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じゃがいもを買って

きょうの仕事先は駅徒歩30分。なんて、実はもっと近くまでいくバスもある。だけど本数が少ないし、なによりたくさん歩きたい気分だったのだ。だから歩いた。みっちり歩いた。尻をブリブリいわせて歩いた。

道のりの半分くらいで畑が出現した。中ぐらいの畑と住宅の区画とがパッチワークのように並んでいるエリア。作物はトマトやなすらしいのが多い。夏が来るのだ。野菜の無人販売所もちらほら見かけた。どこもじゃがいもとたまねぎを必ず置いている。まだあと15分本気で歩くのに、ようすのいいじゃがいもを見かけて買いリュックにしまった。帰りでは売り切れてしまうとおもったのだ。じゃがいもを背負って仕事に行く。

夏の盛りみたいに照りつける太陽光線のもと、道のりの後半は湿気のなかをおぼれるみたいな心地ですすんだ。ずんずん歩いたら気持ちよくなるつもりだったのに、どうもきょうの体調は思っていたよりずっと悪かったみたい。自分のからだを他人ごとのようにしているせいでしょっちゅう間違える。

仕事先の学校にやっとの思いでついた。学校も外と同じで暑くて蒸している。建物の吹き抜けには3階くらいまでの高さの木が生えていて、風が吹くと葉が鳴った。さわさわみたいな、かさかさみたいな。この音ひさしぶりにきいたなあと階段に立ち止まった。数秒。

仕事では人びととおよそ2文節以下の定型文でのみ話した。いつものことだ。吹き抜けの木や新鮮なじゃがいもやトイレのカナブンとのほうが多くのことばを交わした気がする。

帰りも歩いた。尻をぶりぶりさせるのはむりだった。電車のなかでスマホを確認すると1万歩より少し歩いていた。


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