り方をこの時代にどのように"適応"してきたのか、それを表現し、体現していくプロジェクションとなっている。


"音楽は表現である"
コロナ化で感じてきたもの、溜めてきたもの、経験してきたもの、
それらを全て音楽という土台で表現していく、
「ここからがサカナクションのターン」とでも言わんばかりの意気込みが感じられるプロジェクションである。



オンラインライブで披露された数々の新曲たちの中から、
今回『プラトー』が一足先に先行配信・MV公開された。
まさにサカナクションとして”これから行なっていくプロジェクションに対して我々に向ける宣誓"のように感じる曲である。


オンラインライブで、この曲を初めて聞いた時、
(タイアップ曲というのはもちろん知ってはいたのだが、)

タイアップにふさわしい曲だ、と感じた。


サカナクションが紅白に初出場し、その後、タイアップ曲がたくさん続いた時期があった。
その時期、私は文字通りどっぷりサカナクションにはまっていた時期でもあった。
情報が出るたび、逐一チェックをしたし、ラジオはもちろん、インタビュー記事もくまなく読んでいた。
だからこそ、あの時期の山口一郎さんの表情や、ラジオで必死に言葉を紡ぎ出して私たちに伝えてくれた苦悩、それらを鮮明に覚えている。

バンドはテレビに出るような所謂表舞台のものじゃないと思っていること。
生配信の音楽番組で生演奏ができない歯がゆさ。
タイアップで求められる大衆性。

タイアップ曲として制作された『ユリイカ』、『蓮の花』、『僕と花』
もちろんどれも楽曲として素晴らしい、サカナクションの曲である。
でも、タイアップ曲ということを考慮すると、正直どれも、”合っている"とは思えなかった。
『蓮の花』のタイアップとなった映画【近キョリ恋愛】はコメディ要素がある少女漫画だ。主人公は、天才的頭脳を持つユニだが、ストーリーは一貫してまごうことなき”少女漫画"である。
私は原作が好きで、サカナクションも好きだったので、もちろんそのタイアップは嬉しかった。
映画も見に行った。
でも心の底から喜べなかった。

映画に合ってない、と思ったからだ。
終いには、タイアップ曲ではサカナクションの良さを引き出せないのではないか、とすら思ってしまった。


「サカナクション」「タイアップ」
という単語を見ると、その時の記憶がフラッシュバックする。


この『プラトー』のタイアップを聞いた時もそうだった。
でも、そんな記憶をかき消すほど、この楽曲は、サカナクションとしても、タイアップ曲としても完成されていた。
たくさんの苦悩の中、いつも表現に対して真摯に向き合って、挑戦してくれたからこそ、今のサカナクションがあり、このタイアップにふさわしいと感じさせる楽曲が出来上がったのだろう。
(ちなみに、私個人としては、サカナクションとしての表舞台での魅せ方が確立した曲は『新宝島』であると感じている。『新宝島』が主題歌として使われた【バクマン。】は、劇伴曲もサカナクションが担当しており、こちらも音による表現を最大限に研究したサカナクションならではのものとなっている。映画を見る際は是非とも注目してほしい部分である。)


『プラトー』を初めて聞いた時、私がワクワクしたのが、
オンラインライブでの表現(カメラワークや照明)である。
公開されているMVは、オンラインライブで見たままの映像になっているので、もし、まだ見ていないという人は、是非一見してほしい。


照明が落とされて、わずかな明かりが照らされている中、ハンディカメラでの撮影で、メンバーの表情や演奏の様子がせわしなく次々映されていく。
派手なライト・レーザーや演出もなく、淡々と楽曲が奏でられる様子は、
「本当に画面に映っているアーティストはサカナクションなのか…?」
と疑ってしまうほどである。
それほど、サカナクションとしては、シンプルすぎるほどの映像構成だった。
だからこそ、食い入るように見入ってしまった。


