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線香花火と閃光の夜【クレナズム】

ライブが始まった瞬間に、ゾクゾクっとしたのはいつぶりだろう。

私が好きな轟音を生で浴びることができて、
「同じ時代を生きている」「今目の前の音の暴力と向き合えている」
という喜びをこんなにも味わうことができるなんて。
ライブが始まる前の私は1ミリも思わなかった。

ライブを見終わって感じたことは、
平成ではなく、令和の今、私が求めていた音楽を目の前で味わえた、という喜び。
そして、これからの彼らをリアルタイムで追うことができる、という喜び。

とにかくそういった嬉しい感情が私の心に満ち満ちていた。



11月27日。1、2ヶ月前に聴き始めた、クレナズムのワンマンツアー「本州を通りもん」に行ってきました。
クレナズムの新譜【Touch the figure】についてはnoteにupしておりますので、そちらも是非。

こちらのnoteをupしたのが、ライブに行く当日だったのですが、
ライブが終わった瞬間に、
あのnoteを上げた数時間前の私に物申したい……!!!!
と強く思いましたね…

なぜかと言うと、
私の中の"クレナズム"というバンド像を遥かに超えてきたライブだったからです。

「こういうバンドだろう」
「こういうライブをするんだろう」
そんな安易な想像をクレナズムはぶっ壊してくれました。

これだから音楽は面白い!
生音・ライブはこうでなくっちゃ!!



ソールドアウト公演とだけあって、やっぱり人の密度は多い。
外はすっかり冬なので、私もこの日はコートを着て会場へ。
開始前「開演後、暑くなる可能性がありますのでーー」といったアナウンスが会場内に響き渡る。

確かに、ライブはTシャツ1枚がいつも適温くらいになるけれど。
でも、今回は、ガレージロックバンドではなく、ポップな曲を演奏するバンドである。
気温は上がっても、そこまで暑くならないでしょ……とうっすら思った。
しかし、いつもの身軽な格好が落ち着くよなぁ…という思いの方が勝ち、結局着ていたコートを脱いでそそくさとバックに詰め込んだ。


17時30分。
スタートの時間ぴったりくらいに、聞き覚えのあるメロディがSEとして流れてきた。

特徴的なギターメロディ。轟音。浮遊感のある歌声。
(…マイブラだ……)
私は心の中でそう思った。
シューゲイザーが好き、という人なら必ず通るのではないかというほど、シューゲイザーというジャンルの代名詞でもあるバンド。
"マイ・ブラッディ・ヴァレンタイン"の曲だった。


メンバー登場前のSEでこんなにもワクワクさせられるとは…
それと同時に、期待もぐんっと跳ね上がった。
マイブラの曲をSEで使う、ということは、必然的に轟音のシューゲイザーを期待してしまうからである。

クレナズムのライブ、そしてもうすぐ始まる1曲目に対して、私は多大な期待と少しの不安を持っていた。
でもそんな不安は物の見事に、1曲目でぶち壊された。


『白い記憶』
綺麗なギターメロディから始まる印象的な曲。
CDでは、なんとなく聴いていた楽器隊の音だが、CDよりもライブの方が圧倒的に轟音だった。

楽器を手にしたステージ上の彼らは、”奏でる"というより、"弾き殴る"という表現の方が適しているのではないかと思わせるほど。
狂ったように奏でられる音の暴力にゾワっとした。
マスクの下では思わず笑みが溢れた。

歌が入った瞬間に、煩い音から透明感のあるメロディへと移り変わる。
こういった曲の流れはシューゲイザーの醍醐味といってもいいかもしれない。
人間の本質、表と裏を表しているような気がして、私は好きだ。
とにかく、この音は絶対に生で聴いた方がいい。

「これぞ、シューゲイザー……」
「私が求めていた音……」


音源で感じた透明感、ポップな楽曲の本性を見ることができた気がした。
まさかここまで、轟音バンドだなんて……

1曲目から音の暴力に殴られながら、私はゾゾゾっと身の毛がよだち、心の奥底から抑えきれないほどの興奮が沸き立った。


興奮冷め止まぬまま『ラテラルアーク』へと続いた。
この曲は私がSpotifyでクレナズムと出会って、お気に入りへと追加した4曲の内の1曲だ。
やっぱり生で聴いても、メロディ、曲構成共にグッとくる。

普段イヤホンで聴くとき、私は自然と、声>ベース>その他の音、という順列で耳に入ってきてしまう。(学生時代に合唱・ベースを経験しているので。)
ライブは、視覚的にも楽しめるのが醍醐味だと私は思っている。
耳では真っ先に歌声が入ってきてしまうけど、
目でギターやドラムを追うことで、動きが見えて音が自然と鮮明に耳に入ってくる。

この曲では、ギターは透明感のあるメロディで曲を先導しているけど、
サビで完全に歌が主役となり、曲の先導からバックミュージックへと役目を移し、ピロピロと一定の音を奏でていることに私はライブを見るまで気づかなかった。
この音があることで、音の厚みが出て、サビが一気に華やかになってたのか…という自分の中での発見だった。


そこから『積乱雲の下で』『杪夏』と続く。
MCで言っていたが、前半はまさに夏曲盛り合わせ!と言わんばかりの夏曲揃いだった。
情勢下、今年の夏は我慢してきた人も多い。
皆にとっての今年の夏の思い出を悲しいものにしないように、クレナズムが夏の記憶を上書きしてくれた。そんな思いも込められていた前半のセットリストだった。

