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シネマセラピー10 やりたいことをやれていないあなたに

 

シネマセラピー
映画をひとつ、心の小さな処方箋に

(ストーリー ネタバレ注意)
 
 

2007年映画 『最高の人生の見つけ方』

  
仕事に人生をささげた大富豪エドワード(ジャック・ニコルソン)と、家族のために地道に働いてきたカーター(モーガン・フリーマン)。
二人は入院先の病室で知りあった。

共に病室で余命は6か月と知らされ、意気投合した二人はやりたいことをすべてやり尽くそうと決意し、病院を脱出。
“バケットリスト(棺桶リスト・やりたいことリスト)”を手に、世界中を旅しながら、さまざまなことに挑戦する。

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人は、死ぬと分かった時に何を思うのでしょうか。
何のために生まれてきたのか。何のために生きてきたのか。
誰もが振り返ることになるのかもしれません。

90歳以上の方に、今後悔していることは?と尋ねる多数のアンケート結果が出ています。
ほぼ全員が「もっと生きたいように生きればよかった」と答えているとのこと。

これは時代にかかわらず、同じ答えが出るような気がします。私たちはそもそも、生きたいようには生きられないものなのでしょうか。

 

このテーマで取り上げたのは、死ぬまでにやりたいことをやってから死のう、という話をしたかったからではありません。
この映画には、そんな焦りも、悲壮感もありません。死への理解ができていることからくる大人のコメディセンスが、とてもあたたかい空気に満ちています。

ウィットに富んだ会話、ハリウッドの大物俳優2人の卓越した演技が、ファンタジックになりがちな冒険をめぐる死のテーマから、とてもリアルな感情と共感を引き出しています。

 

エドワードとカーターの人生の歩き方はまったく違うものでした。

お金持ちで、自分の生きたいように生きてきたけれどひとりぼっちのエドワード。
家族のことを考えて自分のしたいことをあきらめてきたけれど、みんなに愛されているカーター。

どちらが正しい生き方なのか、はたまた美しいのかは関係ありません。人生の価値は他人が決めるものではないからです。

「人生の価値など容易に量れない。家族や友によって量られると言う人、信仰心によると言う人、愛だと言う人、人生に意味などないと言う人もいる」という冒頭のナレーション。

どれが正解なのかではなく、どう生きたいのかによって変わってくるとしたら、自分自身の問題です。

 

これは、自分の人生を楽しむということを見つけた二人の物語だという、そもそものタイトルの意味に戻って考えるのもいいのではないでしょうか。

原題は「THE BUCKET LIST」(棺桶リスト)、副題は「FIND THE JOY」(喜びを見つけること)です。

死ぬことに喪失を感じるのではなく、それは生の延長であることがたっぷり表現されています。

時間がないから少しでも多く楽しんでしまおう、ではなく、「生きている今を楽しむために、今を生きる」ということ。タイムリミットの感覚はそこにはありません。
終わる時はただ終わるだけ、でも今は生きている。その感覚をとてもリアルに見せてくれるのです。

 

やっぱり家族が一番だよね、というお決まりのオチがないのも、いいところ。
生きることも死ぬことも、ひとりひとりの問題なのです。

誰かのため、誰かの、何かのせい等は関係なく、自分自身の人生を見つめる時間はそれぞれいつかやってくるのです。「私は、どうしたいのか」「私とは、何だったのか」。

 

お金はあっても、ひとりぼっちで生きてきたエドワードは、人生の最後に友を得ました。

自分以外の周りのために生きてきたカーターは、最後に自分自身のためだけの時間をもつことで、もう思い出せないと思っていた妻への愛を思い出しました。

二人が出会ったことで得た時間を、もしあなたも得たとしたら、あなたは何を見つけることができるのでしょうか。

 
やりたいと思っていることは、ただ自己満足のためではなく、あなたの人生に足りていないと感じている何か、かもしれません。
それはいったい何でしょうか。何を表しているのでしょうか。
そもそも本当に足りていないのでしょうか。

さあ、あなたが今やりたいと思っていることは、何ですか?

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自分の人生をそんなふうに追求してみることに何の意味があるのか。
それは、追求してみてはじめて答えを手にできるもの。
考えてみる時間をたっぷりとるのは、誰にとっても必要です。

そしてそこにこそ自分自身への理解の手がかりがあり、人生を受け入れてさらに喜びを見つけていく、きっかけになるのかもしれません。

FIND THE JOY !

 

 


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