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酒が呼んでる
2月25日(木)
仕事からの帰路、とてもつらい気持ちだった。
酒を買って帰ることにした。日本酒。4合瓶。
荷物と4合瓶を家にドンッ!と置き、米を研いで炊飯器にセットしてから子どもを迎えにいった。酒にうしろ髪ひかれる思いで保育園へ自転車を走らせた。
それから何やかんや子どもとどたばたやって、子どもが寝たら子どもの横を抜けだして酒を飲むのだ、と決意して寝室にやってきた。子どもは寝たが、わたしにはもう起きだす気力はないみたい。残念むねん。またあしただね……酒……
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酒を飲みに起きる気力はないがかといって眠る気にもなれず、布団の中で本を読んだ。きょう読みはじめて仕事の行き帰りで半分くらいまで進んだ西加奈子の『i』。
読みながら眠りに落ちる予定がけっきょく深夜1時まで読み続け、本が終わってしまった。小説読むの遅いわたしが1日で1冊読み切ったのはこの本がはじめてかもしれない。頭に入ってきやすい文章なのだなあ。長編だし、内容だって軽くも薄くもないのに。読み終えたことにびっくりしちゃった。
この『i』に限らずさまざまな物語について最近おもうことがある。『i』もそうだし同じ西加奈子の『サラバ!』もそうだけど主人公や登場人物のすごくすごく個人的な……たいていの他人にとって「知らんがな」であるはずの逡巡、悩み、強迫観念などについて語られている作品が世の中には数多くある。そのあまりにも個人的なことを掘り下げていく語りは、進むにつれてますます「知らんがな」度を増していくはずと思われるのに、いつの間にか「わたしの話だ」と思うようになっている。そういうことが近ごろの読書体験でとても多い。
どこかの誰かがもくもくとひとりで地面に穿ち続けた穴がどういう具合でかわたしの持つ穴ともつながっていた、みたいな。
そういうのってきっと世界中のたくさんの人とつながることができる物語なんだろう。すごいなーとおもう。わたしも穴を掘ってもいいのかもしれないと思えてくる。きわめて個人的なことをつきつめて考えていくと世界につながるのだ。素敵だ。もちろんそこまで掘り進むにはものすごい労力と勇気と誠実さとを要するだろう。想像を絶するくらい。
でもこれは希望のある考えだとおもう。
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