そんな夏の曲たちの中でも印象的だったのが、『解けない駆け引き』
原曲では、クボタカイさんとの掛け合いをしながらの曲で、
今回のライブではクボタカイさんパートを萌映さんが歌っていた訳なのだが、これがめちゃくちゃ良かった。
原曲の男声キーを女性が歌うことは困難なため、1オクターブ上、という必然的にとても高くなるキーで歌い上げていた。
ボーカルとはいえ、得意不得意な音域はあると思うのだが、原曲よりも高音になっている部分をしっかりと歌い上げて、結果的に原曲のような掛け合いを感じられる曲になっていて驚いた。
特に2番始めのクボタカイさんパートの「Oh Baby」のところの萌映さんの歌い方が艶っぽくて、原曲とはまた違った女声ならではの良さが出ていた。なんならこの萌映さんverも音源化してほしいと思うほど。(ため方やブレスの使い方が絶妙だった…。)


MCを挟み「まだ睨みつけてませんよね」という言葉から繋がれた後半スタートの曲は『ひとり残らず睨みつけて』

前半は【Touch the figure】の曲が多かったが、
ドラム始まりのこの曲を皮切りに、後半では今までのクレナズムを感じられる曲目となっていた。
(といっても、ライブ1、2ヶ月前にクレナズムと出会った私にとってはどれも新譜のような新鮮さですが。笑)

『酔生夢死』での歌を聴かせる(引き立たせる)構成や、『花弁』での楽器隊の轟音音圧、儚さ。
もちろんこれら以外の曲にも言えることだが、
この共存する2面性が、”クレナズム"というバンドの在り方を表していると感じる。

ライブ本編ラストは『あなたはさよならをここに置いていった』
この曲は、初めて聞いた時から、物語のクライマックスのような盛り上がりを感じていたので、終盤にぴったりの曲だな、とライブで改めて感じた。

ハッとするようなシューゲイザーで始まり、歌が主役となり聴かせるJ-pop要素を感じる楽曲で締める、
というこのセットリストの構成が粋だなぁ、
とライブを振り返って思う。
私にとってのクレナズム初めてのライブが、このライブだったのは、ある意味最適だったのかもしれない。



本編を通して、バンドの様をありありと見せつけられたわけだが、
まさかアンコールでまだ心踊ることになるなんて思わなかった。

アンコールで演奏されたのは、『青を見る』(萌映さん曰く恒例らしい。)
1曲目の『白い記憶』とは対照的に、
静かなメロディから始まり、サビ前のギターの音を合図に堰を切ったように洪水の如く音が勢いよく溢れてくる楽曲だ。
気持ちいいほどの轟音。
もちろん、このシューゲイザー要素にも心が躍ったわけなのだが、
それ以上に、ガレージバンドで見るレベルのストロボ(バチバチと点滅を繰り返す照明)に思わず、(おおっ!!)と心の中で歓喜した。
このバチバチのストロボが似合うバンドはかっこいいんだよ…。
今までの経験上、私の中でそういう定義が仮説として挙げられていたけど、目の前の光景を見て、それが確立してもいいと思えたほどである。

始めにも挙げたように、ライブは、音だけでなく、目でも楽しめるのが醍醐味だ。
このストロボ以外にも、バスドラム(ドラムの低音)に合わせて、ライトが点灯する照明演出があった。
その光景はまさに、花火を思わせるような視覚的演出だった。
パチパチと明かりが消えていく様は、線香花火のような儚さも感じ取れて、
曲をより視覚的に味わわせてくれるという意味で、多面的に曲を楽しめるライブだったと言えるだろう。
(そして、ライブ開始前のアナウンスでコートを脱いだ私の選択は大正解だった。笑)



POPな楽曲を予想して会場に入った私は、見事にクレナズムの演奏に打ち負かされた、というわけだ。
音源はもちろんのことながら、ライブは音源の何倍も良い…!!と強く感じたバンドNo.1かもしれない。
昨日、東京公演が終わり、次回ツアーの発表があったので、「クレナズム気になるな〜」「シューゲイザー好きだな〜」という人は是非ともあの生音を浴びて欲しい。
シューゲイザーは知らないけど、J-POPな楽曲が好きという人なんかは特に、ライブに行って欲しい。
そして、是非とも私同様、あの音に全力で殴られて欲しい。笑


聞き馴染みの良いJ-POPな楽曲と、ギョッとするほどの轟音。
2面性が共存している、”クレナズム"。
惹きつけて離さない、一種の中毒のような旨味があるバンドだと感じた。

もう既に、次はどんなライブが見れるのか楽しみで仕方ない。



=====

バンドを少しでも齧ったことのある人ならわかると思うのですが、
ライブの1曲目の轟音を聞いた瞬間に、ハッとしてギターの足元を確認した自分がいました。笑
そこには予想通り、エフェクターがぎっちりと詰まったボードがあったのです。
これはまごうことなき、シューゲイザーバンドだ、と確信した瞬間でもあります。笑

私は感覚で弾く派の人間だったので、知識については全くないのですが、こういう発見ができるのは、音楽やってたおかげだなぁ、と思ったり。
でもまだまだ耳は肥えていないので、日々勉強ですね。(といってもSpotifyで曲をたくさん再生するだけの簡単な勉強法…笑)




きいろ。


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