新曲(フルver)を聴く機会というのは、基本的にCDだったり、ラジオだったり、先行配信だったりする。
でも、今回のサカナクションの新曲発表は、このオンラインライブが初だった。
耳だけじゃなく、映像として私たちは新曲を享受することとなった。

音以外の情報。目で見た光景が『プラトー』の情報として入ってくるわけで、
つまり、この曲の光景として思い浮かべる光景が、この映像になるというわけなのだ。


簡素な言い方をしてしまうと、一種の意識の洗脳による脳内ジャックだ。
新曲を初めて聞いた時、MVはどんなものになるかな……という想像だったり、
この曲の物語・背景はきっとこんなものだろうな…という十人十色の想像を容易にさせない、
というある意味斬新で挑戦的な新曲披露となっていたのだ。



そんな私達の曲からの想像をジャックしてしまったからこそ、
このシンプルな映像で、わかりやすい盛り上がりのある楽曲は、
サカナクションの挑戦的な部分を感じた。

そして曲が経過していくごとに感じた、ゾクゾクっとするような興奮。


初めの電子音のようなうねる音から、ドラムのビート。
そして、鍵盤の音と歌だけの語りかけるような時間。
サビにかけて全ての音が終幕に向けて集まってきて、サビでは一斉に扉を開けて光が入ってくる、そんな様子すらも感じた。
2番サビ後のギターメロディだけが残る感じは、初期サカナクションの楽曲を彷彿とさせる。
一定のメロディを表立って刻むギターの後ろで細かくうねりながら動くベースはもはやサカナクションの定番にして核とも言える部分。
そこからまさに終幕へと向かう終盤では、サカナクションの強みである”合唱"が使われる。
音域の違うメロディで歌うことで音圧が出る。
低音ではなく高音域での合唱のため、どこか神秘性のある厳かな雰囲気をも醸し出す。
(サカナクションのハモりや合唱パートでのミソは、ギターのもっちが1オクターブ上の高音を女声さながら歌いこなしているところである。)
わかりやすいシンプルで淡々と進みながらも、全てが計算されているであろう楽曲構成に改めて感心してしまう。



音楽として表現するだけじゃなく、表舞台に立つ役者のような、
見るものがいるからこそ成り立つ映像としての表現。

それらも音楽の1つとして突き詰めてくれたからこそ、
出来上がったこの景色なのだと思うと、さらに鳥肌がたった。



「変わらないまま、変わっていく。」

ライブで一郎さんがよく言っている言葉でもあるが、
まさにサカナクションはその言葉通りのバンドだと改めて痛感する。


私たちにどこまで音楽の進化を見せてくれるのか。
私たちを一体どこまで連れて行ってくれるのだろうか。。



サカナクションは、いつだって新しい音楽の在り方・楽しみ方を私たちに魅せてくれる。
そんな進化し続けるサカナクションを目の前で体験できるアダプトツアーは、明日愛知県からスタートとなる。
音楽の革命の瞬間をこの目で耳で身体で体感できるのかと思うと、今からワクワクが止まらない……
会場によっては、まだチケットが残っているところもあるそうなので、予定が合う方は是非、全身でサカナクションの音楽を浴びてほしい。




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サカナクションの話題のたびに、なんだか同じことを言っている気がしますが、
サカナクションの音楽を聴くたび、ライブに行くたび、
やっぱり私は音楽が好きなんだな、サカナクションが好きなんだな、と痛感します。

音楽好きの元を辿れば、いろんな思い出のアーティストが出てきますが、
私の音楽の幅を広げてくれたのは、間違いなくサカナクションです。

当時聞けていたらなぁ、、なんて思うアーティストも多くいますが、(特に今年は平成初期の頃の曲をよく聞いていたので尚更…)
サカナクションは、20年、30年後、「私当時のサカナクションを生で聞いたことあるんよ〜!!」と自慢できるようになるな〜と常々思います。笑
それくらい、これから何年先もいろんな人が焦がれるアーティストになるなぁ、と思っています。
ライブもアルバムも楽しみだなぁ、、、



きいろ。

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