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ブラッディメアリー

 爽快な気分を求めているのではなく、からだにスパイシーな異物を入れて辛気臭さを払拭したいのかもしれない。梅雨の季節になると、何故かブラッディメアリーが飲みたくなる。

 “血まみれのマリーさん”という名のそのカクテルは、氷の入ったグラスにトマトジュースとウォッカを注ぎ、塩、胡椒、タバスコ、リー&ペリン社のウスターソースを無造作に入れてかき混ぜるといったシンプルなレシピで、シェイカーを使わなくても作れてしまう手軽さから家庭でも楽しむ事ができるが、元々はHarry's Barというパリの老舗で誕生したらしく、ヘミングウェイもそこに通って愛飲していたという由緒正しいカクテルだと言われている。

 昔からこの酒が得意だったわけではなく、年を経るごとに何となく飲めるようになったと言った方が正しい。そもそも人間の味覚は年齢と共に鈍くなるそうで、一番始めに“苦味”が麻痺するのだという。故に、子供は生野菜を食べれなかったり、ビールを美味しく感じないのだとか。ウォッカのような苦味のある酒も飲めるようになるには、ある程度長く生きる必要があるのかもしれない。
 
 ブラッディメアリーを飲むときには、大抵夕食のおかずをつまみにしながら飲んでいる。ウォッカは少な目、トマトジュースは多めで、アルコールを摂取している罪悪感を帳消しにできる程の健康的な一杯だと思っていた。

 しかしながら、世界的に著名な自然療法士であるフランク·ラポルト=アダムスキーは著書『腸がすべて』の中で、トマトや果物のように消化の速い食べ物(ファスト)は、それ以外の消化の遅い食べ物(スロー)と一緒に食べるのは、腸が詰まる原因となりよろしくない、と謳っている。

 これは、完全に盲点だった。アダムスキー氏の説が本当だとすると、ブラッディメアリーは、つまみ無しで、しかも食前に飲むのが良い事になる。
 ちょっとハードボイルド過ぎはしないか?

 

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