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不惑 の ワイシャツ

 人間は1日に9,000回も決断をするらしい。これは“今日、何着て行こうか?”といった些細な事も含まれると思うが、アインシュタインのクローゼットには、日々服を選ぶ時間を浪費しなくていいように、同じジャケットが5着入っていたという。

 このエピソードが好きだったのと、毎朝シャツとネクタイを選ぶのが常々苦痛だった事もあり、最近はワイシャツを買い替える時には、同じ生地、同じ形のものを6枚オーダーメイドして、1週間着まわす事にしている。殆どの色のネクタイに合わせる事ができるという点でも白いシャツは重宝する。
 そもそも衣服は、機能を満たし、愛着があり、相手に失礼が無ければ目的を果たしているかと思う。数も多くは必要ない。加えてサッと身に付けられれば、尚更言うことはない。

 しかしながら、世間の女性からしてみると“今日、何着て行こうかな?”と考える事も楽しみだし、選べないのは何とも無味乾燥だと言われそうである。あえて選択肢を無くすことで決断を放棄しているのだが、作家の五木寛之さんは随筆『生きるヒント』の中で、“惑(まど)う”というのは人間に与えられた凄い能力の1つなのではないか、とも書いている。これは、惑う事ができる幸せな環境にいる、とも言えるかもしれない。選ぶ時点で既に、2つ持っていたり、2つやることがある状態であるからだ。昔、ネスカフェ·ゴールドブレンドのCMに出てきた“違いが分かる男”の最低条件も、ネスカフェとそれ以外のコーヒーの2つ以上を知る事なのである。

 そんな選ぶ楽しみも大切なのだろうな、と思いながら、洗濯した全く同じ柄のハンカチ7枚を干していたりする。難しい話はさておき、ただ単にシンプル思考で、連続する同一パターンが好きなだけかもしれない。

 

 

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