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屋根裏の本棚

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書き散らした小説や詩を置いておく、屋根裏部屋のような。
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#オリジナル

季節の名残り

季節の名残り

冷たい雨の朝
しとしと  しとしと

通りにはコートにマフラー、彩の傘たち

駐車場に向かうと
あざやかな赤ひとつ

濡れそぼる、遅秋のカケラ
足を止める私に
溢れて消える想いの欠片

『落日に』

『落日に』

 
手を伸ばしても 何も触れない
 
虹がうすくほどけ
 
灰色の風が巻き上がる
 
 
私は浮かびあがり
 
空へと落ちていく
 
 

『それぞれの物語』

『それぞれの物語』

人生とはそれぞれの物語だ
 
他人の人生には登場できても
他人の人生を変えることはできない
その人の見る目で物語が作られているのだから
 
世界は人の数だけあるのだろう
 
 
だから
私たちの物語はけっして交わることがない
混じわることはない
 
できるのはただ
それぞれの物語をスプーンひと匙
分け合うことだけ
 
 

『さいごの季節に』

『さいごの季節に』

  
陽炎(かぎろひ)を
 
追いつつ見遣る かの想い
 
過ぎゆく夏に
 
応えなどなし