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若者からの言葉〜過去の自分に伝えたいこと〜

これはアマヤドリに声を届けてくれたある若者からの言葉です。
若者本人からの希望があり、全文を皆様にお届けいたします。

少しでも多くの方に声が届きますように。
そして、アマヤドリを必要としてくれている
すべての若者に届きますように。


「お前が悪いんだ。」
「お前のせいでー」

そう言われて育った私は
その言葉を素直に受け入れて
自分は価値がない人間だと信じて生きていた。

「私が悪いから、酷いことをされる。」
(当時は酷いこととも思っていなかった)

それが当たり前だった。

その環境から抜け出した後
優しい人たちは私にいろいろなことを教えてくれた。

「あなたは悪くない」
「嫌なことは嫌と言っていい」
「理屈じゃなくて心で感じて決めていい」

あなたがされてきたことは、酷いことなんだよ。

あまりにも無防備な私に、
大人たちは何が酷いことなのか、
何をしちゃいけないのかを説明してくれた。

【子どもの権利条約】を印刷して見せてくれたりもした。

一方の私は
自分にどれだけ価値がないか
されてきた様々なことがどれだけ正当なことだったかを
一生懸命言い返していた。

私に価値がないから
これだけ悪い子だから
そうされるだけの人間なんだと
大人たちを必死に説得していた。

自分が被害者だと認めるのが怖かった。

私が悪くないと認めてしまったら
ある疑問が生まれてしまう。

「じゃあ、私はなんであんな思いをしたの?」

それに向き合わないといけなくなる。

怖かったのだと思う。

今ならわかる。
分かるよ。

すごく悲しい事実だけど
運が悪かったんだよ。

私は悪くなかった。

たまたまそういう状況の家に生まれて
大人たちは自分のことに必死で
未熟なところがたくさんある人たちだった。

たまたまの偶然。
それだけだったんだよ。

どうして他の子じゃなくて自分だったの?
なんでみんな助けてくれなかったの?
だってあの人も、あの人も、家の中で起きてることを知ってたじゃないか。
どうして?どうして?

絶望や怒り、憎しみ。
いろんな感情を感じないといけなかった。

自分がただただ不運だったと認めないといけない。

当時の私には、それは過酷すぎた。
そんなことを受け入れるくらいなら
自分が悪かったから、酷い目にあったと思いたかった。

だけど大人たちも諦めなくて
たくさん言い合いをして話し合った。
いろんなことを話してくれた。

一つ一つの言葉の意味を全部理解することはできなかったけど
大人が自分のために本気になってくれてることはわかった。
今まで私の周りにいた人たちとは違うって分かった。

見たくないものから目を逸らしたり
責任から逃れたりする人たちじゃなかった。

本気で向き合ってくれてることは伝わってきた。

少しずつ、理解していった。

私は、子どもだったんだ。
できなくて当たり前だった。
失敗して当たり前だった。

今は知ってる。

普通の子はね、
親に好きになってもらおうと必死にならないんだよ。
今晩のご飯をもらうために
必死にいい子に振る舞ったりしないんだよ。
失敗しても、上手くできなくても
好きでいてもらえるんだよ。

悲しいね。
そんなこと知りたくなかったよね。

私は悪くなかったよ。
結構頑張ってたよ。
あの環境で、頑張って生きてた。

上手くできなかったから
酷いことをされたわけじゃないよ。

どんな自分でいても愛してもらえる子がいるように
たまたま私は、
どんな自分でいても、優しくはしてもらえなかったんだと思う。

上手くやれなかったわけじゃなくて
あの環境で十分上手くやっていて、
でもそもそもが無理難題だったんだよ。

私はよくやっていたし
なにも悪くなかった。

だからもう自分を責めるのはやめにして
たくさん怒って、泣いて、悲しんで、

悲しんで、悲しんで、悲しむんだ。

怒りや恨みもあるかもしれない。
傷付けてきた人だけじゃなく
幸せそうな人にも怒りが湧いてくる。
たくさん怒って
その気持ちの底にある悲しさを感じ切る。

そうしたら、大丈夫。
世界は思ったより優しいところだから、
手を差し伸べてくれる人はたくさんいる。

怒りも恨みもほどほどにして、
ちょっと顔を上げてみる。

大丈夫。君を受け入れてくれる人はたくさんいるよ。

何度でも言うよ。
世界は君が思ってるより優しい。
君はまだそのほとんどを知らない。

優しさって、君自身について聞いてくる。

何がしたい?
何が食べたい?
寒くない?
暑くない?
これは美味しい?
何が好き?
楽しい?
退屈?
どうしたい?
君はどう思った?

大丈夫。この質問に正解はない。
分からないときはそう言ってもいい。
正解を出さないと殴られるなんてことはない。
好きに答えて大丈夫。
君を知ろうとしている。

彼らは君に優しくしようとしている。
これを優しさと言うんだよ。

初めは、気持ち悪く感じると思う。
嫌だよね、優しさって
恩着せがましくて、ねっとりしてて
まとわりついてくる。

同情してんじゃねーよ。
弱いものを見る目で見るな。
優しくしていい気になって
安全地帯から分かった気になって自己満足かよ。

一番近くにいて傷付けてこない人に
一番怒りが湧いてくる。

でもよく見てみて。
ここは、怖くない。痛いことも起こらない。
なのにどうしても居心地が悪い。
体が拒絶する。

まだ逃げないで、ちょっとだけ我慢してここにいてみて。
無理だったら、一度離れてみて。

でも大丈夫。何度でも戻ってきて。
できるだけ、優しくしてくれる人を傷つけないで。

無視してもいいから、
黙って離れてもいいから、攻撃しないで
見定めてみて。

ほら、あの人たちとは違うって分かるでしょ。

彼らはとても優しい。

ムカつくよね。
うざいよね。
ぬくぬくしたところで育ちやがって
こっちの辛さは何にも知らない。
分かってくれない。
分かってほしいよね。

でも意外とね、彼らも苦しんでる。
分かってあげられないって悩んでるみたいだよ。
何もできないって苦しんでる。

体験を共有することはできない。
だけど、分かりたさと分かって欲しさで繋がることはできるんじゃないかと思う。

心の中にあるどうしようもない辛さは、
もう少し時間をかけて
自分自身で理解してあげると楽になる。
そのプロセスは優しい人たちの中で行われるといい。

大丈夫。
もう十分良くやってきたよ。

少しずつ、過去を過去にして終わりにしていこう。

この嵐はいつか終わる。
必ず終わるよ。

この先に何があるのか私にもまだ分からない。
毎日は十分楽しい。
幸せだとも感じる。

でも、生きてきてよかったと思える日が来るのか
生まれてきてよかったといつか思えるのか。

あの日々を乗り越えた価値があると思える未来が訪れるのかはまだ分からない。

でも今は1人じゃないし
生きていけるって自信がある。

大丈夫。
生きていけるよ。
大丈夫だよ。


最後までお読みいただき、ありがとうございます。
若者の心の奥からの声が少しでも多くの人へ届きますように。

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