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春のモグラ

あまりにも気持ちの良い明るい日差しに、疲れた体を干してしまおうかと、本を抱えて外に出た。

今週は特に忙しい日々だった。
一つ仕事をしていても、最中に来る、他の仕事の連絡が気になったりして。
重なり合う時間のやりくりは、緊張が解けると突然、疲労を呼ぶ。

週末に時間を見つけて体を休めようと思っていたところの、あたたかなお天気。
近所の公園まで、次女と一緒に歩く。


土曜の午後の穏やかな優しい声が、公園中に散らばっていて、木のベンチから、走る子どもたちを目で追った。

にこやかな気分のまま開いた本は「たのしい川べ」。
小さい頃よく読んでいて、古びてボロボロになった本を、以前に処分していた。図書館で先日、児童書のコーナーに見かけてきれいな本を連れて帰ってきた。


岩波少年文庫。
500冊くらいあるこの文庫シリーズは、たぶん全部読んだと思う。どのタイトルを見てもだいたい覚えているし。

なのに、「たのしい川べ」については内容がおぼろげだ。ページを開くたびに、新鮮な気持ちで動物たちを捉える。

 “ 春は、地上の空気中にも、またモグラのまわりの土のなかにも動きだしていました。そして、いまでは、暗くてみすぼらしいモグラの家のなかまではいりこんで、なんともいえないそわそわした、じっとしていられない気持ちで、そこいらじゅうをいっぱいにしてしまったのです。”

大掃除をしていたモグラは、すべて投げ出して春の空気の中に飛び出して行く。
川べの動物たちの、なんと人間らしいこと。


春の太陽に日焼けしそうな中、読みながら、この本のタイトルは昔ついていた『柳に吹く風』の方が好きだな、と少し思った。
その通り、たのしい川べのお話ではあるけれど、たった今吹いた春の風の匂いが、物語と繋がった気がしたから。

夕方、喉が渇いてきたので、公園を一周してから帰り道。
新しい水筒を買って今度はコーヒーを入れて持ってこようか、と次女と話しながら歩いた。
何色の水筒がいいかな。
たくさん飲みたいから大きいのがいいかな。
そうだ、2つ買ってお揃いにしようか。
公園タイムたのしいね。

家に帰ったらあったかいコーヒーをいれよう。
そう思いながら、頭の片隅では件のモグラと、船に乗ったネズミの出会いのストーリーが、どんどん進行していた。
コーヒー片手にまた続きを読むとしよう。


大きな砂場の前。この5分後には小さい子がたくさん!
友人にもらった素敵なブックカバーと。
児童書のこういう挿絵が大好き♪





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